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【毎日王冠】シャープに絞り込んで覚醒に成功したサリオス

  • 2022年10月11日(火) 18時00分

先の大舞台でも最有力候補になるはず


重賞レース回顧

サリオスがレコードタイムで勝利(撮影:下野雄規)


 前週までの中山とは一転、秋の東京らしい高速レースが展開された。なにもタイムが速ければいいというものではないが、1分44秒1のコースレコード(JRAレコードと0秒3差)には古馬のトップクラスらしい迫力があった。

 スタート直後の1ハロン以外、すべてハロン11秒台以内の高速ラップが続き、前半800mは「46秒2」。中間の1ハロン「11秒7」をはさみ、後半の800mも同じ「46秒2」。どこにもペースの緩みがない厳しい流れで、1600m通過は1分32秒3だった。

 この息の入れにくい流れを、勝ったサリオス(父ハーツクライ)、2着ジャスティンカフェ(父エピファネイア)の2頭はともに上がり3ハロン「33秒8」で伸びているからすごい。レースの最後の1ハロンは11秒8。2頭はライバルが少し苦しくなったところで、最後にサリオスは推定11秒2、ジャスティンカフェは推定11秒5で伸びている。

 5歳サリオスは2020年の毎日王冠を1分45秒5(上がり34秒1)で快勝したあと7連敗を続けていたが、ひと頃550キロにも達した馬体を、少しシャープな530キロ台に研ぎ澄ますことによって覚醒に成功したといえる。

 母サロミナの属するドイツを代表するシュヴァルツゴルトの名門牝系は、ソウルスターリング(2017年のオークス馬)、ヴェロックス(2019年の牡馬三冠、2、3、3着)、シュネルマイスター(2021年のNHKマイルC1着)、さらにはブエナビスタ一族、マンハッタンカフェの一族など、素晴らしい底力を伝えると同時に、分かりやすい成長カーブを描いてくれないことで知られているが、ちょっと評価の下がりかけていたところで、傑出した内容で1800mを1分44秒1。

 毎日王冠を制したサリオスは、いかにもシュヴァルツゴルト一族から出現したパワーあふれるGI馬らしい底力を見せつけた。マイルチャンピオンシップか、あるいは2000mの天皇賞(秋)でも、12月の香港マイルでも最有力候補の1頭になるだろう。

 2着ジャスティンカフェは勝ち馬に半馬身差されたが、オープンに上がってまだ2戦目。GI級と対決するのは初めてだった。最後はサリオスの底力に屈したものの、休み明けで別定のGII。前走のエプソムCも4着とはいえ、0秒1差だけ。4代母はオークス馬シャダイアイバー(父ノーザンテースト)。父エピファネイアの大成功のパターン通りサンデーサイレンスの「4×3」だけでなく、サドラーズウェルズ「4×4」のクロスも秘める。

 1800mは今回が3戦目。1分46秒8の最高時計を一気に2秒6も短縮して東京の1800mを乗り切ったのはすごい。距離経験はこれまで1800mまでだが、勝ったにも等しい2着で通算成績【4-4-1-2】。2400m級までこなせると思える。

 スタート前、ゲートに突進のアクシデントを克服して0秒2差ダノンザキッド(父ジャスタウェイ)は、非常に惜しい3着だったが、これで無敗の3連勝のあと8連敗中の5回までが「3-4」着。またまたあと一歩の詰めの甘さを示す結果でもあった。確かに惜しい3着、4着は多いが、父ジャスタウェイが再三2-3着止まりだったあと、本格化して4連勝(GI3勝を含む)を達成したのは4歳秋以降のことだった。本物になるのはこれからかもしれない。

 厳しい流れで、快時計の決着。5着以内に入ったのは全馬5番人気までに評価された馬だった。前半1000m通過「57秒9」の厳しい流れを早めに2番手追走の形になって4着のレイパパレ(父ディープインパクト)は、前半のペースが少しだけきつすぎた結果か。評価の落ちる敗戦ではなかった。出負けして0秒4差のノースブリッジ(父モーリス)も、格上がり2戦目でこの善戦は期待以上の好内容だろう。追って伸びていた。

 6着ポタジェ(父ディープインパクト)は、7番人気にとどまったように、今回は気迫に欠けデキもう一歩。時計勝負の結果に58キロも厳しかった。

 一変に期待した4歳キングストンボーイ(父ドゥラメンテ)は0秒7差の7着。1800mは合っているはずだが、関越Sと同じ1分44秒8ではまだ力及ばずの結果だった。

 高速の芝だったので、速い時計をそのまま信用することはできないが、緩みない流れの毎日王冠で上位に食い込んだグループの能力は、このあとも評価に値する。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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