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【辻野泰之調教師】ローズSは師も驚きのレコード勝ち!? マスクトディーヴァと“最後の一冠”で女王に挑む

  • 2023年10月09日(月) 18時02分
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▲秋華賞に出走予定のマスクトディーヴァを管理する辻野泰之調教師(撮影:大恵陽子)


リバティアイランド一強ムードが漂う秋華賞。そこに新星として現れたのがマスクトディーヴァです。春はテレビ越しにリバティアイランドの活躍を見ていたところから、前哨戦・ローズSをレコード勝ちし、GIの舞台まで一気に駆け上がってきました。

しかしながら、重賞制覇の走りは「いまのこの状態で!?」といい意味で驚きの連続だったそう。いつも陣営の予想以上の走りを見せてくれるマスクトディーヴァと挑む最後の一冠・秋華賞に向けて、管理する辻野泰之調教師に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「今の体でこんなに!」デビュー戦から予想を裏切るいい走り


──5月の遅生まれで、デビューは3歳1月だったマスクトディーヴァ。遅生まれの分、成長待ちだったのでしょうか。

辻野 初めて牧場で見せていただいた時も、遅生まれで華奢というのもありましたし、成長はゆっくりなんだろうなという印象を持ちました。牧場からも「ゆっくりだと思います」というお話だったので、慌てずに成長を見ながら、この子の成長に合わせてのデビュー戦でした。何とか調教にも耐えられるようになってきて、これなら何とか形にはなるかな、という印象でのデビュー戦でした。

──中京での新馬戦は土の塊が飛ぶようなタフそうな馬場でしたが、ラストにしっかり伸びてデビュー勝ちを収めました。

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▲土の塊が飛ぶようなタフな馬場でデビュー勝ち(C)netkeiba.com


辻野 調教から緩い馬場はあまり得意じゃないだろうな、という印象を持っていて、吉田隼人騎手にもそれを伝えました。返し馬ではインの悪い場所を通らせてみたところ、ノメるような格好を見せたので、最後は馬場のいいところに出すイメージで乗ってくれたようです。正直、新馬戦から結果を出せる馬というイメージはなかったので、「今の完成度でこんなに走れるんだ」と驚きの方が大きかったです。

──次走は桜花賞当日の忘れな草賞でした。桜花賞を目指す道は選択肢になかったのか、あるいは距離は長い方が良かったのか…。

辻野 距離はやっぱりある程度あった方がいい馬だと感じていましたし、デビュー戦を勝ったとはいえ、まだまだ成長途上なことには間違いなかったので、牧場の方とも相談して「忘れな草賞でいい競馬ができれば、オークスへ」ということになりました。

──ところが、4コーナーで大きく外に膨れてしまい7着でした。

辻野 外枠ということもありましたけど、1〜2コーナーでも外に逃げるような仕草を見せていました。3〜4コーナーでは内から抜かれたのにちょっとビックリして、なお外に逃げる格好を見せました。経験の浅さと、コーナーをしっかり曲がれるだけの体幹がまだできていなかったのだと思います。

──その後は1勝クラス、ローズSと、忘れな草賞と同じ右回りで連勝しました。コーナーにも上手く対応できるようになってきたのでしょうか。

辻野 1勝クラスを勝った時に岩田望来騎手は「ちょっと外に張っていきそうな感じはあります」と話していたんですけど、それでも阪神の外回りはコーナーがゆったりしているので、コース形態にも助けられた面があったと思います。ローズSの方がスムーズに回れていて、体幹そのものがしっかりしてきてのものだと思います。

「本当に驚きの方が大きかった」華奢な体でレコード勝ち


──まだキャリア4戦の3歳馬にはなりますが、現時点での成長度やのびしろは?


辻野 先週末に2日ほど乗ってみたんですけど、新馬の時よりはしっかりしたな、という印象です。それでもまだ華奢な女の子で、頼りなさが残る中で走っているんだろうな、と感じます。言われなければ、重賞を勝った馬って分からないくらいなので、本物になってくるのは来年かな、という印象は変わらないです。

──まだまだ芯がしっかりしていない中で、ローズSのあの強さですか。直線早め先頭から楽々と押し切ってレコード勝ちだなんて、背中を知っている辻野調教師からするとどんな気持ちになりましたか?

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▲ローズSでは1番人気ブレイディヴェーグ(右)を完封し、レコード勝ち(C)netkeiba.com


辻野 「何でこんなに走ったんだろう?」と思うぐらい(笑)。本当に驚きの方が大きかったです。これまでは追い切りでスピードを出すと、前につんのめってバランスが崩れがちだったんですけど、トモで踏ん張る力がついてきて、ローズSの最終追い切りでは崩れることなく走れるようになっていたと感じます。ただ、まだ頼りなさが残る体でレコード勝ちだったので、レース後の状態が心配になるぐらいでしたが、体にはそれほど疲れやダメージが残っている感じはなく、とりあえずはひと安心しました。

──ローズSで手綱をとった岩田望来騎手は、重賞初制覇が辻野厩舎のロータスランドでした。縁がありますね。

辻野 厩舎のいろんな馬に乗ってもらって結果も出してもらっていますし、相性もあるのかもしれないですけど、望来くん自身もうちの厩舎の馬の作り方を理解して競馬に乗ってくれている部分も大きいんじゃないのかな、と思います。まだ若いですけど、安心して任せられるジョッキーですよね。

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▲「厩舎の馬の作り方を理解して乗ってくれる」岩田望来騎手(C)netkeiba.com


──さて、秋華賞ではリバティアイランドが牝馬三冠なるか、はたまた一矢報いる馬が誕生するのかに注目が集まります。似た構図で言うと、女王・アーモンドアイに挑んだカンタービレ。辻野調教師が助手時代に携わった馬ですね。

辻野 アーモンドアイもリバティアイランドも3歳の時点で名牝と言われるだけの馬だと思います。リバティアイランドは春は雲の上の存在と思っていて、テレビでレースを見ていたぐらいです。秋にこうして一緒の舞台で戦えるとは想像もしていなくて、それだけでも光栄なことだな、と思います。

──現在の状態を教えてください。

辻野 中3週というやや詰まった間隔が心配だったんですけど、もうひと負荷をかけてもいいのかな、というくらいには体にも気持ちにも余裕が出てきています。

──それだけ体も強くなったんですね。華奢で緩さを残しながらも負荷をかけられるのはすごいことです。

辻野 春はカイバを食べたり食べなかったりだったんですけど、今回の帰厩後からは安定して食べてくれています。これまではルーラーシップ産駒の牝馬らしくピリッとするところがあったんですけど、いまは坂路を上る前まではスイッチをオフにしてリラックスできています。ローズSの前も落ち着いていて、オンとオフが切り替えられるようになったのかなと思います。

──秋華賞への意気込みをお願いします。

辻野 今回はコーナーが4つで、少しキツいカーブでもあるので、そこは課題の一つかなとは思いますが、忘れな草賞のようなことはもうないんじゃないかなと思います。もちろん秋華賞もですけど、来年にも繋がるようなレースを見せてくれたら嬉しいです。

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▲「来年にも繋がるようなレースを」(C)netkeiba.com


(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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