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天皇賞・春

  • 2006年05月01日(月) 12時50分
 レースの流れや馬場コンディションなど、小さな要素は別にして、歴史の中で2400mを超えるような長距離戦のレベルは、最終的には走破時計に行き着く気がする。長距離戦こそ能力の目安は時計にあるとするとき、ディープインパクトの3200m・3分13秒4が示す能力は、間違いなく史上最強だろう。

 マヤノトップガン、サクラローレルが3分14秒4のレコードを樹立した1997年、勝ったマヤノトップガンはレースの前半、いつもより後方に位置し途中で動かず、後半の「マイル戦」のようなレースに持ち込んだ。スパートのタイミングや、レース全体の流れも少々異なるが、ディープインパクトの今回も、前半の1600m過ぎまでは(出負けしたこともあるが)ほとんどレースに参加せず、極端に言うと助走に徹するような形で、ディープインパクトの前半1600m通過は1分39秒3〜4前後(先頭のブルートルネードが1分37秒7)。

 相手に合わせるというより、極力ロスを少なくして進むと(武豊騎手は前半は苦しかったと表現したが、位置取りやペースのことではなくガマンすることに徹したからだろう)、ディープインパクト自身の後半1600mは1分34秒0〜1(その推定の前後半は48.3-44.8秒)で乗り切ったことになる。2周目に入って、向正面から自分だけのマイル戦をスタートさせて48.3-44.8秒。だから、上がり3Fは33.5秒となったわけで、最後方近くに前半は位置したディープインパクトは、マヤノトップガンが当時は不滅とも思えるレコードを記録した時と同様、後半の1600mの競馬に(自身は)持ち込んでしまうようなズバ抜けた能力を示したともいえる。

 ステイヤーとしての資質とは、また少し区分やとらえ方が異なるところがあって、3分13秒4のレコードを、1分36秒7=1分36秒7の一定バランスに近いようなペースで記録するのではなく、1分39秒3=1分34秒1。長距離戦が少なくなったためモデルケースは少ないが、ディープインパクトの心肺機能はとてつもないところにありそうだ。

 どの欧州のG1に遠征するかはまだ決まっていないが、芝の差うんぬんは別に、そうじてヨーロッパの中〜長距離G1は、ワンパターンの流れになることが多い。前半はあまり無理せず、後半になって各馬一気にスパート。前半どれだけスタミナロスを防げるかがカギになるが、芝の違いを考えなければ、ディープインパクトにとってもっとも良さの生きる形が待っているかもしれない。

 ディープインパクトが他馬とは関係のないレースをしたと考えると、流れに乗って早め早めに動き、3分14秒0のリンカーン(3着には5馬身差)の今回のレースの中身も特筆されていいだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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