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NHKマイルC

  • 2007年05月07日(月) 12時55分
 大混戦がささやかれた今年、あいにくの雨でいかにも滑って走りにくそうなコンディションに陥り、JRA重賞史上最高配当の3連単が飛び出す大波乱に終わった。それにしても難しい結末が導き出されたものだが、多くの有力馬が走りにくい馬場状態に苦しんだとはいえ、東京コースの1600mのビッグレースだから能力のない馬が快走できるわけもなく、好走馬を素直に讃えたい。そして今回の好走馬も、結果の出なかった馬も次に結びつけたい。

 勝ったピンクカメオは同じ1600mの桜花賞14着馬。ブラックホーク(9番人気の安田記念快勝)の半妹、内田博幸騎手、強運の金子オーナー、など終わってみればもちろん快走して不思議のない要素に溢れているが、これで東京コースに限れば2戦2勝。よほどこのコースが合うのだろう。内田博幸騎手の不可能さえ可能に変えてしまうかのような騎乗にいまさら驚くのも変だが、最初は中団の外にいたはずが、気がつくと4コーナーでは最後方。そこから1度、2度と進路をかえつつ残り400mを過ぎてから大外へ。

 さすがに本人でさえ「届くとは思っていなかった」というが、まとめて差し切ってしまった。それまでのピンクカメオとは、とてもではないが同じ馬とは信じがたい。これでオークスに挑戦することが決まった。反動も、距離2400mも心配だが、ウオッカの名がないオークスは有力馬がごく絞られ、登録馬をみると賞金400万の1勝馬まで出られそうな頭数に限られている。もし、また内田博幸騎手とのコンビが成立するようなら、チャンスなしとはいえない。

 人気のローレルゲレイロは、それにしても勝ち運に見放された不思議なオープン馬(まだ1勝馬)がいたものだ、と言うしかない。今回など、ギリギリまで抜け出しを待って、確勝のタイミングで抜けたと思えたが、伏兵17番人気の牝馬に200点ぐらいの競馬をされてしまった。一連のレースの中、上昇は乏しいように思わせて今回の馬体が一番良かったようにみえた。

 18番人気のムラマサノヨートーは、4コーナーでピンクカメオと同じような最後方にも近い位置から馬群に突っ込んで行っての好走だから、これも見事。ローレルゲレイロとともにキングヘイロー産駒の豊かな底力を示したとも言える。絶えず調教で動きながら実戦では生かしきれず、前々回500万を勝ったときも12番人気の穴馬。このあとも決して人気の中心になどならないだろうが、やがて波乱をもたらすのだろう。こういう馬はいつも存在する。

 人気上位馬のうち、大跳びのアサクサキングス、ダイレクトキャッチの2頭は、地盤が湿った馬場ならともかく、今回のように表面が滑る馬場はまったく不得手。返し馬の段階でもうギブアップだった。オースミダイドウは中尾調教師の心配した死角ばかりが前面に出てしまった。カリカリしすぎていたうえ、骨折の手術(麻酔)のあとの影響も少なからずあったのだろう。シャドウストライプは体がやや硬い面もあるので、バランスを崩しがちになる芝の重はまったく合っていなかった。

 上位3着までに、フルゲート18頭の出走馬の中の17番人気馬と、18番人気馬が食い込んだ歴史に残る大波乱のビッグレースだったが、多くのレースの中にとても必然の結末ではないと思いたくなるレースが、何割か何パーセントか出現するのはそれは仕方がないことで、でなければ世界110も120か国で競馬が行われたりすることはないのだから、こういう難しい結末もまあ時には受け入れるしかない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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