波乱を予感させる組み合わせで人気は割れたが、上位2〜4番人気馬が1〜3着を占め、力を出し切れない形になったのは、6着にとどまったシンボリグラン(1番人気)だけ。そのシンボリグランはスタートで後手を踏む形になったのに加え、3コーナーではさまれてブレーキを踏む形になり後退する大きなロスが重なったが、負けたとはいえ0.4秒差。そう凡走したわけでもないから、有力と思われた馬はみんな好走したことになる。
前半33.7秒=後半34.3秒。距離1200mで全体に少し時計のかかるコンディションとすれば、もっとも紛れの生じにくいバランスの取れた前後半で1分08秒0。スピード能力も、総合力も生かし切れるスムーズな流れだった。
勝ったオレハマッテルゼも、2着ラインクラフトも初めての1200m。しかし、GI〜GIIの1400mで快走していた2頭にとり、1分07秒前後のスプリント戦ならともかく、1分08秒前後の1200mなら対応はスムーズ。また1分08秒前後になることで、1400〜1600mでも好走してきた総合スピードが生かし切れたともいえる。
オレハマッテルゼは阪急杯3着の内容から、これまで[1-2-3-0]の良績を残すコンビの柴田善臣騎手が1200mへの出走を進言したという。1200mなら、早めに抜け出すとソラを使うことも珍しくない同馬の死角も、もっと速い馬がいるだけにまず出る危険はない。好位のインにもぐり込んで抜け出しを待つ形がピタリと決まり、オレハマッテルゼは初重賞がGI。柴田善臣騎手にとっても、久しぶりのGI制覇(カフェオリンポスの04年ジャパンダートダービー・GIがあるので、キングヘイロー以来ではない)となった。ベテランらしい落ち着いた好騎乗だった。
ラインクラフトは少々乗り込み不足でもキチッと答えの出せる馬。昨春の桜トライアルの3ヶ月ぶりがちょうどこんな形だった。初の1200mとあってスパートを遅らせて大事に乗った印象もあるが、最後の1ハロンで力強く伸びたあたりがGI馬の底力なのだろう。3着シーイズトウショウは、中京1200m1分06秒7のレコード保持馬らしい能力をみせたが、1〜2着馬とは逆に、こちらはもっと時計の速い軽快なスプリント戦向き。6歳牝馬を考えれば現在の能力はほぼ出しただろう。
見せ場を作ったプリサイスマシーンも見事だったが、光ったのは公営の8歳馬ネイティヴハート。6〜7歳時は衰えたとも思えたが、転厩してまた元気になった形で、猛然と突っ込んでの小差5着は立派だ。