あっさり抜け出したスズカフェニックスの快勝というよりも、武豊騎手の手によるスズカフェニックスがいとも簡単に初の芝1200mのGIを勝ってみせた、という印象の方が強かった。
1600mや1800mのレースではなだめるように我慢させて進み、上がり3Fを「33秒台」の前半で一気に伸びるスズカフェニックスは、ズブいわけでも他馬のバテに乗じて追い込んでいるわけでもなく、考えてみれば1600m級のレースだから注文をつける必要があっただけのことで、本来はスピード能力にあふれている。だから、解き放たれると3Fを楽々と33秒台前半でスパートできる。
それが今回は、芝では初めての1200mに挑戦。なだめてスタミナ温存を図る必要はない。それどころか逆について行かなくてはいけない。3コーナーの手前ではもうプリサイスマシーンの直後の6〜7番手に取り付き、それも理想の外に位置していた。先行すると思えたマイネルスケルツィなどより前だった。
強力な先行型がなく、前半の3F33.8秒の平凡なラップにとどまったのも楽に追走できる要因だったが、直線一気に強襲のイメージもあったスズカフェニックス(武豊騎手)の、1200mだからこその好位抜け出しだった。
エムオーウイナーの2番手追走は、「33.8-35.1秒」という1200mにしては先行型にとってまったく無理のないレースバランスを考えると、理想的な先行の形だったが、並ばれてから案外。このニホンピロウイナー産駒、もしかすると父に似てみせるように大きく力強くなった馬体をここ一番とあって絞ったが(10kg減)、かえって良くなかったかもしれない。小さく映った。プリサイスマシーンはいつもより行きっぷり一歩。4コーナー手前の反応が悪かった。1200mにより死角の大きかったのは、スズカフェニックスではなく、むしろこちらの方だったのだろう。
引退の一戦だった牝馬シーイズトウショウは、最内を引いて重馬場。運がなかったうえにデビュー以来最高の馬体重486kg。7歳のいま成長の証であるはずもなく、多くの名牝がそうだったように、次の役目がきていることを告げていた。無事に繁殖入りできることを喜びたい。2着に突っ込んだペールギュントは、のど鳴りの手術をした馬。1200mにしては時計がかかったのも、外枠も味方したのも確かだが、ディープインパクト世代がいろんな距離で巻き返しているのは事実だ。