ブリッシュラックは、86年のJC(GI)を3番人気で11着、翌87年のJCを1番人気4着にとどまったトリプティクの一族。ブリッシュラックの4代母マルガレーゼンが、名牝トリプティクの祖母になる。トリプティク(ビアンコーヌ厩舎)のその頃の主戦騎手で、香港からフランスにスカウトされたA.クルーズだった。A.クルーズ調教師の手がけるブリッシュラックは「昨年も勝てると思っていた」というだけに、さすがに20年も前のトリプティクでの雪辱を果たしたとは言わなかったが、クルーズ調教師にとっては、20年越しの東京コースでのGI制覇達成ということになる。
昨年、1分33秒7で香港のチャンピオンズマイルを制し、安田記念は1分32秒5。今年もチャンピオンズマイルを1分33秒7で制し、安田記念は1分32秒6。チャンピオンズマイルでジョイフルウィナーとの差は2馬身半で、安田記念でもジョイフルウィナーとの差は2馬身半。すでに43戦も、衰えなし。香港のセン馬勢(繁殖、生産がないのでほとんどがセン馬になっている)は、まるでサイボーグかマシーンのようだと言われる。もちろん、サイレントウィットネスも。みんな筋肉モリモリの540kgや、550kg台の馬。調教や、育て上げていく手法の違いは知られるところだが、どうして? という不思議はこの際ともかくとして、タフで強かった。今年は内枠を引いたブリッシュラックは、大外に振られた昨年と異なり、直線、他馬をはじき飛ばすように一気に抜け出してきた。実力勝ちだった。
アサクサデンエンはドバイ遠征で一時はすっかり体調を崩していたが、直前の追い切りで急速に良化。前走が6.8秒差の大敗だけに人気薄は仕方がないが、こちらも昨年の安田記念馬らしい底力をフルに発揮した。
流れは昨年よりスローでも、全体に少し時計のかかるタフな芝で底力の勝負になった今年の安田記念、不利があって沈んだ馬はもちろんいるが、上位を占めた馬はランキング通り。実力通りだったといえる。
中で光ったのは、距離経験がほとんどなかったにもかかわらず、好位で粘り通し、ゴール前もう1回伸びていた14番人気で7着のシンボリグランだった。ハットトリックとカンパニーは接触や、つまずいたりの不利が大きかったが、他の凡走組は、ブリッシュラックのたくましさや迫力が目立ちすぎたこともあって、レース運びも含め、ちょっと上品すぎたかもしれない。