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道営ホッカイドウ競馬開催終了

  • 2022年11月16日(水) 18時00分

今年のホッカイドウ競馬を振り返る


 4月13日に開幕した今年度の道営ホッカイドウ競馬が、このほど11月10日をもって全85日間の開催を無事に終えた。毎週火水木の週3日間を基本(ただし開幕当初から6月までは週2日開催もあり)に、全85日間で、合計527億7857万5710円(SPAT4LOTOを含む)を売り上げ、昨年の522億9969万2470円(SPAT4LOTOを含む)の記録を更新し、過去最高の発売額となった。ただし、開催日数が昨年より3日間増えているため、1日平均では6億2092万円余となり、昨年の6億3780万円余からやや減少したことになる。

 今年は春以来、順調に開催を消化できて、台風などの自然災害による休止は一日もなかった。また、新型コロナの陽性者が、厩舎関係者に出ることはあったものの、いずれも散発で広範囲に拡大することがなく済んだ。シーズンを通して、非常に順調に競馬開催が続けられた一年であった。

 さて、ホッカイドウ競馬では、年間4つの交流重賞が行われている。6月の北海道スプリントカップ、8月のブリーダーズゴールドカップ、10月のエーデルワイス賞、そして11月3日のJBC2歳優駿の4競走である。一昨年は、これら4競走のうち3つを地元ホッカイドウ競馬所属馬が制した「当たり年」であった。北海道スプリントカップを10歳馬メイショウアイアン(田中淳司厩舎)が勝ち、エーデルワイス賞をソロユニット(角川秀樹厩舎)が、そして、この年より従来の北海道2歳優駿からJBCシリーズに組み込まれ、賞金も増額されてJBC2歳優駿になったこのレースを、翌年道営3冠馬となるラッキードリーム(林和弘厩舎)が制し、交流重賞4戦3勝の大健闘であった。

 さすがに8月に行われるブリーダーズゴールドカップは牝馬限定ながら中央所属馬との実力差が甚だしく、地元勢は勝てないままだが、少なくとも2歳戦においては、互角以上の勝負を演じて来た。昨年も、エーデルワイス賞をスピーディキックが制覇し、他の3競走は中央遠征馬にさらわれたものの、改めてホッカイドウ競馬の2歳レベルの高さを見せつけた形になった。しかし今年は、残念ながら4競走とも地元勢の優勝がなく、全て中央馬の勝利に終わってしまった。

 とはいえ、中央からの遠征馬と騎手を迎え実施されるこれら交流重賞の開催日は、馬券の売り上げが大きく伸びる。他の開催日と比較すると際立った違いがあり、馬券売り上げが過去最高額になった原動力のひとつが、これら交流重賞にあると言って差し支えない。

 6月2日北海道スプリントカップの日は13億9691万円、8月11日ブリーダーズゴールドカップの日は15億7118万円、10月20日エーデルワイス賞の日は13億2945万円、そしてJBC2歳優駿の日には、16億8739万円と、いずれも平均の二倍以上を売り上げた。

 一方で、相変わらず、ホッカイドウ競馬の最大の弱点が、開幕してから6月あたりまでの出走頭数の少なさである。レース数も一日12レースは組めず、10レース、11レースという日が続き、しかも1レース当たり6頭立て〜8頭立てで行われることが非常に多かった。開幕当初は開催日数を週二日に絞っているにもかかわらず、頭数が十分に確保できていない点が、毎年のことながらホッカイドウ競馬最大の泣き所である。

 門別でデビューした2歳馬の約7割がシーズンオフには他地区へ移籍してしまうとも言われ、一度外に出て行った馬が3歳以降、なかなか戻って来ない現状を、どうにかして改善しなければ、これ以上の発展は望めないのではないかという気がする。

 2歳戦主体とはいっても、4月の開幕時から出走体制の整っている2歳馬は少なく、頭数が徐々に揃ってくるのは6月以降のことだ。本来、それをカバーすべき3歳以上の在厩馬がとりわけ春先になかなか確保できないのは、他地区の地方競馬もまたここ数年で馬券売り上げを大きく伸ばしており、ホッカイドウ競馬以上の賞金体系を確立できていることが大きい。

 門別から移籍して行った馬たちが、他地区で走れば走るほど再び戻ってくる可能性が低くなるのも当然で、馬主の立場からすれば、他地区の方がより賞金を稼げるのなら無理に門別に帰さない方が得策なのは言うまでもない。そこを何とか改善すべく、他地区から門別への輸送費補助などの施策が講じられてはいるが、もっと抜本的な改革が必要である。すなわち、賞金や出走手当の増額だ。それ以外に、門別に馬を戻す(あるいは移籍させる)手段はないような気がする。

 最終日の11月10日。この時期にしては好天微風の好条件にも恵まれて、門別競馬場は、入場人員が1211人を数え、大いに賑わった。開催の掉尾を飾るのは「第65回道営記念」。今年から1着賞金が2000万円に増額され、門別の一線級16頭が顔を揃えた。

生産地便り

▲パドックを囲む多くのファン


 既報の通り、勝ったのは五十嵐冬樹騎手が手綱をとったサンビュート。セン5歳。父パイロ、母チャームエンジェルという血統で堂山芳則厩舎の管理馬。馬主は(有)加藤ステーブル。本馬にとってはこれが嬉しい初重賞制覇であった。

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▲五十嵐冬樹騎手が手綱をとったサンビュート


 なお、五十嵐冬樹騎手はこれがラストランとなり、来年から門別で調教師として厩舎を開業することになっている。レース後には、愛嬢の五十嵐ひなさん(中3、来春、JRA競馬学校騎手課程入学予定)も父と同じ勝負服で姿を見せ、サンビュートに乗って親子で記念撮影をする一幕もあった。まさに「五十嵐冬樹デイ」となった。
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▲同じ勝負服で記念撮影する五十嵐親子


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▲レース後の五十嵐冬樹騎手、感無量の面持ち


 因みに最終日の11月10日は、計12レースが行われ、合わせて138頭が出走した。この日の売り上げは8億4218万円。無理な相談かも知れないが、せめて開催期間を通じていつもこれくらいの出走頭数が揃っていれば、とは思う。
生産地便り

▲第65回道営記念



 来春、ホッカイドウ競馬が開幕する時には、少しでも状況が改善されていることを願ってやまない。さらに売り上げを伸ばすためにも、開幕直後の4月〜5月の番組充実、そして十分な出走頭数の確保がまず求められる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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