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【AJCC】今回の復活快走はこのコンビだから…と思えた

  • 2022年01月24日(月) 18時00分

日本でガリレオの影響力が爆発するのは代を経たこれから


重賞レース回顧

6歳キングオブコージがAJCC制覇(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 飛ばす先行型は不在。芝経験のない公営のキャッスルトップ(父バンブーエール)、スピード系ではないダンビュライト(父ルーラーシップ)が先導する形になったため、前半の1000m通過は「61秒2」。GIIの中距離戦にしては落ち着いた流れになった。

 これだと全体のタイムは速くならないと思えたが、中間地点の1ハロン12秒1のあと4ハロン連続して11秒台のラップが続き、後半1000mは「59秒4」。最近10年のAJCCでは3番目に速い「2分12秒7」が記録された。レベルダウンもささやかれた近年のAJCCの中では、今年のレベルは少しも低くなかったのだろう。

 快勝したのは6歳キングオブコージ(父ロードカナロア)。陣営からは「使いつつ少し行く気になりすぎている。スタートも課題」など小さな心配がささやかれたが、パドックから落ち着き払っていた。たしかにゲートの出は良くなかったが、逆にレースの流れに乗って正攻法のレースに持ち込む必要がなくなった。

 レース全体のペースは後方で進めたキングオブコージに合わなかったはずだが、3コーナーから進出し、外を回って最後の坂上から2着以下を突き放す完勝だった。

 休養前の目黒記念の2分29秒6はレース史上2位タイの快時計(2400m通過は推定2分23秒5)。それを快勝した能力(後半の切れ)に少しの陰りもなかった。6歳ではあるが、素質開花となったのは4歳以降。まだ上昇して不思議ない印象を与えた。

 母の父に登場する歴史的な名馬Galileoガリレオの産駒は、欧州を中心に数え切れないほどのビッグレースを制してきたが、日本のGレースの勝ち馬はいない。しかし、母の父としてキングオブコージがGIIを2勝したのを筆頭に、カンタービレ、ヴィクティファルス、ヴァンキッシュランなどの重賞勝ち馬が現れている。

 少し以前のStorm Catストームキャット(ロードカナロア、ラヴズオンリーユー、エイシンヒカリ、キズナ、ダノンキングリー…などの母の父)がそうだったように、日本でガリレオの影響力が爆発するのは代を経たこれからかもしれない。

 ベテラン横山典弘騎手(53)はこれでアメリカJCCを史上最多の7勝となった。今年はもう重賞2勝。残念ながら昨年、連続重賞制覇は26年で途切れているが、今回のキングオブコージの復活快走は横山典弘騎手と、安田翔伍調教師のコンビだから…と思えた。

 後半が速くなりそうな流れを読んで、残り800m標からスパートを開始して2着に食い込んだのは7歳マイネルファンロン(父ステイゴールド)。多少ともタフな芝状態に変化していることを計算に入れた松岡正海騎手のファインプレーだった。ステイゴールド産駒でもある。これをピタッとマークする形になったキングオブコージに差されたから、「ワンタイミング早かったかもしれない(松岡騎手)」となったが、この流れで前に人気のオーソクレース(父エピファネイア)、ポタジェ(父ディープインパクト)がいる並びだったから仕方がない。

 3着もベテラン6歳ボッケリーニ(父キングカメハメハ)。勝負どころで次々と外から他馬が進出する展開になり、最内に入らざるをえなかったのは誤算だったが、一瞬、勝ったかの場面もあった。これで荒れているとみえた最内がそうは悪くないと判断した横山武史騎手は、さすが。最終レースでは伏兵リーガルバトルで最内から差し返して勝った。

 4着アサマノイタズラ(父ヴィクトワールピサ)は、前半は注文をつけて最後方追走。

 マイネルファンロン、キングオブコージの進出に合わせるようにスパートしたが、4コーナーでもまだ馬群は一団のまま。1番外を回ることになってしまった。失速して下がった馬はなく、インを衝く選択肢はない。キングオブコージと並んで上がり34秒台で猛追したが、わずかの差で4着だった。もともとの主戦は今回の嶋田純次騎手。アサマノイタズラの持ち味はフルに発揮してみせた。

 1番人気の4歳馬オーソクレースは、理想の好位追走となったが道中の行き脚もう一歩。C.ルメール騎手の手が前半から微妙に動いていた。5戦目で菊花賞3000mを2着に快走したあとだけに、仕上げも慎重だったのだろう。心もち余裕残りに映った。負けはしたが、評価は下がらない。まだ6戦【2-2-1-1】の成長株であり、本物になるのはこれから。タフな成長力を発揮した母マリアライトがエリザベス女王杯を勝ったのは4歳秋のこと(13戦目)。宝塚記念を制したのは5歳の夏だった。

 6歳ラストドラフト(父ノヴェリスト)は、得意の冬場とあって絶好の馬体。仕上がり万全とみえたが、もともと細身に映るタイプで、やけに馬体が良く見えたあたり、逆に少し余裕残りだったかもしれない。太いということもないが、470キロ台は初めてだった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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