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【独占取材】JRA初の女性調教師 前川恭子助手が切り開く道(後編)──「女性従業員が入ってきてくれたら嬉しい」の真意と理想の厩舎像

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  • 2023年12月15日(金) 18時02分
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▲JRA初の女性調教師・前川恭子現調教助手(撮影:大恵陽子)


ついにJRA初の女性調教師が誕生します。栗東・坂口智康厩舎に在籍する前川恭子調教助手が調教師試験に合格し、来年1月からは調教師に転身。近年、女性騎手の活躍が話題を集めていましたが、女性の厩舎スタッフも着実に増えていて、関係者の間では「近い将来」とも囁かれていました。

第1号となる前川“調教師”は、産休を経て調教助手に復帰し、仕事と育児を両立するワーママでもありました。調教師を目指すきっかけとなった重賞馬の存在とイギリスでかけられた言葉、そして「女性従業員が入ってきてくれたら嬉しい」と話す理由とは。前後編に分けてたっぷりお届けします。

前回はこちら▼
【独占取材】JRA初の女性調教師 前川恭子助手が切り開く道(前編)──「実家には手作り馬場」“馬漬け”だった学生時代

(取材・構成:大恵陽子)

「遠足や授業参観も参加できた」厩舎スタッフの協力


──前編では重賞を勝ったウエスタンダンサーが調教師を志望するきっかけの一つになった、とおっしゃっていました。その前から調教師に、というお考えはありましたか?

前川 実は調教師になりたいと思ってトレセンに入ったんです。というのも、いまで言う「リトレーニング」に関わりたかったんです。引退した競走馬を乗馬クラブで働く友人と連携して乗馬にして、「もっとサラブレッドの魅力を広めたい」という考えがありました。もちろん馬主さんの愛馬ですからオーナーのお考えが最優先ですけど、「乗馬にどうですか?」と提案できる立場になりたい、と昔は思っていたんです。そのうちどこの厩舎も経営が厳しい時代に突入して、従業員の生活を支える責任への不安を感じました。また子育てがあったり、角居先生(21年引退)が「サンクスホースプロジェクト」を始められて、安心した気持ちもあり、調教師試験を受けないままでいました。

──乗馬普及は先輩調教師たちにお任せしよう、と思ったんですね。

前川 ところが、海外研修でロジャー・ヴェリアン厩舎に見学に行った時、奥さんの花子さんから「受かった先のことは心配しないで、気楽に受けたらいいのに」と言われて、それで「受けてみようかな」と思い、受験を始めたのが5年前です。花子さんは私のことは覚えていないと思うのですが、その言葉がきっかけとなりました。

──ダーレーでレーシングディレクターも務められた方ですね。ちょうどその出来事と前後して崎山厩舎の解散に伴い、坂口厩舎に移籍しました。

前川 坂口先生は私よりもだいぶお若いのに、何かあっても慌てず騒がずな方で、獣医師でもあるので私たちも安心して仕事ができます。馬の調子が整わなければ出走させない決断をスパッとされるので、そういったところも尊敬しています。

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▲前川助手が「尊敬している」と話す坂口智康調教師(C)netkeiba.com


──話は前後しますが、娘さんを出産時は育休を取得されたとのこと。お恥ずかしながら、トレセンに育休・産休制度があることを知りませんでした。

前川 法律でも定められていますし、就業規則にも規定があります。ただ、私たちの仕事は朝が早くて、その時間帯からの預け先がなかなかありません。近隣に24時間託児所もあるのですが、子どもを起こして預けに行くというのも難しいですし、お仕事は辞められる方が多いというのはあります。

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