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【エリザベス女王杯】名牝ジェンティルドンナとモーリスの産駒がいよいよ本物に

  • 2022年11月14日(月) 18時00分

底力上位の2頭による決着だった


重賞レース回顧

ジェラルディーナが勝利したエリザベス女王杯(C)netkeiba.com


 勝ったジェラルディーナ(父モーリス)はパドックでいつも以上に気負ってイレ込みにも近い状態だった。それでも総合力の問われた厳しいレースを完勝したのだからすごい。名牝ジェンティルドンナ(海外を含みGI7勝)と、同じく海外を含みGI6勝の種牡馬モーリスの産駒が、いよいよ本物になった。今回、たった2頭しか出走のなかった4歳馬のうちの1頭でもあった。

 日本の競馬を知っているとはいえ、鞍上のC.デムーロ騎手はさすがだった。8レースの芝2200m内回りで、巧みにインを狙って一旦先頭に立ちながら差されたレース(3着ブラックシールド)。さらには一番外に回って差し切った9レース黄菊賞のセブンマジシャンを教訓に、芝コンディションを読み切っていた。ふつう欧州のビッグレースではめったに外々を回るレースなどしないはずだが、ジェラルディーナではコースロスは承知、それでも馬群の内を狙う素振りもなかった。最初からずっと外を回っている。着差を考えれば大きな勝因のひとつだろう。

 これでC.ルメール、M.デムーロ騎手を含めてだが、最近8年のエリザベス女王杯で3着以内に好走した24頭のうち、13頭の鞍上がカタカナ表記の騎手によって占められたことになった。1番人気馬は3頭だけ。今回はたまたま結果的に有利だった外枠の人馬だったこともあるが、必ずしも偶然とは思えない。

 レース全体の流れは、前後半「60秒3-(12秒3)-60秒4」=2分13秒0。まぎれの生じにくい一定ペースであり、前2年と同じ阪神でも、重発表とあっていつも以上に底力が問われるレースだった。勝ったジェラルディーナは、男馬相手のGIIオールカマー2200mの勝ち馬。2着ウインマリリン(父スクリーンヒーロー)は、やはり男馬相手のGII日経賞2500mと、GIIオールカマー2200mの勝ち馬。底力上位の2頭だった。

 2着同着のライラック(父オルフェーヴル)は、まだ3歳。ビッグレース好走の実績こそないが、底力を問われるレース向きのオルフェーヴル産駒で、菊花賞を5着したブラックホール(父ゴールドシップ)とほとんど同血といってもさしつかえない血統背景の妹。いかにもこういうビッグレース向きだった。今回は直前にも入念に追って。これまで最高の馬体重438キロ。落ち着きがあり、イレ込みもなかった。ライラックも本格化しかかっている。

 昨年の勝ち馬アカイイト(父キズナ)が大外から伸びて4着。昨年と同じように早めの一気のスパートをかける手があったかもしれないが、直前にビシッと追ってもまだ少々立派に映る524キロ(昨年は514キロ)。もう少し絞りたかっただろう。

 3番人気のナミュール(父ハービンジャー)、1番人気のデアリングタクト(父エピファネイア)は、正攻法で中団追走となったが、走りにくい馬場コンディションのなか、終始もまれる形になったのが誤算か。馬群がバラけなかったため接触のシーンもあり、結果として良馬場より道中のロスが大きかった。

「こんなはずではない」。1番人気で6着にとどまったデアリングタクトは、ジャパンCにも登録しているが、無敗の5連勝のあと、決して凡走しているわけではないが、これで7連敗。運にも見放されている。果たして完全復活できるだろうか。

 2番人気のスタニングローズ(父キングカメハメハ)は失速して14着。牝馬の中ではタフなタイプと思われたが、秋華賞を制した年の3歳牝馬のエリザベス女王杯成績はこれで【3-2-1-10】。残念ながら反動の出たパターンになってしまった。

 狙ったピンハイ(父ミッキーアイル)は、気合をつけて珍しく好位追走。4コーナーまでは余力があったと思えるが、外を回ることができた外枠の馬が上位を独占したレースだけに、内枠の不利は大きかった

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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