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【石橋守調教師】“メイショウ”とともに紡がれる物語──運命的な馬・メイショウタバルと皐月賞へ挑む

  • 2024年04月07日(日) 18時01分
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▲皐月賞にメイショウタバルを送り出す石橋守調教師(撮影:大恵陽子)


毎日杯をメイショウタバルで勝ち、調教師として重賞初制覇を果たした石橋守調教師。レース後には幼馴染の武豊騎手と笑顔で抱き合うシーンもありました。

実は同馬の母メイショウツバクロは石橋調教師がジョッキー最後の勝利を挙げた思い出の1頭。厩舎期待の1頭だったロンの近親にもあたり「縁を感じます」というメイショウタバルと皐月賞に臨む心境を伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「ユタカも喜んでくれた」調教師での重賞初制覇


──毎日杯、おめでとうございます。

石橋 ありがとうございます。

──騎手時代に日本ダービーなどコンビでGI・3勝を挙げたメイショウサムソンと同じ“メイショウさん”での重賞制覇でした。

石橋 松本好雄オーナーの馬で調教師として重賞初制覇できたことは感慨深いです。

──レース後には武豊騎手と抱き合うシーンも見られました。

石橋 ユタカも喜んでくれました。重賞を初めて勝ったのを彼も知っていましたからね。騎手の時も重賞を勝ったのはそんなに早くなくて、同期の中でも遅い方でした。だから、調教師になって重賞を勝ちたい気持ちは当たり前にはありましたけど、焦っても仕方ないと思っていました。

──雨を含んだ馬場で、逃げて押し切り勝ち。どんな思いで見守っていましたか?

石橋 騎乗した坂井瑠星騎手は過去の映像を見てメイショウタバルのレースを研究しているのを知っていたので、指示は何も出していませんでした。でも、たぶん前に行くだろうなとは思っていました。重馬場にしては前半1000mのラップが1分を切って、有力馬も後ろにいたので4コーナーを回ってすぐはまだ分からなかったですけど、直線で内ラチにつけてスッと後ろを引き離した時に「大丈夫やな」と感じました。あと付けだけど、ゴールまで2ハロン(400m)のラップが10秒9。たしかにそこで引き離しましたね。

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▲雨を含んだ馬場で逃げて押し切った毎日杯(c)netkeiba


──当初は前週のスプリングSへ出走予定だったそうですね。

石橋 フレグモーネの一歩手前のような軽い症状が出て、腫れがあったので無理はしませんでした。ただ、歩様に異常はありませんでしたし、休ませた後は問題なく調教ができたので、毎日杯の出走に踏み切りました。半信半疑な面はありながらも、いい勝負はすると信じていましたし、無様な競馬はしないと思っていました。一頓挫ありましたけど、上手くいって勝つことができました。この馬の精神力には本当に頭が下がります。


──外から見ていると気づかないですが、外傷や熱発など大小含めると様々なことが日々、起きているのだろうと思います。若駒Sで競走除外もありましたが、次走でしっかり勝つなど、メイショウタバルはアクシデントがあってもすぐリカバリーしますね。

石橋 若駒Sは右前脚の挫跖でした。しっかりした精神力を持って勝つのは偉いなと思いますし、やはりスタッフが一生懸命やってくれるからでもあります。

──その競走除外後に勝ったつばき賞は、逃げていたところを3コーナー手前で捲られ、その後に外からも被せられる展開になりながらも勝利。とても強さを感じました。

石橋 たしかに、厳しい展開でした。3〜4コーナーで3頭の真ん中に入って、どんな馬でもムキになってしまうような形。メイショウタバルもちょっとムキになっていましたけど、よく凌いだなと思います。一番強いレースだったんじゃないですかね。

──今年に入り、石橋調教師も追い切りに騎乗されていますが、その背中はどう感じていますか?

石橋 1週前追い切りはだいたい私が乗っています。調教ではゴーサインを出した時の動きがいいですね。調教の動きはデビュー前から良くて、新馬戦も人気になっていました。

──3番人気でしたね。初勝利は3戦目。奇しくも石橋調教師がGI初制覇を果たしたメイショウサムソンも初勝利はデビュー3戦目でした。レースを経験することでの成長が大きいのでしょうか。

石橋 3戦目という点や、レースで先行する点は似ていますけど、タイプは全然違うと思います。今回、メイショウサムソンとメイショウタバルを比べられることが多くなるでしょうけど、馬は1頭1頭違うので、一緒にせずにそれぞれの個性を生かしたいなと思っています。

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▲石橋師が騎手時代にコンビで皐月賞を制したメイショウサムソンも、奇しくも初勝利は3戦目だった(撮影:下野雄規)


「血統を見て、すぐに分かった」運命的な馬


石橋 ところでね、この馬に関して一つ。

──何ですか?

石橋 メイショウタバルのお母さんのメイショウツバクロは、私がジョッキー最後の勝利を挙げた馬なんです。1月にダート1400mで勝って、今でもずっと覚えています。

──なんと! そんな縁があったんですね。

石橋 血統を見て、すぐに分かりました。うちの厩舎にいたロンのお母さん(アモーレヴォレ)とメイショウツバクロは姉妹でもあって、そういうのが繋がっているなと感じます。いずれも三嶋牧場さんの血統ですね。

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▲メイショウタバルの母メイショウツバクロは石橋師の騎手時代最後の勝利のパートナーだった(c)netkeiba


──デビューから2連勝で、将来を期待されたロンにも繋がっていくんですね。さて、いよいよ皐月賞です。デビュー当初は頭の高い走りや折り合いの課題が見られましたが、現状はどう感じていますか?

石橋 頭は今でも高いですけど、そういう走法なんでしょうね。結果を出していますし、あの位置でいいんじゃないかなと思います。折り合いは皐月賞に向けて一つの課題になっていますけど、浜中俊騎手はこれまで2回乗っています。しかも、差しと逃げと異なる競馬をして勝っているので、ゲートを出たなりで折り合うところで折り合わせるんじゃないかなと思っています。そこはジョッキーに任せます。

──石橋調教師の皐月賞に向けた心境は?

石橋 もちろん楽しみがあります。中2週ですが、アルアインもその間隔で皐月賞を勝ちました。前走は1週ズレたので、いい状態で送り出すことしか考えていません。そうしたら、結果はついてくるだろうと思います。

(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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