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【四位洋文調教師】ハギノアレグリアスと厩舎初のGI制覇へ! 騎手時代とは違う感情に「案外、小心者なんだなと…」

  • 2023年11月27日(月) 18時02分
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▲チャンピオンズCに出走予定のハギノアレグリアスを管理する四位洋文調教師(撮影:稲葉訓也)


ハギノアレグリアスは3歳時に発症した屈腱炎から見事に復活し重賞を2勝。四位厩舎に初のタイトルをもたらしました。復活にはオーナーやチャンピオンヒルズ、獣医さんなど多くの人の協力に加えて、「馬の温泉」の効能も…?

四位調教師は厩舎開業4年目を迎えますが、自身の管理馬が出走するレースでは「競馬を見たくなくなる」と、騎手時代とは違う意外な感情にも直面しているそう。厩舎として初めてのGI制覇に向けた意気込みをお聞きしました。

(取材・構成:不破由妃子)

「レース前はワクワクするのに、いざレースが始まると見たくなくなる」


──前走のシリウスSは、大外枠からトップハンデ58.5キロを背負っての勝利。ハギノアレグリアスにとっても四位さんにとっても、うれしい中央重賞初制覇となりました。

四位 トップハンデだったけど、具合もよかったし、力のある馬ですからね。ジョッキー(岩田望来騎手)には「小細工は必要ないから、自信を持って乗ってきて」と伝えましたが、期待通りの強い競馬をしてくれました。まぁ本当なら去年、(福永)祐一で勝ってる予定だったんだけどね(笑)。

──ああ、福永さんが「3角からの進路の判断を間違えました。申し訳ない」とコメントされていた、みやこS(2着)ですね。

四位 そうそう。「外に行ってたら勝ってましたわ」って。

──しかも、次の東海S(2着)は直線でカラ馬に絡まれて…。

四位 そんなこともありましたね。

──そういった経緯もあり、シリウスSの直線は声が出たのでは?

四位 いや、全然。割と冷静に見ていましたけどね。でもね、なんかいつも競馬を見たくなくなる。心臓に悪い(苦笑)。

──四位さんの言葉とは思えませんが。

四位 やっぱり乗り役をやっているときのほうが楽だったなぁ。なんでなのかわからないけど、レース前はワクワクするのに、いざレースが始まると見たくなくなる。勝ち負け云々というより、大丈夫かなぁとかいろいろな思いがバーッと湧いてきて。案外、小心者なんだなと思った(笑)。こんな感情になるとは思わなかったけど、なんか自分でもおもしろいよ。

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▲シリウスSで中央重賞初制覇(C)netkeiba.com


不治の病と言われた屈腱炎からの復活


──子供の運動会を見にきたお父さんみたい(笑)。さて、ハギノアレグリアスは2021年に解散した松田国英厩舎からの転厩馬で、屈腱炎により1年8カ月という長い休養期間がありました。そこから見事に復活を遂げた要因はなんだと思いますか?


四位 福島のいわき市に「馬の温泉」があるでしょ? 幹細胞移植の手術をしたあと、そのリハビリセンター(JRA競走馬リハビリセンター)でしっかりリハビリをしてもらったおかげですよね。移植手術については、カネヒキリの成功例もあるしね。

──屈腱炎といえば、ひと昔前は不治の病と言われていましたが、それも変わりつつあると。

四位 確かに成功例はあるけど、移植をしても再発してしまう馬もいるし、必ずしも成功率が高いわけではないんですけどね。あと、ハギノアレグリアスの場合、オーナーさんの深いご理解があることがとても大きいです。今でもずっとそうなんですけど、屈腱炎から復帰するときも「無事が一番なので、慌てないでじっくりやってください。馬ファーストでやってください」と言ってくださる方で。だから、こちらとしてもいいタイミングで戻せたし、調教にもじっくり取り組んだうえで復帰戦を迎えられましたから。

──それは大きいですね。

四位 新米調教師に対して、そんなふうに言ってくださった馬主さんの懐の大きさには感謝しかありません。なにより馬にとって最高にハッピーなことだし、慌てることなく馬の状況を最優先に仕事をさせてもらえるというのは、僕にとっても幸せなこと。そんな馬主さんの気持ちに応えて、みんなも一生懸命にやってくれています。近隣のチャンピオンヒルズ(調教施設)もそうだし、普段から見てくれている獣医さんもそうだし、うちのスタッフもそう。みんなのおかげですよ。

四位厩舎にとって5回目のGI挑戦「今回はたぶん見られると思う」


──転厩5戦目となった名古屋大賞典は、圧倒的1番人気に応えての勝利。四位厩舎に初の重賞タイトルをもたらしました。最後はケイアイパープルとの首の上げ下げといった際どい勝負となりましたが、さすがに力が入ったのでは?

四位 ケイアイパープルがずっといい手応えで回ってきていたから、これは差されるかな…と。だから、ずっと「将雅! 将雅! 頼む!」と思いながら見ていましたね。

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▲「将雅! 将雅! 頼む!」と(撮影:稲葉訓也)


──表彰式での四位さんの笑顔がとても印象に残っています。

四位 将雅はあれで名古屋大賞典4連覇。表彰式でもそのことに注目が集まっていたんだけど、「いや、実は俺も3連覇(1999年〜2001年)しているんだけどなぁ」と思いながら(笑)。そんなことを考えながらの表彰式でしたね。なによりオーナーさんが本当に喜んでくださって。オーナーさんのうれしそうな顔を見られたことが、僕としても本当にうれしかった。

──さて、そんなオーナーさんと一緒にGIを勝てたら最高なわけですが。中間の調整は順調ですか?

四位 前走のあとは一度チャンピオンヒルズに出して、予定通り帰厩して、いつものパターンで調教もできています。屈腱炎を経験しているからといって、あまり守りに入ってもいけないので、攻めるときは攻めて、ケアするときはしっかりケアするという、メリハリの利いたいい調整ができていますよ。

──チャンピオンズCは、四位厩舎にとって5回目のGIチャレンジとなりますが、どんな手応えを感じていますか?

四位 こうやってワクワクしながらGIに臨めるというのは幸せなことですよね。結果はひとまず置いといて、まずはそこにゲートインできる喜びとか、プロセスを経て勝負しにいけるというのもやり甲斐を感じる瞬間ですから、そういうひとつひとつを噛みしめながら、パドックに送り出したい。結果についてはね、そこはもう競馬だから。今度は強い馬がいっぱいいて甘くはないだろうけど、なんとか歯を食いしばって頑張ってほしいなと思ってます。

──「いざレースが始まると見たくなくなる」とおっしゃっていましたが、最後までしっかり見届けてくださいね。

四位 今回はたぶん見られると思う。メンバーが強いから、純粋に「頑張れ!」っていう気持ちでね。まぁそのときになったら、また「見たくない」と思っちゃうかもしれないけど(笑)。

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▲「今回は純粋に『頑張れ!』っていう気持ちで」(撮影:稲葉訓也)


(文中敬称略)

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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