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【中山記念】名手に導かれた重賞初制覇

  • 2024年02月26日(月) 18時00分

伏兵とは思えぬ完勝 芽吹いた才能の今後は


重賞レース回顧

中山記念を制したマテンロウスカイと横山典弘騎手(撮影:下野雄規)


 伏兵評価だった5歳セン馬マテンロウスカイ(父モーリス)の、鮮やかな先行抜け出しが決まった。松永幹夫調教師と横山典弘騎手は、前走の「東京新聞杯」の前から、「ここを使ったら次は1800mの中山記念に…」とスケジュールを展望していたとされるが、一戦ごとにパワーアップし、距離不足かと思えた東京新聞杯も一旦は勝ち負けに持ち込める位置まで押し上げて0秒3差の中身ある5着。マイル戦では自己最高の1分32秒4だった。

 その目下のデキの良さをフルに発揮したのが、GIIなので明らかに相手は強化したが、より距離の合う1800m(過去3回も1分44秒台で走破)のこの中山記念だった。

 ここまで16戦中15回も、さまざまな戦法で地力強化を目ざしてきたコンビの横山典弘騎手の思い描いたイメージ通りのレース運びだった。鞍上はこれで中山記念は通算【6-5-1-12】。6勝は歴代断然トップであり、3着以内率は5割に達した。

 いつもよりスタート直後に気合を入れてダッシュし、素早く好位のインを確保する位置取りは、普段は差す形が多かったカンパニー(2008、2009年連覇)や、ジャスタウェイ(2014年1着)で快勝した手法とほとんど同じだった。

 内回りでコーナーを4回もこなさなければならない中山1800mでは、これがスキなしのベストの乗り方に近いのだろう。ハイペースなら、一旦少し下げることもできる。インの馬場が悪くない限りコースロスを防げる。明暗を分ける4コーナーでは自身で進路を選択できる。今回もその理想形だった。でないと、ベテランとはいえ、計12回も馬券圏内に入ることはできない。

 横山典弘騎手は、エージェントを介することなく最初に依頼されて引き受けた馬に騎乗するのが基本姿勢。だから、脈のある人気馬だけに騎乗するとは限らない。その流儀はいまも変わっていないはずである。

 レース全体の流れは「47秒2-(11秒4)-49秒5」=1分48秒1。前半1000m通過は58秒6。稍重にしてはきつかったはずだが、「速いとは感じなかった(横山典弘騎手)」と振り返ったあたり、また後続に2馬身差の完勝を考えると、いきなりGIで通用するかは疑問の方が大きいが、これまでのマテンロウスカイとは違ってきたのは確かだ。

 このペースで主導権を握って、ゴール寸前の2着争いに競り勝ったドーブネ(父ディープインパクト)の内容も立派。一連のレースが示すように、好時計のレースに良績があるだけに、決して稍重馬場が味方したものではない。また、差しにくい馬場ではあったが、レースの流れに恵まれたものでもない。さらに地力強化が期待できる。

 3着も1-2着馬と同じ5歳世代の皐月賞馬ジオグリフ(父ドレフォン)。まだ、低迷期から完全に立ち直ったともいえない状態と映っただけに、皐月賞を制した中山コースで復活してきたのは大きい。完全復活となれば、ダートもこなせるだろう。また、距離適性は長い距離より1600-2000m級の方が最適の印象に強く感じられた。

 外から懸命に伸びたもう一頭の皐月賞馬4歳ソールオリエンス(父キタサンブラック)は、上がり最速の36秒4で伸びたが0秒5差の4着。レース上がりが37秒6に落ち込んでいただけに、もっと鋭く伸びて接戦に持ち込んで欲しかったが、ペース以上に先行馬が残った馬場なので、やむを得ない結果か。次走は「大阪杯」の予定がある。器用さも求められる今回の1800mより、2000m向きだろう。そこで期待したい。

 2番人気の4歳エルトンバローズ(父ディープブリランテ)は、上位3頭とほぼ同じような争覇圏にいただけに、失速した印象の7着は案外。評価を高めた昨秋の毎日王冠の1800mは高速馬場で「前半1000m59秒5-後半45秒8-34秒1」=1分45秒3。古馬のトップクラスを封じたのだから決して恵まれたものではないが、スローの流れに乗って55キロ。厳しいレースではなかった一面もあった。同馬の上がり33秒8に対し、上がり33秒1-5で脚を余して惜敗した馬が3頭もいた先行馬残りのレースだった。今回は馬場を気にしたところもあるので、良馬場の次走で真価が問われることになる。

 中山記念3勝目を狙った8歳ヒシイグアス(父ハーツクライ)は、8歳馬とは思えない好馬体、好気配だった。ただ、明らかに馬場を苦にしていた。この一戦だけでは年齢からくる陰りうんぬんはないと思える。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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