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セレクションセールからサマーセールへ

  • 2022年08月17日(水) 18時00分

セレクトセールから流れた購買者が期待して臨んだセリ


生産地便り

北海道市場外観


 7月26日、27日の2日間にわたり、日高で今年度初となる1歳馬市場「セレクションセール」が開催された。両日を合わせで計301頭(牡210頭、牝91頭)が上場されて、そのうち263頭(牡187頭、牝76頭)が落札され、合計53億3830万円(税込み)の売り上げを記録。これで3年連続の売り上げレコードを更新したことになる。前年比で32.9%、13億2253万円の大幅増であった。また、売却率も前年比1.1%増の87.4%と、こちらも過去最高の数字を記録した。

 その2週間前に開催されたセレクトセール(7月11日=1歳、12日=当歳)が空前の好成績に終わったことから、「セレクトでは欲しい馬が予算より高くなり、買い落札できなかった」という声をあちこちで耳にしたので、セレクションセールに期待する関係者が多かったのは事実だ。そんなセレクトセールから流れた購買者が、積極的にセレクションセールに来場し、セリに臨んだということであろう。

 展示(7月25日)を含めて、全3日間のスケジュールながら、天候も良く、セリ開始が10時、終了が午後3時半前後と、余裕のある時間割で推移した点も好印象であった。以前は、最後の上場馬が姿を現す頃には日没時間になっていて、外は真っ暗であった。それが明るいうちにセリが終わってくれたのは助かった。

 購買登録者は987名(前年比101名増)。またオンラインビットの本登録者数は60名(前年比12名増)に達し、多数の購買関係者が会場に足を運んで、終日賑わっていた。

 1頭当たりの平均価格は、初めて2000万円の大台に乗り前年より41万円余多い2029万7719円を記録した。

 上場頭数は前年比67頭増となったが、落札頭数も前年比61頭の増加で、頭数が増えても勢いが衰えることはなかった。2日間ながら、日程による有利不利はなかったと言って良い。

 また、3000万円以上の取引馬は、47頭に達し、前年比16頭増。しかし、中間価格は前年の1760万円から今年度は1595万円にやや下落した。1500万円以上2000万円未満の価格帯の馬が、今年は34頭と前年よりも12頭減少したことによるものだ。

 なお2日間を通じての最高落札価格馬は、204番レーヌミノル2021の7260万円(落札価格6600万円)。父ブリックスアンドモルタル、母の父ダイワメジャーという血統の牡黒鹿毛で、周知の通り母のレーヌミノルは桜花賞馬である。販売申込者は(有)フジワラファーム。購買者は吉岡實氏。

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牡馬最高価格馬204番レーヌミノルの2021


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牡馬最高価格馬204番レーヌミノルの2021の落札場面


 次点は125番ディアレストトリックスキ2021と、246番マルモリバニー2021の6820万円(落札価格6200万円)。125番ディアレストトリックスキ2021は父シニスターミニスター、母の父Proudest Romeoという血統の牡鹿毛。母ディアレストトリックスキは北米11勝のG1馬である。(有)服部牧場の上場馬で、山元哲二氏が落札した。

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セレクション初日125番ディアレストトリックスキの2021


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セレクション初日125番ディアレストトリックスキの2021の落札場面


 また246番マルモリバニー2021は、父シルバーステート、母の父ダンスインザダークという血統で、マルモリバニーは南関入着馬ながら、産駒にウインストラグル(4勝)、セイウンヴィーナス(3勝、クイーンカップ3着)などがいる。大柳ファームの生産、飼養管理者は(株)MAXトレーニングファーム。落札者は三木正浩氏。

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セレクション2日目、246番マルモリバニーの2021


 牝馬の最高価格馬は、197番スイートサルサ2021の5280万円(落札価格4800万円)であった。父ロードカナロア、母の父デュランダルという血統の黒鹿毛馬である。

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牝馬最高価格馬197番スイートサルサの2021


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牝馬最高価格馬197番スイートサルサの2021の落札場面


 母のスイートサルサは5勝を挙げ、福島牝馬ステークスを勝っている実績馬だ。他にも府中牝馬ステークス3着、クイーンカップ2着、愛知杯3着など、オープンクラスで活躍した。生産・販売申込者はシンボリ牧場。落札者は張月勝氏である。

 価格上位馬10傑のうち、牡馬は9頭を占めた。また、取引価格(税込み)5000万円以上の馬は前年から6頭増え11頭に達した。さらに4000万円以上5000万円未満の価格帯には前年比6頭増の15頭と、高額馬が平均価格を吊り上げる結果になった。一方で、1000万円未満の取引馬は、前年の38頭から大幅に増加して60頭となった。価格の上下幅が大きいセリであったと言えそうだ。

 種牡馬別の平均価格ランキングでは、1位ロードカナロア(2頭)の4290万円、2位エスポワールシチー(1頭)の3740万円、3位モーリス(4頭)の3630万円、4位ブリックスアンドモルタル(6頭)の3501万6666円、5位サトノクラウン(3頭)の3336万6666円という順位であった。

 また、実績ある種牡馬や初年度産駒が今年1歳を迎えた新種牡馬の産駒の健闘が目についた。エピファネイアは11頭中9頭の落札、ドゥラメンテが7頭中7頭、キズナが16頭中14頭、キタサンブラックが7頭中6頭、レイデオロが9頭中8頭、ニューイヤーズデイが9頭中9頭、デクラレーションオブウォーが16頭中14頭、リオンディーズが16頭中14頭、ヘニーヒューズが15頭中13頭、サンダースノー8頭中7頭などの種牡馬の産駒が高い売却率を記録した。

 購買総額ランキング(個人)では、松本好雄氏が8頭を総額2億200万円で購買しトップバイヤーとなった。続いて山元哲二氏の5頭、1億8975万円、3位が森中蕃氏の6頭、1億5400万円、吉岡實氏の3頭、1億4960万円が上位5傑であった。

 なお、今回のセレクションセールでは「先読み方式」が初めて採用されたが、進行はほぼ問題なく推移した。また開催日程が2日間にまたがったものの、むしろ終了時間が早まり、概ね好評であったという。

 次はいよいよ、我が国で最大規模のサマーセールが来る8月下旬開催予定である。全5日間の日程で申し込み頭数は1293頭に達する。生産地の景気を占う意味で最も重視されるのがこのサマーセールで、このところサラブレッドの生産頭数が徐々に増加してきている現状から、果たしてどのような売れ行きになるのかが大いに注目されるところだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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