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マーメイドS

  • 2007年06月18日(月) 13時00分
 阪神・内回りの2000m。先行型が少ない組み合わせから、すんなり行けること必至のシェルズレイ(3番人気)向きの流れになる公算大と見ていたが、そのシェルズレイ、ちょっと自身が行きたがってなだめることができなかった。

 シェルズレイの単騎逃げのペースは、前半の半マイル46.6秒-1000m通過58.0秒。高速の芝とあって刻んだラップにそれほど大きな無理はなく、気分良くリズムに乗ってはいたが、道中で息を入れる場所がどこにもなく、1600m通過は1分33秒8。さすがに最後は苦しくなってしまった。

 結果、このシェルズレイを格好の目標にスパートしたディアチャンスが巧みにインから抜けて、サンレイジャスパーとソリッドプラチナム(昨年の2、1着馬)が突っ込み、勝ち時計はレースレコードの「1分58秒4」が記録された。

 勝ったディアチャンスは6歳馬。ベテラン馬大活躍の今年前半戦にふさわしくこれが初重賞制覇だった。種牡馬タイキシャトルの産駒はどちらかといえばマイル戦以下に良績が集中していたが、2000m級の重賞勝ち馬が出現したことにより、評価の幅は広がるだろう。タイキシャトルの父デヴィルズバッグは、サンデーサイレンスときわめて似た血統構成をもつ馬であることで知られるから、タイキシャトルの産駒もスピード色が濃いようにみえて、やがてはこなせる距離の幅はもっと広がるのかもしれない。武豊騎手の乗ったディアチャンスの祖母アヤテンリュウ(父シャトーゲイ)は、72年の桜花賞馬アチーブスター(武邦彦騎手)の半妹になる。

 サンレイジャスパーは昨年の2着馬であると同時に、そのあと新潟記念2000mを1分57秒2で乗り切って見せたりした高速の芝向き夏型の牝馬。しばらくスランプを続けたが、また今年もこれからが活躍の季節になった。同じように復調を示した昨年の勝ち馬ソリッドプラチナム(ディープインパクト一族)は、ステイゴールド産駒らしく2000m級のレースの方がずっと合っていることが改めて示された。

 結果は、自身の刻んだハイペースによって他馬のスピード能力を引き出してしまい、自分は4着に沈んだシェルズレイ。マイペースのようにみえて少々抑えが利かなくなっている。エリザベス女王杯(13着)とほとんど同じようなレース運びで、だからといって秋華賞のようになだめても味はないから難しい。これで2000mは3戦し自身はすべて1分58秒3〜7で乗り切っている。妙なところで安定してしまった。

 昨年3歳馬が勝ったので、伏兵人気になったミスベロニカは6着にとどまったものの、まだ500万条件を勝ったばかりで今回が4戦目。それを考えれば凡走ではなく、このあとの展望は大きく広がったとしていいだろう。

 福島の芝は刈り込んだためもあって、硬い印象さえ与える高速の芝。バーデンバーデンCでは、1000m戦は別にして、芝1200m以上のレースでは過去に例のない高速ラップが記録された。前半600m「31.8秒」、800m「42.9秒」、1000m通過「54.6秒」…はたぶん史上最高だろう。こういう前傾の極端なラップ、新潟のアイビスサマーダッシュには結びつきそうでいて、実は案外……の部分も大きい。新潟の1000mは今回と同じようなペースで飛ばしてはアウト。さらに1000m54.6秒では、レベルの高い馬がそろいそうな今年、必ずしも勝ち時計のレベルに達する速さを示したわけではないともいえる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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