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弥生賞

  • 2007年03月05日(月) 12時50分
 ステップレースとするとかなり厳しい中身の2000mだった。勝ち時計の2分00秒5は、最近10年では04年コスモバルクの勝った年と並んで最速。それも例年以上の高速の芝というわけではなかったから、上位に食い込み皐月賞への出走権を確定させた3頭は、クラシック第一弾に向けてそれぞれかなり強気な展望ができる。

 ただ単に時計が速かったというだけでなく、レース全体の流れは前後半の1000mずつが(59.8-60.7秒)。弥生賞史上の中でもきわめてきつい流れ。中盤の3コーナー手前で少しラップが落ちただけで、最後の3Fは再びペースアップして「11.8-11.7-11.7秒」。レース全体のペースや、いわゆる展開に恵まれた馬が台頭できるバランスではなく、総合力と底力が求められた。ほとんど本番の皐月賞で展開されるのと同じような中身の濃い2000mだったろう。

 勝ったアドマイヤオーラは、前半から先行馬の直後の6〜7番手。武豊騎手がこの弥生賞で時おり見せる「可能性を探し求めるような」実験的なレース運びではなく、珍しく正攻法の位置取りだった。最初から正攻法で、作戦を用いることなく初の2000mを2分00秒5で快勝した自信は大きい。

 仕上がりやレースへの対応力が鋭敏すぎ、また、途上の状態でも勝ってしまうことが多いから、反動や活力のロスが大きく、ときにその産駒は早熟ではないのか…とか、底力や総合力に疑問符のつくことも珍しくなかった種牡馬アグネスタキオンの産駒は、土曜日のダイワスカーレットとともに、本当は決してそんなことはないことを示したともいえる。

 本馬場に入ったアドマイヤオーラは、落ち着き払っていた。初めての中山コースをしばらくのあいだ見渡して、確かめて納得してから、キャンターに移っている。ゴール寸前、ココナッツパンチに並ばれそうになって、重心を低くするようにもう一回伸びた。迫力で圧倒というタイプではないから凄みはないが、少なくとも軽いマイラーではない。

 2着のココナッツパンチのストライドは、しなるように力強く、かつ鋭い。新馬戦とはまったく異なる厳しいペースで、いきなり相手格段に強化の初の2000m。それも外を回ってクビ差2着。やがては世代のトップの一頭にも立とうかという素晴らしい才能を示した。きついレースを強いられての3戦目が皐月賞となるローテーションは厳しいが、反動さえなければ皐月賞はもちろん、ダービーでは最有力馬の評価だろう。

 ドリームジャーニーは直線に向いたところで、そのココナッツパンチに寄られたというより、押し込められるように進路が狭くなってしまった。朝日杯とは違って中団でレースを進める自在性をみせたが、今回も416kgの馬体重にとどまった小型馬の弱み(それが逆に鋭さを生むのだが)、両脇にライバルのいるような形は苦しかった。朝日杯と同じようにバラけないとみたら外を回る必要があるかもしれない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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