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【チャンピオンズC】強烈な差し切りから価値あるGI制覇

  • 2022年12月05日(月) 18時00分

芝から方向を変え初重賞制覇からたちまちGI馬へ昇りつめた


重賞レース回顧

チャンピオンズCを制したジュンライトボルト(C)netkeiba.com



 ダートに転向して石川裕紀人騎手(27)とコンビを組み、これで4戦【3-1-0-0】。5歳牡馬ジュンライトボルト(父キングカメハメハ)の、人馬ともに初の、逆転のGI制覇が達成された。これまでのダート3戦は、まだダート戦に慣れていないこともあって直線は外の回るレースを続けてきたが、今回は人気のテーオーケインズ(父シニスターミニスター)をマークしながらその直後を追走。直線は外に出すことなく、ジャパンCの覇者ヴェラアズール(R.ムーア騎手)を彷彿させるかのような強烈な差し切りだった。

 ヴェラアズールはダートから芝に方向転換して、初重賞制覇から、たちまちGI馬となり、ジュンライトボルトは芝から方向を変えて、初重賞のシリウスS勝利から、初のGI勝利。スペシャリストに昇りつめるのも難しいが、ダートも、芝も平気なトップクラスになるのはもっと大変なこと。価値あるGI制覇だった。

 父キングカメハメハの種牡馬としての卓越した優秀性は知られるが、種牡馬スペシャルウィークもまた、ダート部門でも大活躍のサイアー。ローマンレジェンド(東京大賞典)、ゴルトブリッツ(帝王賞)などの父であると同時に、母の父として今回のジュンライトボルトや、今回出走していたサンライズホープ(シリウスS)、さらにソリストサンダー(武蔵野S)、フィールドセンス(日本TV盃)などのブルードメアサイアーに登場する。

 ジャパンCのヴェラアズールの母の父は、芝でもダートでもチャンピオンを送る種牡馬クロフネだった。スペシャルウィークもそういう種牡馬である。

 勝ったジュンライトボルトは、ダートGIを初めて制した友道調教師が「来季はフェブラリーSや、ドバイになると思います」と展望している。

 レースの流れは飛ばす馬がいなかったため、「前半1000m通過62秒4」のスロー。その結果、中京1800mになって9年、もっとも遅い勝ち時計だった。猛然と伸び、上がり36秒2で差し切ったジュンライトボルト以外のレース内容は、やや迫力に欠けた印象がなくもないが、2着クラウンプライド(父リーチザクラウン、その父スペシャルウィーク。母の父キングカメハメハ)は3歳馬。3着ハピ(父キズナ。母の父キングカメハメハ)も3歳馬。ともに流れを読んで先行した鞍上のレース運びに助けられたところはあるが、過去10年、3歳で3着以内に快走したのは「ホッコータルマエ、ノンコノユメ、ルヴァンスレーヴ、クリソベリル」。

 みんなのちにチャンピオン級に成長した馬ばかりである。もう1頭の3歳馬ノットゥルノ(父ハーツクライ)も差のない8着。3歳馬には大きな収穫があった。

 一方、1番人気のテーオーケインズは、0秒3差の4着止まり。差はなかったとはいえ、非常に物足りない内容に終わってしまった。

 3歳秋にオープンに出世して以降、JRAの競馬場では【4-1-0-0】だったが、今回初めて凡走してしまった。レース間隔が詰まると良くないのは知られていたが、さすがにもう完成の域に達しているとされた今回、思わぬテーオーケインズ自身の破綻だった。スタートが良くないのはいつものことでロスはないが、道中の動きにチャンピオンらしい存在感が乏しかった。

 珍しいほどのスローなので、「強気にスパートしてくれ」という声援もあったが、断然の1番人気馬。慎重なレースになったのはやむを得ないだろう。このペースで直線の伸びを欠いたのは、残念ながらダートのチャンピオンにしては意外なほどタフなタイプではなかったということになる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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