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天皇賞・秋

  • 2006年10月30日(月) 12時50分
 評価の難しい馬が多かったこと、また、このぐらいの組み合わせなら勝っても不思議ない馬が多かったという意味の混戦だったが、結果は上位7着までに入線した馬は、みんな上位8番人気以内の馬だった。レース全体としては波乱の結果ではなかったろう。

 行く馬不在と思われたが、前走があまりに不完全燃焼だったインティライミがハナを切って、それも少しかかり気味に飛ばしてくれたのは、毎日王冠と同じような形に持ち込みたかったダイワメジャーに理想の展開。前半の1000m58.8秒で行ったインティライミは少しきつかったが、これを6〜7馬身差で追走のダイワメジャーの前半は60秒前後。あとは毎日王冠と同じように自分でスパートして、上がりの速い瞬発力だけのレースにしないことだった。安藤勝己騎手は「恵まれた流れだった」と表現したが、他の有力馬がみんなダイワメジャーに目標を定める形になった中、正攻法で、自分でスパートして押し切ったのだから文句なしだろう。のど鳴り完治。実力勝ちだった。東京コースに良績のなかった当時は、のど鳴りと、まだ長い直線を乗り切る実力が備わっていなかっただけ。毎日王冠のときより一段と追ってからもしっかりしていた。

 2着スウィフトカレントは、いつもよりずっと早めに中団のインにつけ、コース取りもスパートのタイミングも最高だった。一度は差し切るかの勢いだったが、勝ち馬の方が一枚上だった。能力は出し切っている。このあとは強気にジャパンCの予定というが、この馬、全出走歴が1800m以上でも案外マイラーに近いタイプの気がしないでもない。首の高い走法にスピード系の色彩が濃い。

 3歳アドマイヤムーンはこの流れで、2000mの総合力勝負になっての小差3着は立派。これまで良績はスローの切れ勝負のレースだけ。GIでは底力を感じさせなかったが、ゴール寸前もしっかり伸びていた。次からは評価を大きく上げていいだろう。

 期待された牝馬2頭、スイープトウショウとダンスインザムードは、そろって5、6着に完敗。敗因はさまざまにあるだろうが、2頭の牝馬、これまで再三再四きびしいGIを戦い抜き、戦い続けてきた。今回のデキは人によって見方は分かれるかもしれないが、惚れ惚れするくらい素晴らしかった。そろそろ全盛期の力は……、かもしれない。また一方、ダンスの内容は前2年とほぼ同様でもある。

 コスモバルクはまだ衰えもかげりもない。だが、今回の2000m、一時のほとばしる闘志を前面に行きたがっていた当時とは違って、適距離でもないように思えた。ゴール前まだ脚があった。こちらは2400mのジャパンCだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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