3月5日に未勝利を勝ち、続くフラワーCを制した新星キストゥヘヴンの鮮やかな3連勝目が、桜花賞だった。418kgのメンバー中でもっとも小さな牝馬。ちょうど勢いに乗ったところで体調ピーク。火曜日(ふつうはまず追い切ることはない)に追って、金曜日に阪神競馬場入り。馬体の維持に細心の注意を図った遠征がぴたりと決まり、レースの流れも小さな伏兵にぴったりだった。
アドマイヤベガ(サンデーS×ベガ。04年に急死)の産駒には、ちょうど同じような未勝利を勝って、あっというまに3連勝で中山大障害を制したテイエムドラゴンがいるが、急成長がアドマイヤベガ産駒の特長なのだろうか。けっして活躍馬が多いわけではないが、伝える底力は大変なものだ。ベガが1993年の桜花賞を制したのも、デビューしてわずか3ヶ月後の4戦目だった。アドマイヤベガ産駒には、サンデーはもちろんだが、母方のベガの特長が多く受けつがれているようなところがある。
例年より時計のかかる馬場で行われた今年、勝ったキストゥヘヴンも1800mでの好内容が光っていた馬だったが、2着のアドマイヤキッスも1800mに2、1着の成績があった馬。偶然ではなかっただろう。そのアドマイヤキッスは、人気でマークを受ける立場(安勝のキストゥヘヴンは直後でマークしていた)。もまれない中団の外からタイミングを計って抜け出した人気の中心馬らしい正攻法だったが、-14kgの馬体重は心もちさびしく見えた。陣営も「オークスで巻き返すには馬体の回復が必要」としている。どちらかといえば2400mのオークスより、桜花賞向きのタイプだけに、オークスでは候補の1頭にとどまるだろう。
3着のコイウタも、4着アサヒライジングも関東馬。キストゥヘヴンも合わせ5着以内に3頭も入ったのだから、劣勢の関東馬とては珍しい桜花賞だった。トレーナーはみんな若いという共通点があった。
フサイチパンドラは外枠は決して不利ではなく、途中からスパートすると思えたが、見せ場がなかった。キストゥヘヴンとの比較から14着に大負けするような馬ではないが、自分のペースで行けないと走る気をなくしてしまう難しいタイプ。折り合いさえ付けばオークス向きともいえるが……。同じようにテイエムプリキュアもまるでレースの流れに乗れなかった。ビシビシ追って+8kgの488kg。前半からリズムが悪すぎた。血統面ではともかく、流れのゆるむオークスの方が合うだろう。巻き返したい。