ディープインパクト、アーモンドアイに匹敵する天才ホース
有馬記念を制したイクイノックス(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
近年では、ディープインパクト、アーモンドアイに匹敵する天才ホースと形容される3歳イクイノックス(父キタサンブラック)が、天皇賞(秋)よりさらに強い勝ち方でGIを連勝した。今回がまだ6戦目なのに、GI【2-2-0-0】。出走レースを絞る陣営が増えたとはいえ、このビッグレースを6戦目で制したのは初めてだった。
これまでは、きわめて戦歴の少ない3歳馬とあって、完成途上を思わせる頼りなさを感じさせるところもあったが、名馬の並んだ有馬記念のパドックで、格段に鋭かったのはイクイノックス。かつ力感あふれる馬体に成長している。
一段と自信を深めた陣営は、「日本を代表する1頭になったと思う。来年は、国内外でレースを選択していきたい」としている。天才ホースの裏面にありがちな「危うさ」は今回の有馬記念圧勝で一気に消し飛んだ。ぜひ、世界のイクイノックスに前進したい。
レース全体のペースは、前後半「1分14秒1-(6秒3)-1分12秒0」=2分32秒4。
全体時計はほぼ同じでも、パンサラッサが飛ばした昨年の前後半バランス「1分12秒0-(6秒3)-1分13秒7」=2分32秒0とまったく逆の、前半スローだった。
好スタートからハナを切ったのは予測された通りタイトルホルダー(父ドゥラメンテ)。当然、もっとペースを上げる予定だったはずだが、慎重な仕上げで動きに不安はないと思えたものの、明らかに行きっぷりが悪すぎた。ピッチを上げ後続に脚を使わせるはずの残り600mからの1ハロンのラップは「12秒2」。後続を突き放すどころか、逆に勝負どころで楽々と接近されている。中間の雰囲気は良くなっていたが、レースでは最初から自身のリズムに乗れなかったのだろう。このペースで主導権をにぎって自身の上がり3ハロン「37秒6」で9着。残念だが、今回は能力全開にほど遠かった。
2着に突っ込んだボルドグフーシュ(父スクリーンヒーロー)も3歳馬。近年は3歳、4歳馬の攻勢が目立つグランプリだが、3歳=3歳のワンツーは、1994年の「ナリタブライアン、ヒシアマゾン」以来のこと。もう1頭の3歳馬ジャスティンパレス(父ディープインパクト)も積極策から見せ場を作ってそう差ない7着だった。
ボルドグフーシュ(福永祐一騎手)は最後方近くから外を回って豪快に追い上げ、上がり最速の35秒2。イクイノックスには及ばなかったが、つい3走前まで2勝クラスだった急上昇馬。来季の大躍進は間違いない。
3着にとどまった4歳牝馬ジェラルディーナ(父モーリス)は、スタートで後手を踏んでしまった。パドックではいつものチャカつきを見せず落ち着いていたが、「ゲートで落ち着きすぎていて立ち遅れた(C.デムーロ騎手)」のだから、たまたまのこと。この秋の充実は本物であり、直線は苦しい位置から猛然と伸びている。母が有馬記念を制したのは引退レースとなった5歳時であり、一段のパワーアップが望めるはずだ。
5歳牝馬イズジョーノキセキ(父エピファネイア)、4歳牡馬エフフォーリア(父エピファネイア)が、4着、5着。イズジョーノキセキは5歳になっての充実が本物であることを示し、スランプに陥っていたエフフォーリアも復調の手ごたえ十分だった。
種牡馬エピファネイアの産駒は、完成されるのが早すぎるのでは…などとささやかれたこともあったが、もうそんな心配はない。とくにエフフォーリアはパドックで目立って大きく見せたのは好調時に近づいた証拠であると同時に、532キロ(プラス12キロ)は、ちょっと余裕残りの体つきにも映った。来季の完全復活はある。
ヴェラアズール(父エイシンフラッシュ)は、イクイノックスをマークする位置を進んだが、道中、少々狭くなるシーンが重なってしまった。