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【阪神JF】上位ランクの馬が多い世代 来季のクラシックにも期待が高まる

  • 2023年12月11日(月) 18時00分

素晴らしいレースレコードでの勝利


重賞レース回顧

阪神JFを制したアスコリピチェーノ(c)netkeiba.com


 レースレコードの1分32秒6で競り勝ったのはアスコリピチェーノ(父ダイワメジャー)だった。馬場コンディションの差はあるが、翌年の桜花賞を2着した2019年レシステンシアの1分32秒7を更新。ともに1分33秒1で勝った2022年リバティアイランド、2020年ソダシ、2006年ウオッカの記録を上回ったから素晴らしい。

 レース全体の流れは前後半「46秒4-(1000m58秒2)-46秒2」=1分32秒6。

 速い時計が記録される理想のペースで、前後半のバランスを失っていないので快レコード。最後の1ハロンも少しも鈍ることなく11秒7だから価値がある。

 従来のレースレコードを保持していたレシステンシアもダイワメジャー産駒であり、2015年の阪神JFを制したメジャーエンブレム(父ダイワメジャー)は、3歳になりクイーンCを勝ち、桜花賞こそ4着にとどまったが、牡馬相手のNHKマイルCを1番人気で勝っている。レシステンシア、メジャーエンブレムとは、父が同じ(無類にタフな名種牡馬ダイワメジャー)というだけでなく、牝系ファミリーの血統背景にかなり似たところがあるのもアスコリピチェーノには大きな強みだ。

 また、近年の新潟2歳Sを勝った牝馬の代表格には、2014年の桜花賞を制したハープスター(父ディープインパクト)がいる。切れ味ではハープスターが一枚上ともいえるが、ともにここまで3戦となる「新馬1400m→新潟2歳S→阪神JF1600m」の走破時計は、アスコリピチェーノが大きく上回っている。

 クビ差2着に追い詰めた同タイム1分32秒6のステレンボッシュ(父エピファネイア)も、来季のクラシック展望は大きく広がった。父母両系ともに近年の注目馬ばかりを結集した配合形であり、かつ、サンデーサイレンスの「4×4」。ファミリーは3代母がウインドインハーヘア。上がり最速の33秒5。ゴール前の鋭さでは上回っていた。中身は勝ち馬と互角だろう。

 3着だったコラソンビート(父スワーヴリチャード)は、中団で折り合っていた1、2着馬よりレース中盤から一歩前へ。1400mを快走した後とあって少し行きたがっていた。あくまで結果論だが、そのため勝負どころから外に出すように一歩早く動いたのが痛かった。これに阪神JFの勝ち馬は、もう20年連続してキャリア「1-3」戦の馬ばかりであることを重ね合わせると、大丈夫と思えたが、すでに4戦して2歳時に5回出走のスケジュールが響いたのかもしれない。充電して再始動したい。

 1番人気のサフィラ(父ハーツクライ)は。3着コラソンビートから3馬身差。外枠から前に馬を置き、うまく折り合って末を伸ばしたが、今回は上位3頭と差があった。小柄には見せない好馬体で、これから距離が延びたほうがいいのではないかと思わせるところがあった。全兄サリオスが巨漢馬だったためか、スケールで圧倒というタイプには映らない。ともにディープインパクト産駒の姉サラキア、サリエラに似たタイプとして成長するだろう。

 4番人気でただ1頭だけ凡走の形になった10着キャットファイト(父ディスクリートキャット)は、パドックでは力強い馬体を見せていたが、3ヶ月の休み明けで、直前輸送で初の関西圏のレース。昂った面があったのだろう。好スタートも裏目。少しずつ中団に下げたが、終始行きたがっていた。次は関西への遠征に慣れるはずだ。

 注目のボンドガールが右前肢の打撲で回避し、チェルヴィニアはトモの違和感で特別登録がなかったが、この世代の牝馬陣は上位ランクの馬が多い。牝馬のエース級は1、2頭に限られる年が珍しくないが、今年はそうではない可能性が高まった。来季のクラシックの盛り上がりに期待したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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