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【NF天栄・木實谷場長】イクイノックス、ジオグリフ、スルーセブンシーズを徹底解剖! 栗東滞在&宝塚記念出走にある勝負論

  • 2023年06月18日(日) 18時02分
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▲NF天栄の場長として多くのGI馬をサポートしてきた木實谷雄太氏(C)netkeIba.com


西高東低と長らく言われてきた競馬界ですが、この春は平地GI11レースのうち日本ダービーをはじめ過半数の6レースを関東馬が勝利。強い関東馬の存在感が増しています。

その中でも大将格は世界ランク1位のイクイノックス。同馬はレースの合間、“東の最前線基地”とも言われるNF天栄のサポートを受けているのですが、完勝だった前走・ドバイシーマクラシックは「ある部分の成長」があってのレースぶりだった、とNF天栄の木實谷雄太場長は話します。

また、ジオグリフとスルーセブンシーズも宝塚記念に出走予定で、こちらは梅雨という時期が一つのポイントともなっているよう。

各馬の特徴、そして宝塚記念への展望をNF天栄・木實谷場長に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

世界ランク1位イクイノックス/前走の“逃げ”はパワーアップの証


──イクイノックスでのドバイシーマクラシック勝利、おめでとうございました。

木實谷 ありがとうございます。

──イクイノックスにとっては初めての海外遠征でしたが、レース前の心身の状態はどうでしたか?

木實谷 トレセンに入厩して以降は私も木村(哲也)先生から聞いたお話になるんですけれども、検疫厩舎に入るなど環境が変わるタイミングが何回かあり、その都度ちょっと戸惑った様子はあったようですが、レースまでに上手く調整していただきました。

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▲レース前日、メイダン競馬場で最終調整を行ったイクイノックス(撮影:高橋正和)


──レースでは初めて逃げる形になりました。陣営としては想定内でしたか?

木實谷 成長して下半身がかなり強化されてきたことがスタートしてからのダッシュ力にもつながっているな、と感じていました。

 昨年のダービーでは最後方に近いポジションからの競馬になったんですけど、だんだんといい位置が取れるようになり、牧場や厩舎での取り組みが成果として表れてきているのだと思います。ですので、逃げる形も当然起こり得るだろうなと思っていました。

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▲下半身強化によりスタートダッシュを決めたイクイノックス(左)(撮影:高橋正和)


 直線ではある程度、差は開いていましたけど、年度代表馬の初戦で、海外も初めてだったので、1着でゴールした時はホッとしました。

──レース後はルメール騎手とどういった会話を交わしましたか?

木實谷 「すごくいい状態で、何より馬がやる気満々だった」と言っていました。

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▲結果は2着に3馬身半差をつける完勝(撮影:高橋正和)


──帰国初戦は宝塚記念というのは元々予定されていましたか?

木實谷 海外も含めていろんな選択肢がある中で、国内となれば宝塚記念にするか、秋まで休養するかを検討していたのですが、幸い、馬の方は順調な回復具合を見せてくれて、木村先生もNF天栄に何度か見にいらっしゃって、最終的に宝塚記念への出走が決まったという経緯です。

──帰国後のNF天栄での状況は?


木實谷 初の海外輸送でしたし、帰国後はまず競馬学校で着地検疫を行ったのですが、そこでは運動も制限されるので、NF天栄に来た当初は全体的に馬体が寂しく映りました。

 しかし、以前であれば、回復に時間を要していたのですが、入場後すぐに騎乗運動を開始することができて、体質面での成長も感じることができています。

──宝塚記念に向けては今回、栗東に滞在して調教が行われています。美浦の坂路コースが工事のため閉鎖されている影響でしょうか。

木實谷 今回、宝塚記念出走を目指す上で、美浦の坂路コースが閉鎖され、普段と同じようなメニューで調整ができないということと、初の関西圏での競馬で、直前の長距離輸送という2つのリスクがあります。栗東で初めて調整すること自体もリスクなんですけど、それよりも前者の2つのリスクを避けるために栗東滞在することを選択しました。

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▲僚馬ジオグリフとともに栗東滞在(撮影:大恵陽子)


──美浦の馬が栗東で調整するにあたって具体的に懸念する点は?

木實谷 馬が慣れ親しんでいない場所で調整する、という単純な点だと思います。

──その点で言うと、ドバイも違う環境でしたが、海外より国内の方が調整しやすいですか?

木實谷 新しい環境という意味では変わらないと思います。人間もそうですけど、慣れるまでには時間がかかります。6月上旬に栗東に移動したのですが、早く慣れていつも通りの調整ができるようになってほしいなと思います。

──この夏、美浦の坂路が使えないことで他の馬も調整の難しさが出てくるかなと思いますが、現場とはどのような連携を取っていく予定ですか?

木實谷 坂路が閉まって約2週間経ちましたが、少しずつ影響が出ている印象を受けています。今後は調教師の先生方と、レースでのパフォーマンスを見たり、調整過程を共有していく中で、NF天栄で補える部分があれば取り組んでいきたいと思っています。

──ジオグリフも現在、栗東に滞在して帝王賞と両睨みでしたが、正式に宝塚記念参戦が発表されました。

木實谷 昨年、皐月賞を勝ったぐらいの馬ですし、初ダートとなったサウジカップでもいいレースをしてくれたので、芝・ダートどちらでもトップレベルで走れると感じています。その中で陣営と相談して宝塚記念を選んだのは、馬場適性と天候です。

 デビュー当初から触れられている通りノドに疾患を抱えていますので、梅雨で雨が降れば呼吸器系には楽な状況で走れます。また、この馬は東京のように上がり時計が速くなるコースはなかなか結果が伴いませんが、宝塚記念は例年、上がりが少しかかる傾向にありますから、舞台適性も見込んでいます。

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▲6月14日、栗東で1週前追い切りを行ったジオグリフ(撮影:大恵陽子)


──同世代の2頭がまた宝塚記念で顔を揃えますね。イクイノックスにはどんな走りを期待しますか?

木實谷 ファン投票で歴代最多数の得票をいただきましたし、実績からも注目をされると思います。そんな中、それにふさわしい走りをお見せすることはもちろんですが、私としましては、先日、日本ダービーで残念なアクシデントがありましたので、いい状態で当日を迎えた上で、無事に走り終えて牧場に戻ってきてほしいと願うだけです。

凱旋門賞にも登録のスルーセブンシーズ/重馬場適性も追い風に


──中山牝馬Sを勝ったスルーセブンシーズも宝塚記念に出走を予定しています。今年に入り、初富士S(3勝クラス)、中山牝馬Sと2連勝中です。

木實谷 昨夏のレース後、球節部分に不安が生じて、調整に時間がかかったんですけど、初富士Sを勝った後は脚元も問題がなく順調に乗り込めて、かなり状態が上がった中で中山牝馬Sに向けてトレセンへ送り出せました。レースもその感触通りの内容だったと思います。

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▲中山牝馬Sを勝利したスルーセブンシーズ(撮影:下野雄規)


──宝塚記念と牝馬というと、NF天栄でサポートしていたマリアライトが勝っています。似た部分はありますか?

木實谷 うーん、どうですかね……。ただ、スルーセブンシーズの兄姉は何頭も見させてもらっていて、この血統はお父さんの特徴を出す印象です。この馬に関しても父ドリームジャーニーらしく前進気勢が強く、重馬場適性もありますね。

──鞍上は池添謙一騎手の予定で、NF天栄とのコンビでは、有馬記念を勝ったブラストワンピース、安田記念を勝ったグランアレグリアや、ソングラインなど爆発力を感じます。

木實谷 私の立場から言うのはおこがましくて憚られるんですけど、池添騎手はNF天栄の馬以外でも大きなレースで結果を残している騎手ですし、うちの馬でもGIをたくさん勝たせてもらっているので、とても頼りにしています。

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▲昨年の安田記念を制したソングラインと池添謙一騎手(撮影:下野雄規)


──秋は凱旋門賞にも登録があります。どの辺りに可能性を感じていますか?

木實谷 一昨年にミモザ賞を勝った時がすごく強い内容で、当時から高い重馬場適性を感じていました。中山牝馬Sを勝った後、宝塚記念を使おうという話になったのですが、仮に勝てた場合には、その後の選択肢を増やすためにもということで登録を行いました。

 血統や、これまでの重馬場適性、そして馬体の大きさなどに可能性を感じています。ただ、凱旋門賞ありきで考えているわけではなくて、あくまでも選択肢の一つで、宝塚記念の後は未定の状況です。

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▲重馬場のミモザ賞を完勝した後のスルーセブンシーズ(撮影:下野雄規)


──イクイノックスにジオグリフに、と多くのサポート馬が出走する宝塚記念。スルーセブンシーズにはどんな走りを期待しますか?

木實谷 どの馬にも言えることですが、まずは無事に走り終えて、牧場に戻ってくることが一番です。そんな中、スルーセブンシーズは宝塚記念が梅雨時期に行われるということで、この馬に向く馬場状態を見込んでおり、それに加えて、父のドリームジャーニーが同レースを勝利したように、阪神芝2200mの内回りコースに高い適性を見込んでいます。

 本馬に関しては、過去に2回、阪神へ輸送しての競馬で結果が出ませんでしたので、イクイノックス、ジオグリフ同様、栗東に滞在して調整することを選択しました。幸い輸送後も順調に調整できており、今の状態であれば強いメンバー相手でも互角以上に走れるのではと感じていますので、今後の夢が更に膨らむような走りを期待しています。

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▲スルーセブンシーズも11日から栗東に滞在して最終調整(撮影:大恵陽子)


(文中敬称略)

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