人気のフライングアップルの鮮やかな差し切り勝ちだった。内の1番枠で少し出負けぎみのスタート。といっても出遅れほどではなくこれまでのように中団に位置することは可能だったが、あえて気合はつけず後方からの追走。直線はこれまでの詰めの甘さがウソのようにインから一気に差し切ってみせた。好位差し、あるいは先行抜け出しの形ではやや限界も見え隠れしていただけに、この脚質の幅は皐月賞を前に大きい。横山典騎手は、たとえ出負けしなくともいつもより控えるレースを描いていたフシもある。
このフライングアップルは、目下候補NO.1のフサイチホウオーと0.1秒差の接戦が2回もあるから、今回のレースでは絶好の能力基準であり、同時にレースレベルを推し量る尺度の馬だった。そのフライングアップルが初めて追い込む形で1分49秒0。直後に古馬1000万条件の牝馬だけのレースがあって、前半の5F通過はスプリングSが59.9秒で、最終レースは60.2秒。ほぼ同じような流れだったが、牝馬の1000万は1分48秒3の走破時計で大接戦。より楽な流れだった最終レースの方が、スプリングSより逆に0,7秒も速かったことになる。この時期、3歳のエース級は古馬の1000万レベルはもう上回りたい。
慣れない形で差し切ったフライングアップルの場合は、新しい一面が引き出せたのだから、やや平凡な走破時計、上がり3F35.8秒にとどまった記録はやむをえないところはあるが、完敗だった2着以下の本番「皐月賞」を展望するグループは、ちょっと強気にはなれないだろう。2着マイネルシーガルは、このペースなら抜け出してそのまま押し切りたかった。上がり36.7秒はかなり平凡。3着エーシンピーシーも絶好の位置にいながら大跳びで器用な脚が繰り出せないためか、反応もう一歩で上がり3Fは36.6秒止まり。デキが良かっただけに物足りなかった。
サンツェッペリンは、予定の弥生賞を延ばしたが、まだ気配一歩。やや物足りない仕上げだったろう。そのためあまり無理をせずステップのテーマ通りのレース運びだったようなところもあるが、光る部分はなかった。フェラーリピサは、今回はカリカリしすぎていたのが大きな敗因としたいが、それにしても…の凡走で、父母両方の血筋の最大の弱みである緩急のペースへの対応力のなさ、坂のあるコースでの物足りなさを感じさせた。
やや厳しい視点になるが、このスプリングS組で皐月賞に可能性や展望が残ったのは勝ったフライングアップルだけだろう。レースレーティングは、残念ながらちょっと失望するぐらい低くなりそうだ。