予定通りの出走とはいえ、5か月ぶりの今回はひょっとして崩れる危険も大きいのではないかと思えたカワカミプリンセスの、この世代の牝馬の中での傑出した能力の高さは本物だった。というより、考えられているよりもっと高いレベルの牝馬なのだろう。
どちらかというと桜花賞時の勢力図に近いような結果になることが多い京都の2000mの内回りだが、厳しい流れで1分58秒2の好時計の決着。桜花賞の1、2、3着馬がすべて沈んだオークスとまったく同様(2、3着が入れ替わっただけ)の結果になった。
残り1Fの地点、今度は勝ったと思えたアサヒライジングも、オークスと同じようにしぶとく伸びたフサイチパンドラも立派だったが、カワカミプリンセスの能力が完全に一枚上だった。勝ち時計が必ずしもレベルを示すとは限らないが、これまでの秋華賞を1分58秒台前半の好時計で勝ったのは、96年ファビラスラフイン(ジャパンC・2着)と02年ファインモーション(エリザベス女王杯など)、そして04年スイープトウショウ(宝塚記念など)の3頭。カワカミプリンセスは、無敗で2冠を制してまだ5戦のキャリア。このあと、少なくとも同じような活躍をするだろうことが期待できる。
1番人気に支持されたアドマイヤキッスは、牝馬3冠をすべて1番人気であと一歩足りずの不思議な記録を残してしまったが、決して凡走したわけでもなく、少々運がなかったのと、相手に大一番向きの底力をもつライバルが多すぎた。また、本質は牝系が示すスピード色の濃いマイラーなのだろう。
同じ日、東京では1800mの府中牝馬Sが行われたが、ゴール前の迫力からすると、このあとのエリザベス女王杯、若い3歳馬の方に分がありそうだ(天皇賞組は回ってこないだろうから)。今年の3歳牝馬は、オークスのレコード決着が示していたように、とくに中距離部門でのレベルがきわめて高い。