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【日経新春杯】トップハンデの壁を乗り越えた実力勝ち

  • 2023年01月16日(月) 18時00分

テン乗りイーガン騎手の手綱さばきも光った見事な勝利


重賞レース回顧

日経新春杯を制したヴェルトライゼンデ(c)netkeiba.com



 トップハンデの初の59キロが心配され、最終的には2番人気にとどまった6歳ヴェルトライゼンデ(父ドリームジャーニー)の実力勝ちだった。

 59キロでの平地の芝重賞制覇は、2011年京都大賞典のローズキングダム以来のこと。また、ハンデ戦の日経新春杯で59キロ以上を課せられて勝ったのは1999年のメジロブライト(59.5)以来24年ぶりだった。現在より全体に負担重量の重かった遠い時代の日本経済新春杯では、1978年、悲劇のテンポイントが66.5キロで出走の歴史もある。

 池江調教師は「59キロで勝ったことに価値がある」と、ヴェルトライゼンデを称えた。今年からの平地での基本的な負担重量1キロ増が、ジョッキーの減量負担をカバーできるプラスがあると同時に、欧州のビッグレースに出走するトップホースの、重い負担重量への慣れにつながることを期待したい。また、芝コースのクッションを高める方向にむかいながら、でもやっぱり、高速化にブレーキがかからない馬場に対する考え方にも、また異なった方向が生まれるだろう。高速馬場で負担重量増は危険だ。

 ヴェルトライゼンデは母の父Acatenangoアカテナンゴ(GER)の影響力も大きいはずだが、負担重量の重い凱旋門賞に特別の良績を残してきたステイゴールド系(ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル)の適応力が、優れた闘争心とともに、祖父ステイゴールド、父ドリームジャーニーの時代を経て、次の世代にもつながったから素晴らしい。オジュウチョウサンもあのタフネスぶりはステイゴールド産駒だからだった。

 テン乗りでも、D.イーガン騎手(英・23歳)はこういうタフな馬場コンディション、距離、負担重量など、慣れているのでむしろ有利だったのだろう。進路選択、他馬と併せに行くような追い比べなど、手綱さばきは完ぺきで見事だった。

 2着に粘り込んだ伏兵キングオブドラゴン(父ハーツクライ)は、自身でハナを奪って粘り込むレースが多かったが、今回はアフリカンゴールド(父ステイゴールド)の2番手追走。気合を入れ通しで決して手ごたえは良くなかったが、坂井騎手が「つかみどころのない面白い馬です」と振り返ったように、直線に向いて自分が先頭に立つと気分が良くなり再びハミを取った。この相手に2着はフロックではない。

 プラダリア(父ディープインパクト)は、芝状態を考慮し、大外に進路を取ったのは予定通りか。上がり最速の34秒8で差を詰めたが「クビ、クビ」差の3着。あと一歩の伸びを欠いたが、今回が初の古馬との対戦。ベテラン勢とそう差のない56キロでこの内容なら、日本ダービー5着、菊花賞7着馬らしく、今年の展望は広がった。

 差のない4着も、4歳になったばかりのヤマニンゼスト(父シンボリクリスエス)。2着に突っ込んだ神戸新聞杯(同じ中京2200m)と同じようなイン狙いのレースになったが、目下パワーアップ中で、パンチもう一歩だった。神戸新聞杯より軽い55キロのハンデで、自身の走破タイムは2秒7も遅かったから、現時点では良馬場向きか。

 1番人気のロバートソンキー(父ルーラーシップ)は当初、AJCCと両睨みだった。ハンデ57キロは、勝ち馬の59キロや、58、58.5キロの3頭より明らかに有利とみえたのでここに出走だった。ただ、整った好馬体ながら迫力もう一歩の印象もあり、絶えず間隔をあけているように、冬場の休み明けは仕上げが難しいのだろう。祖母はトウカイテイオーの全妹という注目馬。これで底をみせたわけではない。巻き返してくる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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