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アイビスサマーD

  • 2007年07月16日(月) 13時04分
 また今年も伏兵の牝馬が抜け出してきた。05年の7番人気テイエムチュラサン、06年の同じく7番人気サチノスイーティーに続き、もっとはるかに人気薄の13番人気(単勝77倍)の牝馬サンアディユだった。

 まだ歴史の浅い直線1000mの重賞は、これで7回のうち、02年、04年に2勝した牡馬カルストンライトオ以外の5回はすべて「牝馬」が制したことになった。もちろん牝馬向きのレースであることは知れわたっている。昨年の勝ち馬サチノスイーティー、バーデンバーデンCの勝ち馬クーヴェルチュールは人気の中心となり、前走、前半3F31.8秒のダッシュ記録を打ち立てて復調した05年の勝ち馬テイエムチュラサンも出走していたのだが、台頭したのはもっと別の牝馬だった。

 サンアディユは初芝、さらに1000mも初めて。そのうえ得意のダートでサチノスイーティーと対戦した前走、競り合って抜けたサチノスイーティーに1.3秒も負けていたから評価は上がらない。まして今回の1000mは、前半はついて行けなかったことが浮上した一番の要因と考えられるから、余計に難しい結果だった。春後半からフレンチデピュティ産駒は絶好調であること、重で時計のかかるコンディション、ダート巧者が息を吹き返すことの多い平坦コース…など、条件ピタリだったのだろう。

 ナカヤマパラダイスは同じ外枠の数頭が猛ダッシュを利かせて先行したため、少し控える形になったが結果としてこれが正解。みんな苦しくなり、最後の1F12.1秒と急に落ち込んだところで浮上した。勝ったに等しい内容だったが、もっと追走に苦労していたサンアディユに大駆けされてしまった。3着クーヴェルチュールは巧みに外に出しながら、ひと呼吸待って追い出す1000mの必勝パターンに持ち込んだが、これは馬場コンディションと枠順に恵まれなかっただけ。平坦巧者であると同時に、豊かなスプリント能力を改めて見せつけた。たくましくなっている。

 1000mにペースうんぬんはないように思えて、実はある。前半の2Fは「21.8秒」。ここがアイビスサマーDの難しいところで、最初の2Fを22.0秒前後など未勝利馬でも、500万条件でも楽に可能。下級条件ならそれで後半のラップがどう乱れても押し切れる。

 ただし、OPクラスになると前半に少しでも「タメ」を利かせて、後半の2段加速に結び付けないと交わされてしまう。53.7秒の日本レコードのカルストンライトオでさえ、良馬場で前半の400mは今回と同じ「21.8秒」にとどめている。また。同馬は53.9秒で完勝した04年など、行けばいくらでも飛ばせたが前半2Fを「22.0秒」までなだめて進むことに成功、上がりを31秒台で加速してみせた。

 それを考えると、重馬場の今年は(あくまで結果としてのことで仕方ないのだが)、強気に前半から飛ばしすぎたかもしれない。失速のジョイフルハートは、重馬場にしては猛ダッシュを利かせすぎたこともあるが、当日輸送なしでいきなりマイナス16kg。細く映る馬体ではなかったが、やはり完調ではなかったろう。アイルラヴァゲインもまったく同じ。18番枠ゆえ寄られてはまずくダッシュを利かせることになったが、さすがに前半がきつかった。また、パドックに入ってきた最初からいらついてチャカチャカしすぎていた。休み明けで、ちょっと急仕上げだったろう。サチノスイーティーは一段と充実の好馬体をみせたが、競り合う形の前半があまりにきびしく最後の1Fで鈍った。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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