さまざまなタイプを送る注目のモーリス産駒
クビ差の大接戦を制してカフジオクタゴンが初重賞制覇(C)netkeiba.com
「クビ、クビ」差の大接戦を制して初重賞制覇を達成したのは、カフジオクタゴン(父モーリス)だった。騎乗していたのは短期免許のC.ホー騎手(香港)。来日して2週目。「慣れないダートはあまり好きではない」と言い、また、人気馬にはほとんど騎乗していなかったが、日本での重賞初制覇がダート1800mだった。たちまち好きになったらしい。
コーナーのきつい新潟ダート1800mで最外の15番枠からのスタートは不利だったが、巧みに進路を探して2コーナー過ぎには中団のインへ。その前にいたのが好位差しの人気馬タイセイドレフォン(父ドレフォン)なので、絶好の位置取り。4コーナーでもタイセイドレフォンをマークしながらその横に出すことができた。
2勝クラスを勝ったばかりだが、2走前の八王子特別が古馬相手の多頭数レース。前回の鷹取特別も古馬相手のフルゲート。降級制度がなくなって以降、2勝クラス突破は相手に恵まれるケースもあるが、相手のそろっていたダート2000mを3馬身差で圧勝した上昇度は本物だった。
父モーリスはさまざまなタイプを送る注目の新進種牡馬だが、ダート重賞勝ちはカフジオクタゴンが初めて。
母の父メジロベイリー(今年6月24歳で他界。その父サンデーサイレンス)は朝日杯3歳Sを制しながら故障で大成できず、種牡馬としても恵まれていたとはいえなかった。JRA重賞勝ち馬の母の血統図に登場したのは初めて。祖母の父メジロマックイーン。3代母の父はSadler's Wells。伝統のファミリー出身の成長力に注目したい。
2着タイセイドレフォンは、前走で2勝クラスを1800m1分51秒1(1秒3差)で圧勝。2着だったオディロン(父キタサンブラック)は、前走の鷹取特別でカフジオクタゴンの0秒5差の2着馬。勝ちっぷりの良さと、枠順もあり、ここで人気上位は当然だったが、クビ差は結果的に格好の目標になったことか。勝ったC.ホー騎手も「川田騎手の人気馬が前にいたのでついていった」と振り返っている。
惜しかったのは3着にとどまったハピ(父キズナ)。出負けすることなく勝ったカフジオクタゴンと同じように向こう正面ではインに潜り込み、いつもより早めのスパート。4コーナーでは差し切れる手応えで、上がり37秒9は最速タイ。
これで5戦連続して上がり最速を記録したことになった。「クビ、クビ」の差はカーブのきつい4コーナーで3頭の中で一番外になった不利と、直線、内の2頭が併せ馬になったのに対し、ハピ自身が外へ斜行気味になってしまったことか。ゴール寸前、もう一回伸びて0秒1差。1-2着馬と内容は互角だった。
上位3頭は3歳世代のオープン馬としてこれからも再三対戦するだろうが、この時点での能力差はまったくない。今後は歴戦の古馬相手に成長力の勝負になる。
4着ビヨンドザファザー(父Curlinカーリン)は、上位3頭と5馬身の差が生じてしまったが、前半は最後方追走。スパート態勢に入った4コーナーでうまく馬群がさばけず、急カーブを気にしたようなシーンがあった。着差ほどの能力差はない。
3番人気のホウオウルーレット(父ロージズインメイ)も、最後の勝負どころの4コーナーがスムーズではなかった。まだ手前の変え方がもう一歩なのと、懸念されていたようにきついカーブを4回もクリアしなければならない新潟ダート1800m向きではないのだろう。コースが替わって再注目したい。
全体時計の「60秒5-51秒4-38秒4」=1分51秒9は、前日の柳都S(3勝クラス)、さらに1勝クラスより少し遅かったが、微妙な馬場コンディションの違い、ペースの差を考えると、レースレベルは決して低くないと思える。