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【現場最前線!現役騎手とJRAで考える“馬場”】第3回「JRAにしかできない! “馬の目”に着目した新たな取り組みを」

  • 2021年11月17日(水) 18時02分
with 佑

▲馬場造園課長・青山裕介氏との対談もいよいよ最終回 (C)netkeiba.com


JRA阪神競馬場、馬場造園課長の青山裕介氏をゲストにお迎えし、“馬場作り”の最前線に迫ってきた対談もいよいよ今回が最終回です。

JRAの技術力の高さは、実際に競馬に騎乗している佑介騎手たちも身をもって感じているところ。そこで、「要望というか提案がありまして」と切り出した佑介騎手。従来とは別視点、“馬の目”に着目した企画とは?

(取材・構成=不破由妃子)

※この対談はZoomで行いました


解明できればより安全な競馬ができる


──多岐にわたる馬場造園課のお仕事のなかで、ラチの管理や整備もそのひとつ。現場の声や落馬事案などを踏まえて、実際に改善されたことがあれば教えてください。

青山 騎手が落馬した際のケガ防止のため、芝の内柵の支柱を変えました。昔は鉄だったんですが、FRP(繊維強化プラスチック)を使った支柱になり、それにさらに巻いているクッション材を太くして、緩衝性を高めています。

 あと柵の笠木(1周をグルっと囲っている白い部分)もFRPでできているのですが、これも以前より薄くして、さらにクッション性を高めています。そのほかでは、発走地点等、馬場にはいくつか出入口用の柵があるのですが、馬が早く帰りたいと思ってしまうのか、飛び込むような仕草をすることがあるので、柵の中間部分にダミーの支柱をつけたりしました。

佑介 僕らにとって、どれも直接安全性に関わることなので、そういった点はすごく意見を汲んでくださいますよね。対応も早くて、本当にありがたいです。事故がないようにということを一番に考えてくださっている。それは日々感じています。

青山 そう言っていただけると、我々も励みになります。もうひとつ、阪神の馬場改造でダート2000mができた頃からだと思うんですが、芝発走のダートコースで、芝からダートに入る部分もちょっとした工夫をしています。芝の刈高を調整して段差を少なくするのはもちろんですが、砂の外側の部分を緑色に着色して、違和感が生じないように取り組んでいます。

佑介 馬が色の変化に驚かないようにという処置ですよね。それにちょっと関連するのですが、要望というか提案がありまして。今の技術であれば、総研(JRA競走馬総合研究所)と協力するなどして、たとえば馬の視線を追ったりとかできるのではないかと。

with 佑

▲「たとえば馬の視線を追ったりとか…」佑介騎手が提案 (C)netkeiba.com


青山 ああ、なるほど。

佑介 たぶん、そういうことに取り組めるのって、世界でもJRAだけだと思うんですよね。馬の目に競馬場やコースがどういう明度でどう映っているのか。それが解明できれば、より安全な競馬ができるような気がして。

青山 確かにそうですね。実際、馬が見ている色は人とは違うという話もありますし、そのほかにも馬の目を通した見え方というのは、私も興味があります。

佑介 馬にはどう見えているのか、結局そこが一番大事だと思うんです。これが解明されれば世界に発信できますし、ぜひチャレンジしてほしいです。

青山 物見については、確かに競馬場でもトレセンでも問題になることではあります。ただ専門ではないので、今度獣医さんに聞いてみますね。

恐怖の3カ月連続開催「なんとか持ってくれ…」


佑介 お願いします。話は変わりますが、今年の阪神開催は大変でしょうね。馬場の管理でいうと、ただでさえ関西圏のなかで一番難しいのに、今年は10月から12月までぶっ通しですからね。

青山 そうなんです。逆にそのぶん9月の開催がなかったわけですが、3カ月連続というのが一番つらいんですよ。ほかの競馬場では、コースを順に替えていって傷みを分散させることができるんですけど、阪神競馬場の場合、AコースとBコースしかない。

──通常開催であっても、6月の末に宝塚記念がありますから、野芝の養生期間が短いですものね。

青山 そうですね。だから、できるだけ強い芝にしようということで、夏に芝を張り替える際に、1年以上養生地で育てて根がしっかりと張った芝を土ごと5センチの厚さで張っています。他場ですと、生産地から1.5センチ程度の厚さで切り出した芝を路盤にペタペタと張っていくんですが、阪神の場合は養生期間が短いので、そうした方法を取っています。

佑介 馬場内に芝の養生地があるんですよね。

青山 はい。そのやり方を主にしているのは、阪神と福島、新潟です。どちらも7月前後に開催がありますからね。阪神は開催時期が飛ぶのには慣れているので、通常であればコースを使い分けたり、洋芝の育成を促したりしながら、見た目も含めて上手く管理していく自信はあるんですけど、3カ月連続となると、できる作業が限られてしまって。精神論じゃないですけど、今年の場合は、なんとか持ってくれ…という感じです。

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▲3カ月連続の開催に備え「できるだけ強い芝に」(C)netkeiba.com


佑介 僕らは何もできませんが、少しでもお力になれるよう、自分が感じたことをこまめにご報告させていただきます。馬場造園課の職員さんとは、毎週のようにお話して、さらに定期的に意見交換会があって。安全性の確保については、すごく迅速に対応してくださいますし、どれだけ情熱を持ってお仕事されているか、ジョッキーにも十分伝わっていますから。

青山 ありがとうございます。とにかく、事故がなく安全で、公正な馬場作りというのが我々の目指しているところです。事故をゼロにするというのは、なかなかできないのが現実ではありますが、そのなかでもベストを尽くしていきたいと思っています。

佑介 今日お話しさせていただいて改めて感じたのは、お客さんの声も真摯に受け止めて、事故率などのデータをとって毎年検証したり、安全面から競馬を盛り上げようとしてくださっていること。個々にそういう思いを持って、競馬を開催してくださっているのがJRAという組織なんですよね。お世辞でもなんでもなく、それは現場にいても感じているので、青山さんたちの日々の努力が少しでもファンの方たちに伝わってくれればいいなと思います。

青山 ありがとうございます。私がレース中に何を考えているかというと、途中で全馬故障することなく、落馬することなく、人馬が無事に帰ってきてもらいたいということだけです。また我々は裏方ですので、目立つことなく、ご指摘も受けないくらいがいいのかな…と思ったり(笑)。もちろん、ご指摘をいただかないよう、これからも精一杯務めさせていただきます。

──青山さん、今日はお忙しいなか、本当にありがとうございました。最後に、このコラムを読んでくれているファンのみなさんに、メッセージをいただけますか?

青山 はい。中央競馬を支えてくださっているのは、馬券を買ってくださるひとりひとりのお客様です。我々としても、ホームページや取材を通して、これからも馬場の情報公開を進めてまいります。ぜひそれもご覧いただいて、馬場へのご理解もいただきながら、中央競馬を存分に楽しんでいただければと思っています。

(文中敬称略、了)
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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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