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皐月賞

  • 2006年04月17日(月) 12時50分
 伏兵メイショウサムソン(父オペラハウス)の快勝だった。前半60.0-後半59.9秒の平均ペースの流れにうまく乗り、予想通り今回は早めにスパートして先頭に立ったフサイチリシャールを目標にスパート。決してハデではなく、渋い持ち味をフルに生かし切っての先行抜け出しだが、その内容は文句なし。正攻法で押し切っての完勝だった。

 夏の小倉でデビューし、最初は注目を集める人気馬ではなかったが、1戦ごとに少しずつ確実にパワーアップ。11月の東スポ杯でフサイチリシャールの2着したあたりから候補の仲間入りをしたが、それでも印象は地味で渋いタイプ。コンビの石橋守騎手とぴったりイメージが重なり合ってもいたが、3回も連続して1800mに1分47秒台を記録し、差し返すようにスプリングSを勝ったのだから、今回の快勝は実力と成長力の証明だろう。ダービー候補に浮上したと同時に、まず大バテしないタイプだから好走も必至だ。

 石橋騎手の人柄は良く知られるところで、みんな必ず「さん」づけで呼ぶ。寡黙で目立つ言動はないが、きわめて律儀な男で、筋を通さなければならないとき、河内調教師とともに、どんなに忙しくとも東京へも美浦へも必ず顔を出した。そういう石橋騎手を知っているだけに、メイショウサムソン=石橋騎手のダービー制覇を心から期待したい。表彰式の拍手も印象的で、ファンの多くも石橋騎手の人となりや、少し地味な立場を分かっているからだろう、1つ1つの拍手の音は力強く、ことのほか大きく響いた気がした。

 生産界や、種牡馬の流れ、騎手の世界など、オーナーも含め、トップグループに片寄りがちなところもあるのが最近の流れだが、そういう人間模様や社会も合わせ、さまざまな意味で、こういうクラシックがあっていい。多くのファンの共感のもてる皐月賞でもあったろう。それには、2着に突っ込んできたドリームパスポート=高田潤騎手の果たした役割も大きい。彼もまた、トップジョッキーの影になるような役割(松田博厩舎の名馬はほとんど高田騎手が調教する)を担うことが多く、今回の騎乗もデムーロ騎手の代打のような形だったが、鮮やかな好騎乗だった。ダービーでもこのコンビを組ませてやりたい。

 期待したフサイチジャンクは、アドマイヤムーンと接触しながら追い上げて3着。追い通しでも伸びる勝負強さはさすがだったが、ゴール直後の印象として、力を出し尽くしてしまったかもしれない。ダービーに向けてさらなる上昇と余力があるか?という気もした。

 アドマイヤムーンとサクラメガワンダーはまだ脱落したわけではないが、馬体の仕上がりは絶好でも、他を圧するような迫力はなかった。皐月賞は外を回って差し切れるものではないから、引き続きダービー候補だが、成長力に多少ともかげりを思わせた。フサイチリシャールも同様で、今回の5着は底力負けの気がする。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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