注目は、ここまでウオッカ、ダイワスカーレットとほぼ互角の成績を残し、桜花賞路線のトップ3に位置しているアストンマーチャンと接戦に持ち込める新星は出現するか。もうひとつは、そのアストンマーチャンはどんな勝ちっぷりをみせ、さらなる成長を示してくれるかに絞られていた。
あと一歩で出走権を手にできるところだった未知の魅力を持つ1戦1勝のヒカルアモーレ(父クロフネ)が4着にとどまったことにより、本番の桜花賞で勝ち負けに持ち込めそうなのは、このトライアルからはほぼ勝ったアストンマーチャンだけとなった。
そのアストンマーチャンは、少しカリカリしていたものの一段と力強さを増した迫力あふれる好馬体。ギリギリの馬体で出走権を得ようとした他馬を、トライアルが持つテーマでも完全に上回っていた。一番の好スタートを切ったあと、行きたがる素振りを見せるのをなだめて4〜5番手に控えたのは、もちろん本番を考えてのこと。
直線に向いても残り1F地点まで追い出しを待つ余裕があった。2着アマノチェリーランとの着差は2.1/2馬身だけだが、まだまだ余力十分。軽く気合を入れた程度だった。
回転の速い独特のピッチ走法は、ひょっとするとこの馬、渋った馬場はまったく苦にしないかもしれない。かかり気味に行くタイプは重を苦にしないことが多いとも言われる。本番に向けての視界は一段と広くなった。
アマノチェリーランはアストンマーチャンが壁になってくれた形で、この距離のわりにはすんなり先行でき、また直線に向いてからもかわいがってもらえた。しぶとくタフなスピード型の粘りは評価しなければいけないが、桜花賞でも……という魅力が生じたほどではない。ハギノルチェーレは巧みにインをつき、松永幹夫厩舎の桜花賞出走を実現させたが、これは勝負付けの済んでいる既成勢力の一頭で、進境は乏しかった。
4着ヒカルアモーレは直線だけ目立つ脚いろ。スケールを示しただけに惜しかったが、完敗だっただけに、もしこれで桜花賞に出られる3着だったとしても現時点ではやっぱり同じような善戦止まりに終わる公算大だろう。距離適性に課題はあるが、キャリアも考えるとオークスに向けての方向転換がかえって正解となりそうだ。
今年は賞金900万組も、もしかするとボーダーライン上で何頭か出走できる可能性もあるが、ルミナスハーバーは体の回復もう一歩。秋の状態に戻っていなかったから、このあと大きく変わらないと苦しい。タケイチゼットは今回このペースで止まっては無理だろう。注目の1勝馬ニシノマナムスメは残念ながら体が寂しくなっていた。途中からせめて3着には…の権利取りの戦法に切り替えたが、それでも追い出して伸びなかった。ここはいさぎよくあきらめて立て直すしかない。