スマートフォン版へ

オークス

  • 2006年05月22日(月) 12時51分
 抑えが利かずにかかって行ったヤマニンファビュルの前半(46.3-58.1-70.5秒)の数字が、記録としては逃げた馬のペースとして残るが、事実上の主導権を握ったのは離れた2番手のアサヒライジング(柴田善臣騎手)で、推定の前半1200m通過は(目測になるが)1分13秒8前後だった。これは牝馬2400mとすればほぼ理想の平均ペースで、次週、アドマイヤメインで逃げることが予想される柴田善臣騎手にとって、1週間前に絶好のモデルパターンができた形で、今回のオークスの前後半のバランスは(1分13秒8=1分12秒4)のもっとも自然な流れだった。

 したがって、レースは壊れなかった。脚元に異常を感じて3角手前で止めたコイウタ(4番人気)以外、上位7番人気以内に支持された候補が、1〜6着までにすべて入るという、その順番はともかく、極めて順当な結果に近いオークスだっただろう。現時点の、あるいは各馬の2400mでの総合力に近いものが示されたと考えることができる。

 カワカミプリンセスは、明らかに例年のスイートピーSの勝ち馬とは違っていた。桜花賞のキストゥヘヴンにも似たようなところがあるが、使いつつ良化して連勝を始め、ちょうどピークにも近い4戦目がオークス。今回は初めて馬体を少し絞ったことにより、チャカついたり、やや寸詰まりの体型が心持ち小さく見えたりしたが、文句なしの実力勝ちだろう。好位につけ早めにスパートする正攻法で力強く抜け出した。

 キングヘイロー2年目の産駒(ニシノフジムスメも同じ)。種牡馬キングヘイローの真価を証明するオークスだったともいえる。2分26秒2は(エイシンサニーの2分26秒1当時とはコース形態が少し変わったので)、事実上のオークスレコードでもある。ベテランの本田騎手も自信にあふれていた。やや地味な印象もあるベテラン騎手が、ちょっと地味なムードもある伏兵でGIを勝つ形がこの春ずっと続いている。

 カワカミプリンセスの牝系は5代ほど遡ると、アンバーシャダイなどを送るクリアアンバーと同じファミリー。配されてきた種牡馬はシアトルスルー、セクレタリアト、キートゥザミント。たしかな牝系の真価発揮でもある。西浦調教師は「これからスタートだ」とカワカミプリンセスの将来に強い自信をみせたが、4連勝で文句なしのGI制覇。いきなり世代のトップに躍り出た。

 2着フサイチパンドラは体が戻り、広い東京コースで(少し気難しいだけに)のびのび走れた。評価は難しかったが、これは納得の快走だろう。アサヒライジングは絶好のペースもあって、スタミナ十分の牝系らしい見事な粘り腰だった。アドマイヤキッス、キストゥヘヴンも、2400mとすればほぼ順当な結果で、2分26秒台で乗り切ったのだから立派なものだ。ニシノフジムスメはスタートで出負けの誤算はあったが、これもほぼ能力を出し切っての5着だろう。波乱のオークスではなかった。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング