注目のクラシックのステップレースはきわめて評価の難しい結果に終わった。期待の馬がいたわりに、また、重要なステップレースとすると、まず第一に「迫力」もう一歩だった気がする。競馬はタイムレースでもないから、それを上回るスケールを感じさせれば十分なことが多いが、迫力と鋭さを欠いたうえに、目安となる時計もあまりに平凡だった。
同じ外回りの1800mでは、5Rの3歳未勝利戦が1分48秒4で、9Rの4歳上1000万特別が1分47秒6だった。きさらぎ賞の1分48秒8は、ペースうんぬん以前にあまりに…の印象が強い。だいたいこの時期、クラシックの有力馬レベルは古馬1000万条件の時計を目安にすることが多いが、同じ日の未勝利戦にも及ばなかったのだから、その理由を探し出さなくてはならない。きさらぎ賞はクラシックに結びつくことが多いが、芝コンディションの格段に良くなった最近の良馬場では、もちろん、断然一番遅い勝ち時計が今年だったことはいうまでもない。
マイペースに持ち込んだアサクサキングスの前半1000m通過は、なんと61.7秒という超スロー。この時点で7馬身も8馬身も離されて追走の2番手以下は、差し切ったならともかく、手も足も出なかったのだから、クラシックを前にして最初からピントがズレすぎている。それでも届く、差し切れると考えたとしたら、乗っていた馬には残念ながらそういう能力は備わっていなかったという証明の結果でもある。
アサクサキングスは望外のスローのマイペースになったが、巧みだったのは勝負どころの4コーナー手前から11.3秒。レース全体の中でもっとも速いラップを繰り出し、引きつけることなく離してしまったことだ。ジェニュインの一族でホワイトマズル産駒。全体に少し時計のかかるような展開もベストだった。春の中山向きだろう。
ナムラマースはオリビエの流儀だからもうこれは仕方がないが、せっかくいい位置をとれたのに途中から武豊騎手マークに回ってしまった。結果は2着で一応の答えは出したのだが、これだけ楽なペース追走で上がりは33.9秒止まり。それほど切れるタイプではないことをペリエなら分かっていたはずなのに…。弱気すぎ、結果としてマークする馬を間違えてしまった気がする。
オーシャンエイプスの評価は、一転、難しくなった。新馬戦の驚異の勝ちっぷりから、無限の可能性さえ思わせた。今回、武豊騎手が『まるで走らなかった。何でだろう』『きょうは走っていないだけ』のコメントがあったが、ほとんど馬なりで勝ったように見えた新馬戦が、1分49秒8。上がり3F34.3秒。そして、必死で追った今回が、同じ京都の外回り1800mを1分49秒4。上がり3Fは34.4秒。前回は独走だったが、今回は同じような能力を持った馬が前にも隣にもいただけのことで、オーシャンエイプス自身は前回とまったく同じ内容の競馬をしただけ、といえなくもない一面もある。
新馬戦は楽々と後半3Fを11台のラップでまとめたが、ディープインパクトのように10秒台のラップを楽にこなして最後を33秒台でまとめたのではなかった。今回もこの馬自身は、やっぱり後半3Fを連続して11秒台ではフィニッシュしている。次走もう一度スケールに注目は当然だが、別に今回、走らなかったわけではない危険もかなりあることは考えておきたい。評価の難しい馬が多くなったこのレース、おそらくレースレーティングは著しく低くなることだろう。推理の要素はまた増えた。