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キングエルメスが出走を予定するG1・ジュライC展望

  • 2022年07月06日(水) 12時00分

フレーミングリブなど注目馬の多い3歳勢


 広尾レースが所有し、矢作芳人調教師が管理するキングエルメス(牡3、父ロードカナロア)が出走を予定するG1ジュライC(芝6F)の発走が、今週土曜日(9日)に迫っている。

 4日(月曜日)の日本時間夜8時に第3次登録が締め切られたが、この段階で、ヒューゴ・パーマー厩舎のフレーミングリブ(牡3、父リブチェスター)が、3万6千ポンド(約603万円)を支払って追加登録を行った。

 アイルランド産馬ながら牝系はドイツ血統で、おじにG1独ダービー(芝2400m)2着馬サヴォワヴィーヴルがいるファミリーを背景に持つのがフレーミングリブだ。1歳秋にタタソールズ・オクトーバー1歳セールのブック2に上場され、3万5千ギニー(当時のレートで約516万円)で、現在の馬主の代理人に購買されている。その「現在の馬主」は、複数の人物が関わるパートナーシップなのだが、その中心にいるのはマイケル・オーウェンである。

 スポーツ好きの方ならば、ご説明するまでもないことだが、リヴァプール、レアルマドリードといったメジャーなクラブや、英国代表チームでも活躍した、サッカー界の超大物がマイケル・オーウェンだ。現役時代から馬主となり、引退後は自身の牧場まで持ってしまったという、筋金入りの競馬好きとして知られるオーウェンの所有馬が、ジュライCに参戦することになったのである。

 フレーミングリブは、2歳の4月にデビュー。6戦目となったサースクのハンデ戦(芝6F)を制して2勝めを挙げると、これで競馬を覚えたのか、そこからシーズン末まで4連勝。2歳最終戦となったのがドンカスターのLRドンカスターS(芝6F2y)で、ここを勝ってステークス勝ち馬の称号を手にしている。

 今季緒戦となったニューバリーのG3グリーナムS(芝7F)は6着に敗れたが、続くチェスターの条件戦(芝5F15y)を制し今季初勝利をマーク。重賞初挑戦となったヘイドックのG2サンディーレーンS(芝6F)でクビ差2着に健闘すると、前走はロイヤルアスコットのG1コモンウェルスC(芝6F)に挑み、この路線の一線級を相手にここでも2着に好走した。

「もともと調教師の期待が高い馬だったが、ここへきての上昇度合いには目を見張らされる」と、馬主のオーウェンもぞっこんの様子だ。「今の彼なら、ジュライCに挑戦する価値がある」と、3着までに入らなければ損失が出てしまう金額の追加登録料を払った理由を説明した。

 そのフレーミングリブやキングエルメスを含めて、4日の段階でジュライCへの登録を残した馬は16頭いる。

 そんな中、ブックメーカー各社が2.75倍〜3.25倍のオッズを掲げて、前売り1番人気に推しているのが、フレーミングリブやキングエルメスと同じ3歳世代のパーフェクトパワー(牡3、父アーダッド)だ。

 2歳時から、G1モルニー賞(芝1200m)、G1ミドルパークS(芝6F)と、この路線のG1を2勝し、類まれなるスピードを見せていた同馬。今季緒戦となったニューバリーのG3グリーナムSを制し、7Fまでは距離を伸ばせることを実証したが、次走のG1英2000ギニー(芝8F)では7着に敗退。ここで陣営は、スプリント路線への回帰を決め、前走はロイヤルアスコットのG1コモンウェルスCに出走。人気に応えて快勝し、3度目のG1制覇を果した。

 ただし、パーフェクトパワーのジュライC参戦は、現段階で100%確定しているわけではない。ロイヤルアスコット以降も、英国にしては珍しい好天が依然として続いており、舞台となるニューマーケットのジュライコースも、散水が行われるにしろ、クイックな状態が保たれている。

 ロイヤルアスコットの際には、Good to Firm という硬めの馬場でも本領を発揮したパーフェクトパワーだが、本来はもう少し軟らかい馬場を好む馬だ。そこで陣営は、翌10日にフランスのドーヴィルで行なわれるG1ジャンプラ賞(芝1400m)にもエントリー。今後の天候や散水の状況を見ながら、7日(木曜日)の日本時間正午に設けられている最終登録の直前まで、判断を保留するとしている。

 現段階で、キングエルメスはオッズ21〜26倍の7〜11番人気という評価だ。

 6月25日に現地入りして以降、調整は順調と伝えられている中、4日(月曜日)には指揮官の矢作調教師が現地入り。5日(火曜日)には、本番の舞台となるニューマーケットのジュライコースで追い切りが行われる手筈となっている。

 ジュライCの模様は、グリーンチャンネルで生中継(9日、24時〜25時)されるので、ぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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