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【桜花賞】衝撃の桜花賞 迫力のスケールでライバルをねじ伏せたリバティアイランド

  • 2023年04月10日(月) 18時00分

能力を信じ切った度胸満点のレース運び


重賞レース回顧

桜花賞を制したリバティアイランド(c)netkeiba.com


 リバティアイランド(父ドゥラメンテ)の衝撃の桜花賞だった。鋭い切れ味で上回ったというより、ゴール前の大きなストライドにはまだ余力さえ思わせ、迫力のスケールでライバルをねじ伏せる文字通りの完勝だった。

 上がり34秒5で巻き返すように伸びた2着コナコースト(父キタサンブラック)も、34秒1で伸びて、残り1ハロンでは勝ったかと思わせたペリファーニア(父モーリス)も決して鈍ったわけではない。それをただ1頭だけ、馬場の中央に出して差し切ったリバティアイランドの後半3ハロンは「32秒9」。見た目以上に飛び抜けていた。

 高速馬場の桜花賞では、2021年にソダシが1分31秒1の快レコードを樹立し、後方から追い込んだ2着サトノレイナスが上がり32秒9を記録している。

 ただ、2021年の芝コンディションは今回と同じ古馬2勝クラスの1600mが1分32秒2であり(今年は1分33秒7)、同じ3歳牝馬の「忘れな草賞2000m」が1分58秒0(今年は1分59秒2)だった。明らかに2021年ほどは超高速の芝ではない。リバティアイランドの迫力の勝ち時計1分32秒1(自身の中身59秒2-上がり32秒9)は、2021年ソダシの桜花賞レコードと互角か、あるいはそれ以上の中身がありそうにも映った。

 川田将雅騎手のリバティアイランドの能力を信じ切った度胸満点のレース運びもすごかったが、「彼女が選んだこと、本人が進んでいく気がなかった(川田騎手)」のコメントがきわめて印象的だった。かつて、同じようなニュアンスのコメントがあった。1984年、そこまで5戦5勝で単勝オッズ130円だったシンボリルドルフが、道中なかなかスパートしようとせず、鞍上の岡部幸雄騎手をヒヤッとさせた日本ダービー。岡部騎手は「僕がシンボリルドルフに教えられた。どういう展開になっても負けないと言う根性が他の馬とは違っていた」。そんな内容だった。鍛えに鍛えた牡馬シンボリルドルフと、牝馬リバティアイランドは別の時代の馬。でも、通じるところがあるのかもしれない。

 体型や血統背景から、リバティアイランドには東京2400mのオークスに不安はない。一部には、皐月賞の結果しだいだが、日本ダービー挑戦があるかもの声が出た。

 レース全体の流れは、前後半「45秒9-(1000m57秒6)-46秒2」=1分32秒1。高速の芝にしても息の入れにくい全体に厳しいペースだった。このペースを2番手で追走し、一度は好位から伸びたペリファーニアに交わされたようなシーンがありながら、盛り返して2着したコナコーストも、一旦は先頭に躍り出たここが3戦目のペリファーニアも、レース内容は(近年は強力な名牝が多いが)、平均レベルの桜花賞なら、ともに勝ったにも等しい内容だった。2頭の陣営も「勝てる…」と思った瞬間があったらしい。

 コナコーストとペリファーニアは、上がりの時計は異なるが、2戦連続してコナコーストが「クビ」差先着。2頭の接戦はこれからも続くと思える。

 緩みない流れで、快時計の決着。上位5着までを占めたのは上位6番人気以内に支持された馬だった。2番人気のライトクオンタム(父ディープインパクト)だけが着外に沈んだが、今回がまだ3戦目の小柄馬(428キロ)で、馬群にもまれたことなど初めて。好スタートから好位に下げたが、他馬を気にするなど最初からスムーズではなかった。あれで盛り返すように8着(0秒8差)なら少しも評価は下がらない。

 これで桜花賞は、6年連続して直前3月のレース(トライアル)には出走していない馬が勝ったことになった。うち半数の3頭は3歳初戦でもある。馬券に関係した計18頭の3歳になっての出走回数は、平均「0.94走」にまで減った。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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