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【中山金杯 AI予想】枠順次第では侮れない!? AIの挙げた超人気薄は波乱を演出できるか

  • 2024年01月03日(水) 18時00分

ホープフルSはレガレイラが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

1番人気馬の好走率はかなり高いレースだが……


AIマスターM(以下、M) 先週はホープフルSが行われ、単勝オッズ3.1倍(1番人気)のレガレイラが優勝を果たしました。

伊吹 「ここまであっさり勝ち切るとは……」というのが正直なところですね。スタートがあまり良くなかったこともあって、道中は馬群の後方を追走。3コーナーから少しずつポジションを押し上げたものの、結局4コーナーを10番手で通過しています。

 しかし、ゴール前の直線に入ったところで大外へ持ち出すと、瞬く間に先行勢との差を詰め、急坂を上り切ったあたりで先頭のシンエンペラー(2着)に肉薄。そのまま並ぶ間もなくかわしきり、最後は逆に3/4馬身の差をつけました。重賞ウイナーのシンエンペラーが一旦は完全に抜け出していたことからもわかる通り、決して差し有利・外枠有利な展開ではなかったはず。

 結果論ですが、この日のこのメンバー構成においては、能力や完成度が頭ひとつ抜けていたのでしょう。もちろん、勝負どころで的確な進路を選んだC.ルメール騎手の手綱捌きも、お見事というほかありません。

M レガレイラはデビュー3戦目の牝馬。前走のアイビーSでは3着に敗れてしまったものの、牡馬相手の大舞台でタイトル奪取に成功しました。

伊吹 もともと素質を高く評価されていた馬ですが、基本的に内枠有利なレースでもありましたし、シンエンペラーと同オッズ、発売票数で2万9147票上回る単勝1番人気というのは、さすがに期待され過ぎではないかと思っていたんです。

 結果的には着差以上の完勝だったわけで、私の見立てが甘かったと反省しています。現5歳の半兄に菊花賞で4着となったドゥラドーレスがいるうえ、3代母のウインドインハーヘアはディープインパクトやブラックタイドの母としてもおなじみの歴史的名牝。良血馬の底力を見せつけられましたね。

M この春は皐月賞への参戦が検討されている模様。かなりの注目を集めることになるのではないでしょうか。

伊吹 GIとして施行された2017〜2022年のホープフルSで優勝を果たした6頭のうち、翌年のGIで一度も3着以内に好走できなかったのはタイムフライヤーとキラーアビリティだけで、この2頭も翌年以降の重賞を制した実績はあります。順調にレースを使っていければ結果は自ずとついてくるはず。今後も目が離せません。

 また、これまでのレースぶりや血統を見る限りだと、より長い距離も問題なくこなせそう。気の早い話ですが、オークスもしくは日本ダービーでどんなパフォーマンスを見せてくれるかも楽しみです。

M 今週の土曜中山メインレースは、年頭の風物詩として親しまれてきた伝統の一戦、中山金杯。昨年は単勝オッズ4.5倍(1番人気)のラーグルフが2着のクリノプレミアムをハナ差で下し、自身初の重賞制覇を果たしました。ハンデキャップ競走ということで、波乱の決着を期待している方も少なくないと思いますが、やはり人気薄の伏兵を積極的に狙っていくべきなのでしょうか?


伊吹 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、4着以下に敗れてしまった単勝1番人気馬は2頭だけ。人気の中心となっているような馬は、相応に高く評価するべきかもしれません。



M ただ、単勝2〜3番人気馬や単勝4〜6番人気馬の好走率はあまり高くないですね。

伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2〜7番人気の馬は2014年以降[6-8-3-43](3着内率28.3%)、単勝8〜11番人気の馬は2014年以降[0-1-4-35](3着内率12.5%)、単勝12番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-50](3着内率0.0%)となっていました。

 超人気薄の馬が波乱を演出した例は少なくて、実際に過去10年の3連単平均配当も6万円強にとどまっているのですが、堅く収まりがちな一戦とまでは言えませんし、妙味あるオッズがついている伏兵は積極的に狙って良いと思います。

M そんな中山金杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、マイネルファンロンです。

伊吹 思い切ったところを狙ってきましたね。上位人気に推されそうな雰囲気はありませんし、単勝二桁人気にとどまる可能性すらありそう。

M マイネルファンロンは明け9歳の実績馬。2021年の新潟記念を勝っているほか、2022年のAJCCでも2着に健闘しています。しかし、2023年は障害を含めて6戦したものの、7着が最高。本命視している方はそれほど多くないでしょう。

伊吹 この馬が馬券に絡んだら、かなりの高額配当決着になるかもしれませんね。Aiエスケープが高く評価しているという事実を踏まえたうえで、私はレースの傾向から、今回の期待度を計っていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりですか?

伊吹 基本的に前走好走馬が強いレースである点は押さえておきたいところ。過去4年の連対馬8頭中6頭は、前走の着順が1着、もしくは前走の1位入線馬とのタイム差が0.3秒以内でした。



M 大敗直後の馬は3着内率も低い水準にとどまっています。

伊吹 ちなみに、前走の着順が2着以下、かつ前走の1位入線馬とのタイム差が0.4秒以上、かつ前走のコースが阪神芝以外だった馬は2020年以降[0-0-1-35](3着内率2.8%)。今年の場合、京都のレースを経由してきた馬は無理に嫌わなくて良い気もするのですが、前走が関西圏のレースでなかった馬に関しては、直近のパフォーマンスを素直に評価するべきでしょう。

M マイネルファンロンの前走は中京芝2000mの中日新聞杯で、勝ち馬から0.5秒差の7着どまり。残念ながら、この条件はクリアしていません。

伊吹 さらに、近年は小柄な馬が不振。同じく過去4年の3着以内馬12頭中10頭は、前走の馬体重が480kg以上でした。



M 思いのほかはっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 人気を裏切ってしまった例も少なくないので、前走の馬体重が480kg未満だった馬は、扱いに注意したいところです。

M マイネルファンロンは前走の馬体重が480kgちょうど。ギリギリの数字ではありますが、2023年の6戦はいずれも出走時の馬体重が480kg以上でしたし、問題ないと見て良いのではないでしょうか。

伊吹 あとは枠順も見逃せないファクターのひとつ。近年は内寄りの枠に入った馬の活躍が目立っています。



M 先週のホープフルSと同様の、どちらかと言えば内枠有利なレースと見ておきたいですね。

伊吹 おっしゃる通り。私自身、既にある程度の分析は済ませているものの、最終的なシルシや買い目は枠順を見てから柔軟に決めようと考えていました。

M もし仮にマイネルファンロンが内寄りの枠を引き当てたら、どう評価しますか?

伊吹 他馬の枠順にもよりますが、無印にはしたくないですね。前走の中日新聞杯は、後方のインコースから馬場の外めまで持ち出すのに手間取ってしまい、その分だけ上位勢との差を詰め切れなかった――という印象。着差以上に高く評価できる内容だったと思いますし、今回も展開次第では侮れません。他ならぬAiエスケープも有力と見ているわけですから、しっかりマークしておきましょう。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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