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有馬記念デーの過ごし方

  • 2023年12月21日(木) 12時00分
 先々週の当欄に、熊沢重文さんが騎手を引退したことで、JRAジョッキーの「5G(ファイブジー)」が4人になり、替わって加わるのは田中勝春騎手(1971年2月25日生まれ)になる、と書いた。しかし、内田博幸騎手(1970年7月26日生まれ)のほうが年上というか、学年は同じでも、早生まれの勝春騎手より誕生日が早い。先に新メンバーとなるのは内田騎手だった。

 修正しなくては、と思っているうちに、勝春騎手は調教師試験に合格し、今年限りで騎手を引退することになった。

 結局「カッチー」は、5Gのメンバーになることのないまま鞭を置くわけだ。

 誤ったことを書いてしまい、勝春騎手に対してなのか、内田騎手に対してなのか、読者に対してなのか、よくわからないのだが、ともかく、申し訳ない気持ちになった。

 勝春騎手は1990年代の初めからよく知っていて、私の結婚式で、武豊騎手や蛯名正義調教師、ribbonの永作博美さん、佐藤愛子さん、松野有里巳さんらと同じテーブルについてもらった。

 絶対いい調教師になるだろうけど、寂しいな……と思っていたら、松田大作騎手も引退するという報せが飛び込んできた。12月17日付で引退したので「松田元騎手」と記すべきなのか。一緒にアメリカに行ったときに人柄を知って好きになり、ずっと応援していただけに、驚いた。悩み、考え抜いたすえの決断なのだろう。同じく騎手時代に海外遠征で腕を磨いた千田輝彦調教師が管理するタガノアザガルで、2015年のファルコンステークスを勝って重賞初制覇を遂げたときは私も本当に嬉しかった。彼はデビュー19年目で、開業5年目だった千田調教師にとっても初の重賞制覇であった。

 2017年、6カ月の騎乗停止期間中にセレクトセールの会場で会ったとき「明らかに変わった姿を見せなければならないので、むっちゃ頑張ります」と話していたが、復帰後、その言葉どおり、明らかに変わった姿を見せてくれた。一戦に懸ける思いの強さと気迫が、遠くから見ている私たちにも伝わってきた。なかでも、7番人気のスワーヴアラミスで差し切った、2022年の東海ステークスの騎乗は見事だった。

 松田君、長い間お疲れさまでした。また今度、じっくり話を聞かせてください。

 さて――。私が競馬を始めたのは1987年の秋のことだった。以降毎年、日本ダービーと有馬記念だけは現地で観戦していたのだが、コロナ禍で入場制限があった2020年、初めて競馬場以外の場所で見ることになった。

 今週末の有馬記念も、それ以来、私史上2度目の競馬場以外での観戦となる。

 今年の有馬記念デーの12月24日は、午後2時から4時まで、青森県三沢市の三沢市国際交流教育センターにおいて、寺山修司記念館館長で詩人の佐々木英明さんと私とでトークライブを行うことになったのだ。

熱視点

寺山修司没後40年記念認定事業を告知するポスター


 12月20日発売の拙著『ブリーダーズ・ロマン』(集英社文庫)には、歌人・劇作家・競馬エッセイストとして活躍した寺山修司が登場する。本作が「寺山修司没後40年記念認定事業」となった関係で、「寺山修司が愛した馬たち/競馬史の舞台としての三沢」というテーマでトークライブを実施することになったのだ。そのなかで、有馬記念のパブリックビューイングを行う。

 なお、本作の解説文は、netkeiba.comでもおなじみの細江純子さんが書いてくれた。彼女の聡明さと文章の上手さはわかっていたつもりだったが、予想を遥かに上回るグレードだった。テレビのトークやSNSの書き込みで笑いを取ったかと思うと、そうした文章で読み手の知的好奇心を心地よく満たす。要は、人の気持ちを動かす勘どころを心得ているのだろう。

熱視点

12月20日発売の競馬ミステリー『ブリーダーズ・ロマン』(島田明宏・著、集英社文庫)。日本初の民間洋式牧場「廣澤牧場」の血脈をめぐる競馬史ロマン


 また、本作の予告編漫画を、谷口あさみさんと高草木こぶさんが描いてくれた。主人公の小林真吾はカッコいいし、レースシーンは迫力満点だし、馬の姿は綺麗だし、細江さんの解説同様、素晴らしい作品になっている。こちらは、集英社文庫の本作の特設サイトなどで見ることができる。

 考えてみれば、集英社文庫の特設サイトをつくってもらったのは初めてだし、「寺山修司没後40年記念認定事業」のサイトでも紹介してもらったりと、これまでにないくらい、いろいろな形で宣伝してもらっている。集英社文庫の特設サイトには、競馬小説『ザ・ロイヤルファミリー』で山本周五郎賞と馬事文化賞を受賞した早見和真さんもコメントをくれた。

 もし売れなかったら、自分以外、誰のせいにもできない状況になった。

 私は、運を天に任せることができない性格なので、最後までジタバタしてピーアール活動をつづけるつもりだ。

 先週、ずっと会いたいと思っていた人に会うことができた。羽根付き餃子を食いながら、楽しい時間を過ごした。長くなるので、彼についてはまた別の機会に記したい。

 今年の当欄の更新は、これで最後になる。

 毎年のように書いていた一年の十大ニュースを、今年は書く機会を逸してしまった。次回は、来年1月11日(木)の更新になる。

 それではみなさま、よいお年をお迎えください。

当コラムの次回更新は1月11日(木)12時予定です。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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