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エプソムC

  • 2007年06月11日(月) 12時59分
 大接戦の期待された春シーズン最後の重賞は、6着まで「クビ、ハナ、クビ、ハナ、ハナ…」の大激戦が展開された。渋った馬場状態の中、コースどりもスパートのタイミングもきわめて難しく、明暗を分けたのはごくは小さな要素だったろう。

 勝ったエイシンデピュティは、決して有利な枠順ではなかったが、大半の馬が馬場の荒れたインを嫌ったため、考えられたよりずっとスムーズに好位で揉まれずにレースの流れに乗れた。2連勝中の上がり馬らしく気配は文句なし。前走の上がり33.1秒がもたらす軽快な鋭いスピード型のイメージではなく、どちらかといえばパワー型と言ったほうがピッタリの迫力の大型馬。

 父フレンチデピュティは、日本ではクロフネ、ノボジャック、ライラプス…などの父として知られているが、競走能力は別に、今回大接戦となった同じフレンチデピュティ産駒の2着のブライトトゥモロー、3着サイレントプライドと比べても、一番父に似た迫力の体型を受けているのが、このエイシンデピュティのように思える。

 渋った馬場が影響し、最後の1Fだけ13.1秒とラップが落ち込んだ。ここでエイシンデピュティの力強さがモノをいった。絶妙のコースどりを見せた絶好調=田中勝春騎手の仕掛けも冴えわたっていたが、この内容は着差以上の完勝かもしれない。

 人気のサイレントプライドは大事に外に出し、さらにその外にブライトトゥモロー。この2頭、前回の新潟大賞典と同じような着差でブライトが上回り、そのブライトトゥモローは前々回、エイシンデピュティにちょっとだけ負けていた馬だった。

 それにしてもサンデーサイレンス以外の種牡馬の産駒が重賞で1〜3着独占は珍しく、フレンチデピュティの産駒は、芝ならエプソムCのような条件がもっとも合っているのだろう。直線が平坦のコースに対する高い適性はすでに証明されている。

 期待した上がり馬の5歳ピサノパテックは、決してピーク過ぎとも思えず、確かに渋った馬場は不得手としても、稍重程度のコンディションならこなしてくれそうに映るストライドだったが、追い出して全く反応がなかった。残念。とはいえ、まだまだ上昇の可能性はあるはずで次走改めて注目したい。

 毎回あと一歩のレースが続くダンスインザモアは、6着とはいえまた今回も0.1秒差の惜敗。少し渋った馬場の1800mは理想のコンディションとみえたが、それにしても難しい馬で、速い脚が長続きしないことだけは確かなのだが…。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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