ダイワメジャーの快勝により、安田記念は2001年のブラックホークから始まり、アドマイヤコジーン、アグネスデジタル、ツルマルボーイ、アサクサデンエン、ブリッシュラック…、そして今年のダイワメジャー。「6歳以上馬が連勝中」の不思議な記録はさらに続いた。なんと、これでベテラン6歳以上馬の「7連勝」である。これまでいわれてきた年齢と競走能力の関係は、かなり修正の必要がある。総合スピード能力を競う頂点のGIなのだから、この7連勝の意味するところは大きい。
逆に、なぜかサンデーサイレンスの勝てないGI、そんな不思議は消えた。今回のダイワメジャーの勝利は、近年、とくにコース改修の2003年以降の安田記念の特徴をストレートに表わしている。この5年間、勝ち時計はすべて「1分32秒台」。今年の1分32秒3はこの5年の平均勝ち時計そのもので、レース全体の流れ「45.9-46.4秒」まで最近5年間のラップ平均と一致している。
全体に緩みのない高速の平均ラップが連続して、現時点ではおそらく勝ち時計の限界にも近いだろう1分32秒台前半の決着が続く。力不足の馬は別に、このペースで先行して1分32秒台前半で乗り切れる能力を持つ馬は、だれも止まらない。失速しないのである。
だから、ダイワメジャー型の平均ラップを好むスピード馬にきわめて合う高速の1600mであり、一方、同じサンデーサイレンスの血を受けながらも、爆発力(上がり33秒前後)を持ち味とする産駒たちが、最近の安田記念で苦戦していたのは仕方がない。今年のスズカフェニックス、エアシェイディなどは、こういう安田記念のペースに合わないサンデーサイレンス産駒の典型ともいえる。もっとスローペースで楽に追走できるなら、33秒前後の爆発力を発揮し1600mを1分32秒台前半でまとめることも可能だが、一定の速いラップが刻まれるペースだと自分もある程度は付いていかなくてはいけない。その時点で爆発力は消える。もっと「前が飛ばしてくれる流れなら…」。そういう敗因の陣営も多かったが、ここは難しいところで、勝ち時計はみんなの予測どおり。最近は勝負を度外視したようなただ行くだけの馬はめったにいない。前がつぶれてくれれば…のタイプは、残念ながら自身に1分32秒台前半で乗り切れる能力がないともいえる。
ダイワメジャーは心配された内枠も、もうさして苦にしなかった。直線で一度は外に出し、相手がコンゴウリキシオーだけであることを確認すると馬体を併せに行き、並んでの勝負強さをフルに引き出した。着差はクビでも完勝だろう。コンゴウリキシオーは前回のマイラーズCと同様、自身でペースを作り、それで1分32秒3で乗り切ったのだから、これは相手が悪かったというしかない。改めて、トップクラスのマイラーが同馬の本質であることを示した。こういう先行馬がいるとレース全体のレベルが上がり、また、レースの流れが壊れることが少なくなる。
ジョリーダンスは早めに動いて出ての3着だから、6歳牝馬とすれば文句なしの内容だろう。前回は相手を間違え完全に脚を余したところがあった。注目の香港勢は、残念ながらそろって凡走。通用のスピード能力は十分にあるはずだが、ブリッシュラックや、サイレントウィットネスのようなたくましさと迫力がなかった。その4頭、いつも対戦して勝ったり負けたりで、抜けた力量をもつチャンピオン級のエースではなかったとも言える。ジョイフルウィナー(昨年3着)で通用するのなら…が4頭も挑戦してきたもっとも大きな理由だったが、日本馬が香港に遠征するときの判断材料と同じで、他国のGIはちょっと甘くみた時点でそう簡単には…なのかもしれない。しかし、また香港勢が多くの国際競走に来日してレースを難しくしてくれることを熱烈歓迎したい。