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エリザベス女王杯

  • 2006年11月13日(月) 12時50分
 きわめて残念なレースになってしまった。降着になった直線の出来事は多くのファンが確認したとおりで、見解や判断の分かれるところではない。しかし、それにしてもこの秋になって、凱旋門賞のディープインパクトの敗戦から始まり、帰ってからの禁止薬品の検出事件。ジャパンCにほとんど外国の馬が招待に応じてくれず、ジャパンCダートにはただの1頭も海外の馬は来ないというニュースが伝わったころ、この残念なGIでの降着。競馬場に急にファンの数が減った気がする。JRAを中心に競馬サークル全体の危機だろう。どこか、なにかがおかしい。社会全体と同じように……。デルタブルース、ポップロックの痛快なニュースがかすんでしまった。

 カワカミプリンセスの斜行の伏線は3コーナー過ぎの手ごたえの悪さ、行きっぷりの悪さにあった。そのため外に回る余裕はなく馬群の中に突っ込んで行かざるを得なかったところにあるが、ベテランの本田騎手らしからずだいぶ慌ててしまった。斜行のペナルティーは仕方がない。どのレースでも、いつでも起こりえることで、本田騎手を責めても仕方がない。それにしてもカワカミプリンセスは強い。あの苦しい位置から最後は突き抜けて、ゴール前では差を広げている。立て直して出走の来季はもっと強くなりそうだ。

 残念なのは、これで数々のタイトル(年度代表馬だってありえた)を、ほぼ失ってしまったことだろう。かつてのメジロマックイーンと同じように、ぜひ巻き返したい。不名誉をこの後のレースで過去のことにしてしまいたい。

 繰り上がりの1着とはいえ、フサイチパンドラは自分でスパートし外を回って2分11秒6で乗り切ったのだから、立派にエリザベス女王杯の、それもかなり強い勝ち馬として十分な資格がある。陣営のカワカミプリンセスを思いやるコメントも、残念なレースの後だっただけにさすがだった。スイープトウショウは昨年の活力あふれる状態だったら、勝っても不思議ない展開と理想の位置取りだったが、今年は天皇賞が厳しかったためもあって、少し元気がなかった。それでも底力はきちんと示した。

 善戦止まりに終わったディアデラノビア、アサヒライジング、アドマイヤキッスはほぼ能力を出し切っている。その中でアドマイヤキッスは、やはり完全にマイラーだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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