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【スプリンターズS】内・外の馬場差が波乱を呼ぶ結果に

  • 2022年10月03日(月) 18時00分

外を回った馬には厳しすぎる競馬に


重賞レース回顧

ジャンダルムがGI初制覇(撮影:下野雄規)


 一番の好スタートから、先に行きたい2頭の3番手につけた外国産馬ジャンダルム(父Kitten's Joyキトゥンズジョイ)の、鮮やかな初GI制覇。鞍上の荻野極騎手(25)にとっても念願の初GIタイトル獲得だった。以前は前半に脚を使うと後半の伸びを欠くところがあったが、今回の自身の中身は「33秒2–34秒6」=1分07秒8。最後までバテなかった。ジャンダルムと、荻野極騎手コンビの中山芝1200mは3戦3勝となった。

「1、2、3、4」番人気馬が馬券圏外に沈んだ大波乱の驚きとともに、多くのファンは、なぜ予測を大きく下回る平凡なタイムで、外を回った馬(外枠の馬)が伸びかかったところで失速し、馬場の内側を通った馬ばかりが上位を独占したことに驚いた。

 先週の「オールカマー」が、終始内ラチ沿いを進んだ馬番「2、1、3」の決着で、ラチ沿いを通って逃げたバビットが4着したのに続き、このスプリンターズSで上位を占めたのは馬番「2、7、6、4、9、5」の各馬。

 4コーナーで馬群の外に回った9番ナムラクレア(父ミッキーアイル)は直線で伸びなかったというより、失速した形で5着。最後に馬場の中ほどから突っ込んだ6番ナランフレグ(父ゴールドアリュール)が3着に健闘したものの、上位は前半から馬場の内側を進んだ馬ばかり。7着トゥラヴェスーラ(父ドリームジャーニー)など、前が2度も詰まりながらそれでもインを狙った馬だった。

 オールカマーの週からCコースに移動すると、開催前半の雨の影響で少し傷ついた印象もあった内側の芝だが、そこを通る馬は失速しなかった。一見、走りやすそうな芝に映った馬場の中央から外側を通った馬は、伸びかけて最後は大半が失速した。

 踏み固められた部分が走りやすく、そうでない外側が見た目以上にタフな芝コンディションとなったのは、秋の中山を迎える前の芝のクッションを高めるエアレーション作業(バーチドレン、シャタリングなど)があまりに効きすぎ、そこに雨と移動柵も関係し、馬場の内側だけが圧倒的に有利な芝コンディションになってしまったのではないか、と想像される。

 オールカマーの結果と、スプリンターズSの結果を振り返って、新潟の直線1000mの逆バージョンみたいなレースだったと振り返った記者もいた。

 各競馬場の芝コンディションが微妙に異なり、この夏の小倉のように日本記録1分05秒8が飛び出すコースも、メイケイエールが1分06秒2のコースレコードで快勝した馬場も、今回の中山のように古馬2勝クラス以上の芝1200mがすべて1分07秒台の後半になるようなコンディションも歓迎したいが、さすがのここ2週間の中山コースの芝は、内、外の有利不利があまりに大きすぎた。これは改善策を考えたい。

 1番人気のメイケイエール(父ミッキーアイル)の14着失速は、レコード勝ちの後の中2週の目に見えない疲れ、パドックでは落ち着いていたが、先出しになった馬場での微妙な気配など複数あるだろうが、スラリとした脚長のスマート体型に、この日の外枠のタフな芝コンディションは合わなかった。

 差し切れそうな勢いで伸びかかりながら、最後に失速したナムラクレアの敗因も外寄りの枠順が大きかったと思える。

 3番人気シュネルマイスター(父Kingmanキングマン)は、短距離型に近い体型なので、路線を変更して2度目、3度目となれば1200mも十分こなせるだろうが、今回は「33秒9-34秒4」のバランスで1分08秒3。このあとはマイル路線と思えるので、あれ以上押して行っては、次走のレース運びが難しくなってしまう。セントウルS1200mのソングラインも同じテーマだった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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