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日々前進。馬に跨る飾りではなく、馬と一体になりたい!

  • 2023年10月01日(日) 12時00分
今月のコラムでは、テイクフィジカルコンディショニングジムでのトレーニングの様子をご紹介します。海外遠征から帰国後も気持ちを切らさず、夢へ向けて日々努力です。

 猛暑日から少し秋の気配を感じ始めましたね。GI競走の始まりを告げるトライアルレース、神戸新聞杯(GII・菊花賞トライアル)とオールカマー(GII)が開催されました。どっちのレースも迫力満点、見ごたえがありましたね。

 神戸新聞杯はサトノグランツが、祖父ディープインパクト、父サトノダイヤモンドという偉大なる血統で、史上初となる父子3代制覇を成し遂げました。馬郡の中でジックリ足を溜めて、一瞬ですべりこんだサトノグランツ号の瞬発力と川田騎手の手腕は、すばらしいです。友道厩舎の陣営力もすばらしいとおもいます。陣営の皆様おめでとうございます。まだまだ進化するそうなので、菊花賞が楽しみですね。上位3頭に優先出走権利が与えられ、この2頭も力のある馬たちなので、どんな戦いが展開されるのか待ち遠しいです。

日々是好日

▲神戸新聞杯を制したサトノグランツ(C)netkeiba.com


 夏の成長は、春よりも進化しているということ。早くも秋競馬にワクワク感モリモリですね。楽しみましょう。

 僕も進化していきたい。いつまでもリハビリではなく、心も体も自分自身をしっかり鍛えることに集中です。

 今、テイクフィジカルコンディショニングジムに通っていますが、フィジカルコンディショニングとは、一般の筋肉トレーニングをするのではなく、身体の調整を整えながら運動機能において最高の能力を発揮できるように精神面・肉体・健康面などを整えながら総合的にアプローチしてくれるものです。

 僕の場合は、左麻痺があり左側に体全体が傾く。左足の腱が硬いから歩行が、尖足歩きになる。など体のケアの課題が山積みだから大変だと思います。

 一番最初に行ったときは、碁盤の目になっているジムの壁の前で竿のような長い棒を持って立つと、自分の目ではっきり体が左に傾いているのがわかった。けど、どうしていいかわからない。

日々是好日

▲棒と体が垂直になるようにする訓練


 トレーナが早速、僕のトレーニングカリキュラムを作ってくれて、トレーニングが始まる。

 母にも「左に寄っている、Tシャツの首周りを見てごらん」と注意される。確かに左側へ片寄っていることが多いと納得し調整するが、すぐに戻ってしまう。

 僕の担当のトレーナは、理学療法士の資格を持っているので、トレーニングの前に体全体の調整をし、柔軟性を促すストレッチをしてくれます。この時がとっても気持ちよく体がリラックスするので眠くなってしまいます。

 身体を中心に保つ体幹も鍛えています。歩く・走る・馬に乗るにも体幹がしっかり保てなかったのでふらふらしていました。

 身体を中心に保つための体幹トレーニングのカリキュラムの一部を紹介します。

・四つん這いになり、背中に円柱を載せて落とさないようにしながら猫の伸びをする。
・片膝を立てて座り、円柱を脇に置く(体が垂直になっているのがわかる)。
・電動マシンにのって揺れるので落とされないように体を保つ。腱を伸ばす。
・寝転び足先とひざにボールを挟み腹筋運動をする。

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▲ジムでのトレーニングの様子


 どんな動きをするにも体幹を保つことを意識することが大事と言われています。常に考えることも大事にして、この動きでいいか確認しながらできるようになってきました。何年も通っているのになかなかできなくて、でもどうしてできないのか? やっぱり障害が邪魔をしているんだなと。僕は高次脳機能障害を持っているから「しゃあないなあ」と諦めてしまっていたように思う。

 オカンにもいつも言われている。「体が左に傾いているよ。体が左側に逃げているよ。だから心も逃げているように見えるわ」。

 絶対、馬に乗りたい。心は、気持ちは逃げたくない。パラリンピックへどうしても行きたい。パラリンピックへ出場し、障害があってもできることをみんなに伝えたい。諦めないで一緒に「やろう、挑戦しよう」と声をかけたい。

 今年の夏にドイツへ行ったときも、オランダ大会もデンマーク大会も体幹を保ち騎座をしっかりとって騎乗することができ、「やっとできるようになってきたな」と褒めてもらいました。

 自分でも騎座ハマりがよく、心地よく乗馬することができた。「これだ、この感触をおぼえる」。脳ではなく体で、五感で覚える。しっかり身体に刻み込んで、馬の背に座ったときには、垂直に騎座を保つように意識することができるようになってきた。

 3年前にドイツへ行ったとき、ナショナルトレーニングチームに体幹トレーニングを教えてもらったことを思い出す。

「あっ、そうだったな」、樹の幹にチューブを輪にして掛け、後ろへ引っ張る。左側に傾くと転んでしまう。が、重心を骨盤あたりに置くことで体全体に力が入るようになり、気持ちよかった。野外だったので音楽もかけてくれて、開放的な気分でストレッチをすることができた。

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▲ナショナルチームに体幹トレーニングを教えてもらいました


 リズムに合わせてするのも大事なんだな、体が勝手に動き出す感じがした。馬に乗るときもリズムがあるといわれている。

 駆歩が3拍子、常歩は2拍子、とリズムよく軽快に脚を動かすことが、乗馬では大事だとわかっているのに忘れていた。僕自身が、リズムよく動くことで馬にも伝わる。大事なストレッチをいつもしていただいているのに、いざ勝負の時は使えていなかった。

 ドイツから帰国し、2か月ぶりに明石乗馬協会へ行き、レッスンの時にずっと骨盤を立てるように意識して乗ると薫先生に「かっちゃん上手くなったね。そうなのよ。やっとその姿勢ができるようになったんだね」と褒めてもらえた。薫先生に褒めてもらうと嬉しい。馬は乗れても、馬には座れない俺がいたので「頑張ろう」と思った。馬に跨る飾りものではなく、違和感を感じないように馬と一体になりたいと思う。

 乗馬は馬の演技だというから、きれいな表現ができるようにまだまだフィジカルコンディショニングを続けて心も体も鍛えたい。トレーナー、よろしくお願いします。時々遅れて迷惑かけてしまうので約束時間に遅れないように頑張ります(苦笑)。

 11月は御殿場で全日本パラ馬術大会。12月はオランダ大会へ。馬も僕も音楽が大好きなので勝負曲を決めて挑む。

オカン 答えは一つ。体を垂直に保つこと、歩くときも走るときも、大好きな食事の時も姿勢を崩さない。毎日の何気ない仕草が大切だと気づいてほしいですね。最近よくなってきたかなと感じることがあります。それは、靴の傷み方の変化。いままでは左脚を引きずって尖足歩きをしていたので、靴のつま先が「パカッ」と大口を開けていましたが、最近は大口を開けなくなりましたね。靴が長持ちしています。オカンの財布の口も「パカッ」と開かないように靴を大事にはいてください。非常に助かるわ。

 脚も少し上げるようになってきたから、あともうちょっと体幹を意識して、歩こう〜歩こう〜私は元気、歩くの大好き(^^♪ から始めてください。だんだん寒くなるから体幹と一緒に自分で体を温める動きも取り入れてください。ファイト!

つねかつこと常石勝義&オカン

(次回の更新は11/1(水)を予定しています)

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1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っている。

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