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【きさらぎ賞】3頭同着を思わせる大接戦 ものにしたのは文句なしのクラシック候補

  • 2024年02月05日(月) 18時00分

今後の成長で更なる飛躍へ


重賞レース回顧

きさらぎ賞を制したビザンチンドリーム(c)netkeiba


 ゴール寸前、やや分が悪かったインザモーメント(父キズナ。結果、同タイム4着)以外の3頭がまったく差のない横一線になって入線した。「3頭同着もあるのではないか…」と思われた大接戦を制したのは、12月の新馬戦を勝ったばかりの1戦1勝馬ビザンチンドリーム(父エピファネイア)だった。

 ダッシュつかずに前半は後方2番手。馬群に追いつくと首を上げて折り合い難をみせ、4コーナーでは大外へ。心配された通りのレース運びで、さらに直線中ほどでは内にささり気味。あれでは届かないだろうと映る場面があった。入線後、坂口調教師も、騎乗したR.ピーヒュレク騎手も「負けたと思った」と振り返ったとされるが、ほんのわずかだけ差し切っていたのが最外のビザンチンドリームだった。大事なレースでの運があった。これは大きい。

 全体にタフな馬場コンディションながら、記録されたタイムは1分46秒8(レース上がり34秒4)のレースレコード。差し切った直線のラップは「11秒1-11秒3」。数字の上では文句なしの内容だが、ビザンチンドリームは本当に強い「新星」なのだろうか、多くの記者が迷ってしまった。

 出走した12頭の中で、見栄えのいい抜けた好馬体を誇り、今回450キロだった馬体はひと回りどころか480キロ前後に見えなくもなかった。1戦だけのキャリア、ロスの多い若い(荒っぽい)レース運びを考えれば、この後の成長を想像するとき文句なしのクラシック候補とすることができる。

 父エピファネイアは、エフフォーリア、デアリングタクト(3戦目に桜花賞制覇)などが示したように、キャリアを問わないレース巧者を送ることができる。祖母グリッターカーラは、東京スポーツ杯2歳S、朝日杯FSなど制し皐月賞で3番人気に支持されたフサイチリシャールの4分の3同血の妹で、ビッグレースに良績のあるファミリーでもある。

 と同時に、なんとか届いた結果は「ハナ、ハナ、クビ差」。クラシック候補がいきなり3頭も4頭も出現するわけがないではないか、とするレース直後の感想がマトを射ている可能性もある。

 まだ次走は未定だが、鞍上は短期免許のピーヒュレク騎手から次は替わるだろうし、あの危なっかしいレース運びから、クラシックに直行というよりは、確認のステップになる一戦をはさみそうに思える。非常に評価が難しい候補が飛び出した。できれば、弥生賞あたりに出走して欲しい気がする。

 ハナ差2着のウォーターリヒト(父ドレフォン)は、この日の東京新聞杯で出遅れて凡走してしまったマスクトディーヴァや、2007年のヴィクトリアマイルを快走したコイウタが代表する牝系出身。内を狙って入った直線で競り合いになった際、外側への斜行で過怠金が課せられたが、あまり芝状態の良くない内から伸びて微差の2着は価値がある。小差3着のシンザン記念が17番人気。今回も10番人気での快走。好調教をみせるわりに評価は低いが、上がり33秒台で伸びたのはこの馬と、勝ち馬だけ。さすがにもうフロックではない。ハデなタイプではないが、崩れないところがすばらしい。

 3着シヴァース(父モーリス)も人気薄の伏兵としての好走だが、勝ち馬と同じく今回が2戦目。途中まで9着に沈んだテイエムリステットと並走の先行策で、自身「60秒2-46秒6-34秒」=1分46秒8。外に回った差しタイプに分があった中でこの時計で乗り切った内容は、さすがヴィブロス(秋華賞などGI・2勝)産駒。ヴィルシーナ、シュヴァルグランなど活躍馬が並ぶハルーワスウィートから発展する一族の底力と勝負強さを見せつけた。バテなかったレースの中身は勝ち馬に一歩もゆずらない評価になる。

 2番人気で6着にとどまったファーヴェント(父ハーツクライ)は大事な出世レースだっただけに無念。直線の一番重要ゴール寸前の競り合いになるところで、ウォーターリヒト(過怠金)、シヴァース(戒告)にはさまれ、手綱を引かざるをえなかった。まだ今回が3戦目。力負けではない。巻き返しに出るチャンスと、時間はある。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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