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【新谷功一調教師】クラウンプライド&リメイクと韓国国際競走へ! 調教助手時代に培われた“海外への意識”とは

  • 2023年09月03日(日) 18時02分
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▲クラウンプライド&リメイクと韓国遠征を行う新谷功一調教師(撮影:高橋正和)


重賞初制覇がドバイだった新谷功一厩舎。この秋は韓国にクラウンプライドとリメイクを送り込みます。

UAEダービー馬クラウンプライドは1800mという距離に魅力を感じてコリアカップに、昨年、GIIIカペラSを勝ったリメイクは「前走で勝った盛岡と似たコース」というコリアスプリントに出走します。厩舎開業の頃から海外遠征を意識していた厩舎が送り込む2頭について伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

開業当初から準備していた「海外」の名札


──まずはクラウンプライドについて伺いたいのですが、前走・帝王賞はハナ差2着で、JpnI制覇まであと一歩でした。

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▲内クラウンプライド、中テーオーケインズ、外メイショウハリオの大接戦(撮影:高橋正和)


新谷 ドバイワールドカップからの帰国初戦で、地力を見せてくれました。まだ若干の疲れが残っているかな? という雰囲気で帰厩して、ちょうど状態が上がり始めた頃がレースでした。ロスない競馬をして、リズムも悪くありませんでした。強いて言うならば1コーナーでちょっとハミを噛んだのが最後のひと伸びに欠けたんじゃないか、とジョッキーは言っていましたけど、それにしてもよく頑張ったと思います。ただ、あのレースを見て、2000mはちょっと長いのかな、と感じました。

──帰国初戦ならではの調整の難しさがあったのでしょうか?

新谷 いろんな要因がありますが、人間でも腰が痛いとバランスが崩れたり、肩が凝ると首にもきますよね。競走馬も俗に言う「見えない疲れ」というのがあって、外から見ると「馬体がいい感じで帰ってきたな」と思っても、乗ってみたら感じるモノがあります。気持ちのあり様、体の使い方、馬体のバランス。跨ってみて分かるので、僕は乗らないと心配な調教師なんです。クラウンプライドもデビューした頃は僕が乗っていました。

──その頃の印象は?

新谷 実は最初の頃は幼さが勝っていましたし、まだそこまでいい馬とは感じませんでした。しかもデビュー戦では引っ掛かって、「どうしよう……」と思ったら、勝ってくれました。そのデビュー戦で、普通は前の馬が蹴り上げた砂に委縮する馬が多いんですけど、クラウンプライドはキックバックに向かっていっていたので、気持ちがすごく強い馬だなと思いました。まだコントロールに癖がある中で2戦目に右回りを使うとそこも勝ってくれて、「これは強い馬だな」と感じました。

──そうして翌春にはドバイのUAEダービーへ遠征して勝ったわけですね。

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▲22年のUAEダービーで重賞初制覇となったクラウンプライド(C)netkeiba.com


新谷 2戦目を勝ったイメージから「UAEダービーがあるな」と考えていました。厩舎開業プランとして3年目くらいには海外遠征をしたいというのがあって、開業当初から放牧先や出走場所を記すホワイトボードに「海外」の名札を作っていました。

──調教助手時代には日本調教馬初のヨーロッパG1制覇を果たした森秀行厩舎にも在籍していました。海外への意識はその影響もあるのでしょうか。


新谷 それはありますね。日本馬が通用するのが難しい場所や国もあるとは感じていますが、ドバイやサウジはダートでフラットに近いコース。過去の日本馬の走りを見ても結果を出しやすい流れで、勝負しやすい土俵だと思い選びました。

──UAEダービーは厩舎にとって重賞初制覇でもありましたね。

新谷 嬉しかったです。普段は冷静にレースを見ていますけど、あの時だけは声が出ました。重賞制覇は海外でも地方でも、どこでもいいなと思っていたら、結果的に海外→地方→中央の順で「いつJRAで勝つねん」と思っていたので、リメイクでカペラSを勝った時はちょっとホッとしました。

──そのリメイクは前走が盛岡でクラスターカップを勝利。4コーナーは内からワープしてきたかと思いました。

新谷 リュウノユキナとかぶっていて、僕も見逃していました。コーナーワークのコントロール性があるのでこうして内から行けますし、コーナーでトップスピードに上げられるのもこの馬の強みです。

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▲4コーナーからワープするような走りでクラスターカップを勝利したリメイク(提供:岩手県競馬組合)


──デビューした頃は好位抜け出しが多かったですが、今は鋭い末脚が武器に脚質転換しました。

新谷 デビューした頃は能力によるスピードの違いもありますし、以前はまだハミに頼り気味に走っていたので、変に引っ張ると良くなくて気分良く走らせていました。「どのポジションでも競馬ができる」と福永祐一騎手(当時)は言っていて、カペラSの時はああいうレースをしてみたい、と福永騎手の頭の中にあったみたいです。リメイクの強いところを引き出した競馬になりました。

──リメイクと福永騎手といえば、ジョッキー最後のレースをサウジアラビアで迎えましたね。

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▲福永元騎手の引退レースはリメイクと挑んだリヤドダートスプリント(C)netkeiba.com


新谷 競馬が終わるまでは一人のジョッキーとして見ていたので、レースから上がってきた時も調教師とジョッキーとしての会話のみでした。調教師として厩舎を開業したら、「おめでとう」と言いたいです。

──さて、リメイクの次走はコリアスプリント。コース適性などはどう感じていますか?

新谷 先日、現地で下見をしてきたんですけど、1200mのスタート地点が向正面にあって、前走のクラスターCと同じ盛岡競馬場に近い形状かなと思います。スタートしてからコーナーまでも少し距離ありますし、コーナーも外回りで緩いです。いま懸念しているのは、韓国馬とのスピードの違いがどのくらいあるかということです。リメイクは後ろから行く馬ですけど、バスラットレオンが前に行って日本馬2頭のマッチレースになるなら、そうなってもいいと思います。

──周りの馬のペースによってはリメイクも前目に位置取る可能性もあるかもしれませんね。クラウンプライドはいかがですか?

新谷 ここを選んだ要素として、まずは1800mということ。加えて左回りで、海外は慣れているので、条件的にはいいかなと思いました。天気のいい馬場でレースができれば、安心して見られます。ただ、雨が降ったら路盤までが浅くて馬場が硬くなると聞くので、そこが不安でしょうか。それと、クラウンプライドもスピードの違いで前に行った場合にどうしようかな、とは考えています。

──韓国で相手関係が読みづらいがゆえの懸念点ですね。改めて、韓国遠征への意気込みをお願いします。

新谷 2頭で勝って、韓国完全制覇! 出走するからにはそのくらいの意気込みでいきたいですね。オーナーをお二人とも表彰台に上げたいと思っています。

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▲昨年のUAEダービーに続く海外重賞制覇を!(C)netkeiba.com


(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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