挑戦者らしい先行策
ブレークアップが勝利したアルゼンチン共和国杯(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
近年は「3-4」歳馬の出世レースの色合いが濃い長距離のハンデ重賞を、今年も4歳ブレークアップ(父ノヴェリスト)が、3勝クラスを勝ったばかりの勢いに乗って快勝した。
とくに若い馬有利の傾向が強まった最近15年に限ると、3-4歳馬「11勝」。5歳以上馬「4勝」となった。
今年出走していた3-4歳馬はわずか3頭だけ。そこで4歳テーオーロイヤル(父リオンディーズ)、3歳キラーアビリティ(父ディープインパクト)が人気を集めたのは自然な成り行きだった。しかし、勝ったのはもう1頭の4歳馬、6番人気のブレークアップ。騎乗した田辺裕信騎手が、「まさか勝てるとは…。正直、びっくりしている」と振り返る急成長だった。
レースの流れは前後半の1200m「1分13秒8-(6秒2)-1分11秒1」=2分31秒1。先手を主張したキングオブドラゴン(父ハーツクライ)から離れた3番手で先行したブレークアップの前半1200m通過は推定1分15秒0前後。
理想の好位で、自身はスローでの楽な追走。同じような位置にいた、これも格上がりのカントル(父ディープインパクト)が小差の4着しているから、上がり馬の強みを生かそうと挑戦者らしい先行策をとった馬向きの流れだった。
善戦しながらもあと一歩の詰めが甘い6歳ラストドラフト(父ノヴェリスト)、5歳ヒートオンビート(父キングカメハメハ)が、5着、3着。この兄弟をこの距離での一応の能力基準とすると、一気にカベを突破したブレークアップ(今回は54キロ)はまだ4歳だけに、もうひと回りスケールアップするとき、出世レースを制した上がり馬としてトップグループに加われるだろう。
2着したハーツイストワール(父ハーツクライ)は6歳馬だが、今年になってオープン入りし、目下連続して連対の上昇馬。まだ17戦【5-8-0-4】。ようやく本物になったタフな成長力をこれからも示してくれるはずだ。
トップハンデ57.5キロで1番人気のテーオーロイヤルは2着馬と同タイム6着。トップハンデの不利と、切れ味もう一歩の死角も多少あったが、内にいたキングオブドラゴンのラチ接触斜行の不利を大きく受けたのが、この馬だったか。文字通りの勝負どころで突然のアクシデント、不運だったというしかない。
珍しく置かれることなく中団追走からインを狙った9着ディアマンミノル(父オルフェーヴル)も、キングオブドラゴンの突然のアクシデントの影響を受けている。大跳びなのでバランスを崩したのが痛かった。
2番人気の3歳馬キラーアビリティは、休み明けのためかパドックから少々落ち着きを欠き、スタートも良くなかったので控えて進む策をとったが、道中かなり気負っていた。
馬体は良くなっている。成長はうかがわせたが、今回は若さが出てしまったのが敗因。使って良化型の一面もあるので、次走の変わり身に期待したい。
7歳ユーキャンスマイル(父キングカメハメハ)はベテランらしく、元気がないのかと映るほど落ち着き払った気配。前回の新潟記念で見せた切れ味は再現できなかったが、上位入線組では上がり最速タイの33秒7。前方のアクシデントで馬群が外に寄ってきたため、スムーズに進路をとることができなかった。まだまだ衰えなどない。