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ジャパンC

  • 2006年11月27日(月) 12時50分
 様々な意味で絶対に負けられない一戦だった。もし、ここでディープインパクトが伸び切れずに沈むようだと、多くのファンも、サークル全体もレースの後どう処していいのか分からなかったかもしれない。究極にも見える仕上げだった。

 キャリアを積んだ古馬の場合、少し枯れてみえるぐらいが最高の、後のない仕上げだとされるが、デビュー以来最小の436kgの馬体はこれまでのディープインパクトとは、ちょっと異なるイメージもあった。全然スキはなかった。

 レース内容は、同じ東京2400mの日本ダービーとほぼ同じ。芝コンディションも全体のレースの流れも異なるから、勝ち時計は2分25秒1にとどまったが、ディープ自身の上がりはダービーと0.1秒差の33.5秒。同じように外に出て他馬とは馬体を離して一直線に伸びてみせた。復活したディープインパクトは見事だった。レースのあと、何事もなかったかのようにディープはすぐ落ち着きを取り戻している。

 残るはあと一戦、有馬記念。そうは苦しいレースでもなかったから、今回のデキをキープしてくれそうだが、表面に現れた数字や着差は別にして、また相手は別のこととして、3歳春の日本ダービーのディープと比較して、今回はあまり「強い」というインパクトはなかった気がする。あくまで直後の根拠のない印象に過ぎないが…。武豊騎手をはじめ陣営の必死の仕上げと懸命のレース運びに、ディープは一応は楽々と応えてみせたのだが、個人的には有馬記念での信頼性は少しばかり低くなったように思える。

 ハーツクライの急激な失速は残念。おそらく休み明けは関係ないだろう。そういう馬ではない。のど鳴りが悪化したのだとしたら、有馬記念はもちろん来年の海外遠征も考え直さなくてはならなくなる。このあとの推移を見守りたい。

 ウィジャボードは、ディープが動いたときに一緒にペースを上げることができなかったのが、直線で一度前が詰まる形になった原因。それが分かっているから、デットーリ騎手は不利うんぬんを口に出そうともしなかった。上がりの速いレースを考えると、ほぼ能力は出し切っている。むしろ3歳ドリームパスポートの成長、パワーアップが大きかったのだろう。これで3戦連続してメイショウサムソンに先着したことになった。こちらは有馬記念向きだろう。挑戦を楽しみにしたい。コスモバルクも頑張った。もっと強気に行ってもいいぐらいで、もう少し馬体を絞ることに成功すれば、有馬記念での大逆転とて決して無理ではない。もともとがそういう馬だろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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