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「そう簡単には勝たせてもらえません。これが凱旋門賞です」まだまだ続く“世界のユタカ タケ”の挑戦/第11回

  • 2022年10月02日(日) 18時02分
“ジョッキーズヒストリー"

▲2021年、A.オブライエン調教師と(撮影:平松さとし)


前回記した5年ぶりに挑んだ凱旋門賞。その翌2019年から、武豊騎手は3年連続でフランスへと渡ります。19年は、A.オブライエン調教師が管理する3歳馬(当時)のブルームと大一番に挑む予定だったものの、体調が整わず回避に…。そして21年、5歳になったブルームとの出走が決定。2年越しに叶ったA.オブライエン調教師とのタッグに「やっとエイダンの馬に乗れた」と感慨深い思いを感じながら、本馬場入場時に何度もスタンドを見上げていたといいます。

この3年間は日本馬ではなく、いずれもヨーロッパの馬とのコンビ。ヨーロッパを代表する名調教師とチームを組んで挑んだ、“世界のユタカ タケ”の挑戦を振り返ります。

(構成=平松さとし)

あぁ、凱旋門賞に乗っているんだ……


 2019年、武豊騎手の姿はTres Souple(重馬場)のパリロンシャン競馬場にあった。

 これが実に8回目となる凱旋門賞(GI)騎乗。この年は日本からキセキ、フィエールマン、ブラストワンピースと3頭の日本馬が世界最高峰の一戦にエントリー。しかし、武豊騎手がタッグを組んだのはそのどれとでもなかった。この年は思わぬ馬との挑戦となったのだ。

 そもそも本来はブルームとのコンビで挑む予定だった。同馬はアイルランドの伯楽、A.オブライエン調教師が管理する馬で「武豊騎手で凱旋門賞を勝つ!!」と常々公言している松島正昭オーナーがその権利を買い取った馬。しかし、体調面が整わず、大舞台を前に回避が決定。その後、オブライエン調教師が「別の馬に騎乗してもらう事も考えている」と語ったが、結果的に騎乗したのはヨーロッパの別の名調教師が面倒をみる馬となった。

「武豊騎手に合っていると思うから……」

 騎乗依頼の理由をそう語ったのはJC.ルジェ調教師。フランスではA.ファーブル調教師と並ぶ伯楽だ。純粋に日本の天才騎手の腕を見込んでの騎乗依頼。日本人の息のかかっていない馬での挑戦となったわけだ。

“ジョッキーズヒストリー"

▲JC.ルジェ調教師と(撮影:平松さとし)


 結果は12頭立ての6着に終わった。

「ユタカは完璧な騎乗をしてくれました。満足しています」

 ルジェ師はそう語った。

 また、日本から挑んだ3頭にはいずれも先着してみせた。世界のユタカの面目躍如とも意地とも思える結果ではあったが、武豊騎手はあくまでも冷静に言った。

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1965年、東京都出身の競馬ジャーナリスト、ターフライター。国内だけでなく、海外での取材も精力的に行なっており、コラムの寄稿や多数の著書を出版するなど幅広く活動している。

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