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【函館記念】「競走体系を締める順当決着」成長株ローシャムパークのビッグレースに向けた出発点

  • 2023年07月17日(月) 18時00分

期待された例年通りの波乱とはならず…


重賞レース回顧

函館記念を制したローシャムパーク(撮影:山中博喜)


 例年と同じような波乱が期待(注目)された夏のハンデ重賞は、珍しいことに順当に近い結果だった。1番人気の4歳馬が勝ったのは、1990年のラッキーゲラン以来のこと。3着も2番人気馬だった。

 もともと夏の北海道の「函館記念、札幌記念」は秋のビッグレースに向けての出発点であり、創設当時は頭数が少なかったが、4歳の成長株が勝つのがふつうだった。難解な波乱もいいが、こういう結果がないと競走体系は締まらない。

 勝った4歳ローシャムパーク(父ハービンジャー)は、3歳秋、ガイアフォースの勝ったセントライト記念で、アスクビクターモア(菊花賞馬)、1週前の七夕賞を勝ったセイウンハーデス、中山金杯を制したラーグルフなどと戦い、3着に食い込んだ期待馬。これで通算【5-2-1-1】。

 ファミリーは、ダイナカール、エアグルーヴ母娘を中心に現代を代表する巨大な名牝系。ファミリーに配されてきた種牡馬は「キングカメハメハ、サンデーサイレンス、トニービン、ノーザンテースト、ガーサント…」。限られた世代だけで、現在総合種牡馬ランキング2位のドゥラメンテ(無念の早世)とまったく同じだ。

 父ハービンジャーの産駒は、ランキング上位の種牡馬とちょっと異なり、安定した成長過程をたどるとは限らないが、秋のローシャムパークへの注目は大きい。

 3着に突っ込んだ4歳ブローザホーン(父エピファネイア)は、ちょっと悔いの残るゴール寸前になった。レース全体の流れは前後半「60秒0-61秒4」=2分01秒4。稍重発表の芝コンディションらしく、後半は追い比べのパワー勝負になってレース上がりは48秒9-36秒6。

 前半はムリせずに進み、最後方近くから追い込む形はピタリはまっていたと思えるが、小回りコースでイン強襲の戦法は、終始スムーズに進路が取れるとはかぎらない。岩田康誠騎手はかなり悔しがったが、他馬だって懸命に進路をさがしている。これは仕方がない。ただ、これで3歳後半から【3-1-1-1】。一戦ごとに馬体を大きく見せるようにパワーアップしている。小柄でも渋馬場の方が、追っての良さが生きる。

 2着に健闘したのは6歳牝馬ルビーカサブランカ(父キングカメハメハ)。うまく内にもぐりこんで進み、まったくロスのないレースを展開した。中1週のきびしいローテーションになるのを承知で、ここに狙いを定めたので仕上げは万全。ほぼ同じような位置にいたローシャムパークは、4コーナー手前から外へ。こちらは内を狙って一気のスパート。それで2馬身の差がついたのだから、勝ち馬の充実を讃えるしかない。

 負けはしたが素晴らしかったのはベテラン7歳のマイネルウィルトス(父スクリーンヒーロー)。これで函館記念3年連続の出走で「0秒6差8着、0秒2差2着、0秒4差4着」。昨年の2着も豪快なレースだったが、今年は1年ぶりの出走で、あと一歩で2着に届きそうな勢い。2着馬とは「アタマ、アタマ」差だった。

 かつて、5歳だった2005年から、7歳の2007年まで函館記念を3連勝したエリモハリアー(父ジェネラス)は、8歳時にも夏に復活して挑戦。10歳時には5回目の出走となった函館記念を最後に引退し、のちに函館競馬場で誘導馬を務めた。

 5着だった同じ7歳ハヤヤッコ(父キングカメハメハ)は、58.5キロで0秒4差の5着だから立派な善戦。上昇一途の4歳馬に負けたのだから納得だろう。

 8着ドーブネ、9着アラタの敗因は明確ではないが、近年の函館記念のパターン通り、慣れない中1週の日程に対応できなかったことは否定できない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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