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サマーセールが終了 落札頭数、総売上が過去最高を記録

  • 2021年09月01日(水) 18時00分

地方競馬の馬主会による“団体購買”が売上額を底上げ


 8月23日〜27日の5日間にわたり新ひだか町静内の北海道市場にて開催されたサマーセールが無事終了した。

 終わってみれば、5日間で1336頭(牡736頭、牝600頭)が上場され、1004頭(牡565頭、牝439頭)が落札、総売上は税込みで69億1240万円に達し、いずれも同セール史上最高の数字を残した。上場頭数は前年比264頭の増加で、落札頭数も179頭の増である。売却率は前年比1.81%のマイナスとなる75.15%であったが、これはもう誤差の範囲であろう。

 1頭当たりの平均価格は688万4861円(牡784万2708円、牝565万2096円)で、前年比50739円の減少だが、これも、ほとんど前年並みと言って差し支えない。

 上場頭数が前年と比較すると、ちょうど1日分増加したにもかかわらず、購買者の旺盛な需要に支えられて、最終日まで活況が続いたという印象だ。

 最高価格馬は牡が前回紹介した上場番号1番のタイニーダンサーの2020(鹿毛、父ヘニーヒューズ、母の父サウスヴィグラス)の4200万円(取引価格4620万円)。(有)グランド牧場の生産・販売で、宮崎俊也氏が落札した。

 牝馬では、やはり前回紹介した65番ハヤブサレディゴーの2020(栗毛、父スズカコーズウェイ、母の父サウスヴィグラス)と、最終日の1243番マチャプチャレの2020(鹿毛、父リアルインパクト、母の父ヨハネスブルグ)の2400万円(取引価格2640万円)がトップを分け合った。ハヤブサレディゴーの2020は(有)グランド牧場の生産・販売で、落札者は岡本真二氏。マチャプチャレの2020は、(有)チェスナットファームの生産・販売で、(株)ニッシンホールディングスが落札者である。

生産地便り

▲牝馬の最高価格馬の1頭マチャプチャレの2020、▼その落札の様子


生産地便り


 ところで、4日目8月26日のセリ開始直後には、恒例の北海道立静内農高の生産馬が登場した。今年の生産馬はナリタトップスターの2020(牡栗毛、父マクフィ、母の父ディープインパクト)で、901番の上場番号が付されていた。

生産地便り

静内農高の生産馬ナリタトップスターの2020


 引手の3年生、佐藤香月さんが元気よく「お願いします」と一声発してステージに登場すると、まず松岡俊道鑑定人が「セリに先立ちまして1分間だけお時間を頂きます」と前置きし、道立静内農高のサラブレッド生産活動について概略を紹介した後、セリに入った。

 体高148、胸囲167、管囲19.5の同馬は、未だ成長途上のようでいくぶん小柄に映る馬体だったが、場内のあちこちから次々に声がかかり、価格は200万円〜300万円〜400万円と順調に競り上がった。最終的に520万円まで上昇し、(有)ミルファーム馬主の清水敏氏が落札した。その瞬間、場内は拍手に包まれた。

生産地便り

静内農高の生徒と落札者(有)ミルファーム代表の清水敏氏(右端)と預託予定の斎藤誠調教師(左端)


 セリ後、報道陣のインタビューに答えて清水氏は「厩舎は美浦の斎藤誠厩舎にお願いすることになっています。育成は私のところでやります。静内農高の卒業生が私の牧場にもいますし、生徒さんたちの期待に応えたいですね」と話していた。

 個別に見て行くとかなりの分量になりそうなので要約するが、今年のサマーセールは、従来の購買者に加えて、各地方競馬の馬主会による団体(補助馬)購買に大きく支えられた感が強い。中央競馬会が来年のブリーズアップセール用に育成馬を47頭購買したのを筆頭に、兵庫県馬主協会が29頭、石川県馬主協会が10頭それぞれ購買した。

 それらとは別に、東京都馬主会(大井)、千葉県馬主会(船橋)、神奈川県馬主協会(川崎)、佐賀県馬主会、北海道馬主会(門別)が、会員に補助金を拠出して個人名で落札していた例が5日間を通じてざっと数えただけでも71頭に及んだ。これらも加えると、中央競馬会、兵庫、石川と合わせて157頭になる。1004頭のうちの157頭が広義の意味での団体購買だった計算だ。

 これら地方競馬の馬主会による購買は、依然として好調を続ける馬券売り上げによる部分が大きい。良質な2歳馬を自場でデビューさせ、やがてスターに育てたいという思いが、こうした補助馬購買の背景にある。

 日高軽種馬農協の木村貢組合長はセールの5日間を振り返り「こんなに伸びる予想はしていませんでした。びっくりです。そもそもこういう社会情勢ですから組合の計画は年間売り上げ100億円と算定していたのですが、この(サマーセールの)数字は正直誰も予測していませんでした」と驚いた様子で語り「数字的には100点です。これ以上は望めないですね」と結んだ。

 5月に開催されたHBAトレーニングセールでは税込み約6億5000万円、そして7月のセレクションセールでは税込み約40億円、さらに今回のサマーセールが前述の通り69億円の売り上げとなり、この時点で115億円に到達していて、木村組合長の言う年間100億円の売り上げ目標はすでに達成している。今後は9月にセプテンバーセール、10月にオータムセールを残しており、どこまで売り上げが伸びるかが大いに注目される。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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