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【根岸S】エース級不在も新星誕生の予感

  • 2024年01月29日(月) 18時00分

全体時計では測れないエンペラーワケアの可能性


重賞レース回顧

根岸Sを制したエンペラーワケア(撮影:下野雄規)


 レモンポップ、ウシュバテソーロなどのエース級がサウジアラビア、ドバイなどに遠征する今年、2月18日の「フェブラリーS」に向けて、やや物足りないメンバーではないのかと心配された根岸Sだが、4歳の新星エンペラーワケア(父ロードカナロア)が圧勝。後続に2馬身半の差をつける圧勝でまだ余力を感じさせる強い勝ち方だった。

 勝ちタイムの1分24秒1は、根岸Sが春季の東京ダート1400mに定着して以降、24回でもっとも遅い勝ち時計だったことは事実だが、乾燥してタフなダートコンディションだった。それに加え先行したい伏兵陣の出足が悪く、押し出されるように主導権を握って4着に粘った2022年の2着馬8歳ヘリオス(父オルフェーヴル)の作ったペースは、前後半「35秒8-(12秒5)-35秒8」=1分24秒1。前半3ハロン35秒8は、1レースの3歳未勝利戦ダート1400mの36秒0とわずか0秒2差のスローだった。

 勝ったエンペラーワケアは自身の上がり「35秒2-12秒1」でまとめているので、全体の時計は物足りないものの、中身自体は少しも評価を下げるものではない。

 2着アームズレイン(父コパノリッキー)、3着サンライズフレイム(父ドレフォン)はまだ重賞には実績のない4歳馬。平凡な時計だったが、これをステップにパワーアップしてくれるだろう。この24年間で、若い4歳馬が「1-3」着独占となったのは初めてだった。また、根岸Sはダートの短距離戦なのでもともと500キロ級の大型馬有利という事は知られているが、今年の上位3頭はみんな馬体重500キロ以上だった。

 全国規模のダート戦の競走体系が変わろうとしているときなので、4歳の台頭は望ましい方向を示したと言える。約3週後のフェブラリーSには、南関東の3冠馬4歳ミックファイアを筆頭に、イグナイター、GI連続2着のウィルソンテソーロなども参戦してくる可能性がある。

 2着アームズレインは、外枠でもまれずにこの流れの二番手を追走できた。恵まれたが、決してフロックではなく、これでダートの短距離【5-1-1-2】。祖母は重賞3勝のマザートウショウ。3代母はグレード制導入前だが現在の重賞格5勝馬。たくましい馬体の持ち主なのでこれからさらに力をつけるはずだ。

 3着サンライズフレイムは、ダート6勝の現5歳馬ドライスタウト(父シニスターミニスター。脚部難で休養中)の半弟。兄に見劣らないスケールを秘めているが、ダート1400mで4勝しているものの、今回のレース内容からすると、かかり気味になるタイプであっても、持ち時計も関係し、1400mベストというより、むしろ1600-1800m級の方が合っているのではないか、そんな印象が残った。1600mなら怖い。

 4番人気の牝馬アルファマム(父マジェスティックウォリアー)は、この距離でペース判断はさすがに至難であり、早めに動くこともできないが、あまりにも流れが不向きだった。上がりは最速の35秒1でも、今回は追い込み一手の弱みがフルに出てしまった。

 5番人気のパライバトルマリン(父マリブムーン)は、スムーズに流れに乗ったように映った。本来のスピード能力が生かせる展開と思えたが、1400mは初めて。タフなダートコンディションのレースを3戦連続してきたあとなだけに、楽な追走のように見えながら、今回は自身のリズムではなかったのだろう。直線でペースが上がると対応できなかった。

 3番人気のタガノビューティー(父ヘニーヒューズ)は、7歳のベテランを感じさせない好馬体と、好気配。出負けは織り込み済みだったはずだが、あまりにも流れが遅すぎた。後方追走の同馬の前半3ハロンは推定「37秒台の後半」。それでレース上がりが35秒8では差を詰めようがなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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